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プロローグ1【出会い】

これは完全なリアルな話です。

恋人ごっこ。

しょせん

「ごっこ」なの。だからあなたはリアルを生きてる。

私だけずっと抜け出せないよ…



「ただいま。」

当たり前に扉を開けて私が言うと、(ゆう)は不機嫌そうに、

「あぁ…てゆーかお前帰るの遅くない?!」と言いながら私を睨む。

「仕方ないじゃん。資料なかなか完成しないんだもん、それより今日ごはん何?」

そう言いながら私はスーツのジャケットをソファに投げる。

「酢豚と唐揚げ…ってまたジャケット投げて!シワになるから投げるなっていつも言ってんだろ!」悠は文句を言いながらジャケットをハンガーにかける。


そうして悠の作ったごはんを食べてお風呂に入って手を繋いで眠る。


それが私の生活。


でも悠は恋人じゃない。もちろん身体の関係も一度もない。だけどおやすみのキスをして悠の腕枕で空いた片手は手を繋いで眠る。そして朝はキスをして仕事に行く。


悠は恋人ごっこでもしてるつもりなのかもしれない。


でもね、でも、私は悔しい程にあなたが大好きなの。


【ごっこ】の私達に束縛は許されない。

それは暗黙のルール。

ルールを破ってバランスが崩れる事を私達は何より恐れているのかもしれない。


暗黙のルールを表には一切出さず生活する私達。

だけど喧嘩はかなり多い…


帰りが遅いとか飲みに行き過ぎだとか喧嘩は大体くだらない。まぁ大体私がいつも怒られるんだけど…


【出会い】


私と悠が出会ったのは3年前。まだ私がホステスをしていた頃、悠はたまたま店のコが連れてきた客だった。

「ねぇアヤ、ちょっとあいつの席ついてやってくれない?さっきからアヤをつけろってうるさいのよ〜」ハルナが私に両手を合わせておねだりする。

「無理!!あたし若い子ってどうも苦手でさ」ハルナのおねだりを軽くかわす。

「アヤのけちぃ〜!!!」ハルナが叫んだ。


「うっせぇ!仕事しろ仕事」ケラケラと笑いながらハルナを追い返し、自分はまたマイペースで飲んでいた。


…まもなく閉店時間

客もほとんど帰り、ボックス席に悠とハルナだけになっていた。…ん?ハルナめちゃ酔ってる…

(めんどくさいなぁ…) 閉店させて早く帰りたい私はボックスに向かった。

「はじめまして、アヤです。かなりハルナ酔ってるねぇ。」苦手だろうとポーカーフェイスは崩さない。

「アヤ〜!!!悠がアヤに一目惚れみたいよぉ!!!キャハハ!」ハルナは完全に出来上がってしまってる…


「うるさい!お前マジ黙れよ!!」悠がハルナに怒鳴る。


(この子もお酒苦手なのねぇ…顔真っ赤…) 正直この時点ではまったく悠に興味なんてなかったしこんなに長い付き合いになるなんて想像もつかなかった。


【再開】


悠との最初の出会いから二週間が過ぎ、悠の存在すら忘れていた頃、ハルナが突然

「ねぇ、アヤの番号、悠に教えてもいい?」と言い出した。


「悠?………誰??」

私はふざけるわけでもなくハルナに聞き返した。

ハルナはハァーとため息をついて答える

「この前あたしが連れて来てた客だよ!あんたマジ覚えてないの?」


「あ、あれね!悠くんね!はいはい覚えてます覚えてます!番号?そりゃいくらでも教えちゃってよ〜」ハルナのため息に耐えられず調子イイ返事したけど…

(まずい…どんな顔してたっけ…)

私の不安をよそにハルナは早速悠に電話をかけた

「もしもし悠?アヤが番号教えてくれるってさ☆」それを伝えて電話を切ると、私に悠の番号を登録するように促した。


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