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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
外伝「出撃前夜」

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外伝1「旅の終わりと始まりに」①

「こちら柏木……全艦、総員に告ぐ。この流域で確認されていた全インセクターの無力化を確認。戦艦種はまだ浮いているが、もはや燃え盛る山の如しだ……諸君、ご苦労だった!」

 

 柏木提督の言葉に、あちこちから歓声が返ってくる。

 

 明らかに劣勢と言える戦力差にも関わらず……インセクターが増援を呼び寄せる暇もなく全滅と言うのは極めて異例のことだった。

 

 戦艦種を含む、4倍以上の数の艦隊と戦い全滅……こちらの被害は、由良艦隊の如月や由良の損傷のみ。

 戦死者は出してしまったものの……全艦健在……まごうかたなき大勝と言えた。

 

 全艦のダイレクトリンクが解除されていく。

 

 ……わたしの意識もまたわたし固有のものとなる。

 

 非稼働状態から強制的に稼動状態へ移行させられて、統合意識体として融合……由良艦隊の面々もとんだ災難だったけれど、結果としては、上出来だった。

 

 ……あの場でわたしが行った事。

 

 それは、土壇場での統合オペレーションシステムの自己進化とでも言うべきもの。

 そのわたしが呼び水となり、全艦がリンクした上で、最適化アップデートが行われた。

 

 わたし達の思いと願いが一致したあの瞬間に、わたし達全員で起こした奇跡のようなものだ。

 

 そして、それはわたし達の新たなる力といえた。

 

 各艦の近未来予測システムを統合運用することで、確定された未来を先読みする能力「ラプラスの魔」

 ……文字通り、戦場を支配、戦争を終らせる力になるやもしれない程の力。


 この力は間違いなくインセクターとの戦闘の様式自体を変える。

 

 けれど、まだ作戦は終わってない。

 ……わたしの仕事はまだ残っていた……むしろ、全てはこの為のお膳立てのようなもの。

 

「……皆さん、それでは……これより、駆逐艦初霜……。単艦によるセカンドコリドールへの突入を開始します」


「了解した。敵戦力を殲滅した以上、君の行く手を遮るものは何もない。我々は予定通り後退を開始する。……貴艦の無事を祈る。我々は貴艦の帰りを待っている……。この戦場で君が起こした奇跡を……俺は忘れない……いいな? もう一度言う……必ず戻ってこい!」


 ……柏木中佐。

 貴方のお陰で、わたしはここにいることが出来ている。

 

 孤独な死出の旅路だと、思っていたのだけど……。

 何の心置きなく旅立つことが出来るのは、貴方のおかげ。

 

「まったく……いきなり、無茶苦茶やらかしてくれたわねっ! でも、あれがわたくし達の真価ってとこなのね! すごかった! もうわたくし達ってば、無敵なんじゃない? でも、ちゃんと戻ってくるのよ……帰ってきたら、一緒にお茶でもしましょう。それと、次は人の珈琲に蜂蜜なんてブチ込まないでよね! あれじゃ、珈琲なんだか蜂蜜なんだか解らないんですの!」


 利根さんが嬉しそうに笑いながら、通信を寄越してきた。

 

 まだまだ経験値の低い彼女にとって、わたしの見ていた世界はどんな風に映ったのだろう?

 彼女はこれから、もっと強くなるだろう……その成長が楽しみな一人だった。


「あはは……ハニー珈琲美味しいですよ? でも、一緒にお茶はいいですね……戻ったら、ぜひ!」


「……初霜、お疲れ。いやはや……今のは凄かったね。せっかくだから、僕はこのまま君を最後まで見送るよ。言ったろ見送りくらいはするってさ」


 雪風……友の見送りと言うのも悪くないものだなって……胸の奥がじんと暖かくなる。


「迷惑かもしれんが……我々も最後まで貴艦を見送らせてもらう。……このままゼロで、操縦桿も持たずに座ってるだけかと思っていたが、戦艦種の共同撃沈なんて、大仕事をやらせてくれて感謝する。ああ、自分は春日井大尉だ……無事に戻ったら、君に一杯奢らせて欲しい。そういや、君は甘いものが好きなんだってな……」


「あはは……お恥ずかしながら」


「……俺の妹も甘党でな……よく付き合わされたもんさ。そんな訳でエスコートなら任せとけ」


 ゼロ隊の隊長の春日井大尉がそんな風に言うと、彼の部下たちが「隊長、それって口説いてるんじゃないですか?」だの「お、俺もご一緒しますよ!」だの軽口が聞こえてきた。

 

 ちょっと……照れちゃうかな。


「雪風……春日井大尉……それに皆さんも、ありがとうございます」


 ゼロ隊と雪風に見守られながら……やがて、わたしは次元穿孔へと近づいていく。

 

 ……重力偏差により、進路がブレ始め、艦体のあちこちがきしみ始める。

 

 「解析機関」を起動……「ラプラスの魔」ほどではないが、近未来を予測するシステム。

 未来予測システムの高精度版とも言える個艦単位の確定未来観測システムと言うべきもの。

 

 先の自己進化でわたしが得た力のひとつ。

 この力もまた、あの場にいた全艦へ受け継がれたはずだった。

 

 重力偏差の偏差予想パターンから、安全な航路を計算。

 

「……航跡が安定してないようだけど、そんな調子で、大丈夫かい?」


 雪風の心配そうな声。

 

「問題ありません……。すでに安定しています。雪風、そろそろ上空にも重力偏差が起こり始めます! もう十分です。次元穿孔から出来るだけ、離れてください!」


 上空を旋回中の白い瑞雲、ゼロ隊が距離を取り始める。

 

「いけないっ! 警告っ! 本艦突入時に、大規模な重力震の発生が予測されています! ……皆さん、早急になるべく遠くへ引き上げてください! この波形予測だと、上空への影響は少ないと思いますから、なるべく高度を取って……遠くへ退避してください! それと艦隊への警告もお願いします」


「了解した……君の武運を……祈る!」


 大尉の返事とともにゼロ隊が急上昇をかけ、次元穿孔付近からの離脱を開始する。


 こちらは、すでに渦潮に巻き込まれたような状態になっており、もう止めることは出来ない。

 

「雪風も! 早くっ!」


 まだ付近を旋回していた白い瑞雲……雪風へ告げる。

 

「……初霜、これが今生の別れ……なんて事にはならないよね? また一緒に……戦えるよね」


 酷く弱々しい雪風のつぶやき。


「わたしは……何があっても、帰ります! だから……先に戻って、わたしの帰りを待っていてください。貴女には、まだまだやるべき事がたくさんあります! 早くっ!」


 思いを断ち切るように告げる。


「…………解った! 君に幸運をっ!」


 雪風が離脱していく……あと30秒で中心部へ到達する。

 ドライバ・コフィンのイナーシャルキャンセラーが起動する。

 

 先程まで感じていた右へ左へと振り回される感触がなくなって、浮遊感に包まれる。

 

 突入カウントダウン。

 

 10、9、8、7……

 

 ……もう後戻りはできない……不安がないと言えば嘘になるのだけど。


 大丈夫! わたしは必ず戻ってくる……。

 

 ……2、1、0!!

 

 視界が真っ白に染まり、イナーシャルキャンセラーでも相殺出来ないほどの衝撃に包まれる。

 

 ……その瞬間に、わたしは……世界を超えた。

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