外伝1「わたし達の戦い」③
後方の艦攻隊へ指示。
進行方向調整、最大射程設定で10分後の戦艦種未来座標へ統制雷撃の実施を要請。
「雷撃隊の諸君……訳が判らんだろうが、計器上に表示されたタイミングで提示された座標を正確に狙って投弾せよ! 疑うな……魚雷射出後は直ちに戦線離脱……軽空母龍驤へ帰投せよ! 戦闘機隊は計器指示通りに動け! 白い瑞雲に追従せよ!」
わたし達の意を汲んでくれたらしい柏木提督からの直接指示が飛ぶ。
ありがたい……説明する時間がなかったのだけど、このタイミングなら。
艦攻隊各機より、統制雷撃が放たれる……誤差も許容値範囲内……皆、良い腕だった。
思わず感心する。
敵右翼艦隊は、統率艦の重巡種の沈黙で、完全に行き足が止まった上に混乱状態に陥っている。
操艦並びに残存する駆逐種への攻撃は、乗員へ一任……前衛由良艦隊各艦の演算リソースを利根及び初霜へ集中付与。
「由良艦隊各艦へ通達……現時点より、操艦はフルマニュアルに戻っているはずだ……。要するに雑魚相手は任せるって事だ! 敵は親玉をやられて、混乱してる……数は倍以上だが、今がチャンス! 怯むんじゃねえぞ! ここは一つ、戦場の女神達に男を見せてやれ! 全艦突撃ッ! 蹂躙せよ!」
佐神中佐の指令。
柏木提督の先輩にあたり、個人的な友人だという話だったのだけど、柔軟性の高い臨機応変に対応できる良い指揮官のようだった。
右往左往する駆逐種の群れに、全艦突撃をかけて蹴散らしていく。
右翼側の始末は、彼らに任せるとする。
次の目標……戦艦種。
現在フォーメーションは初霜が先行、その後に利根が続いている。
距離はすでに5万を切っており……戦艦種の砲撃の有効射程内。
戦艦種は利根を照準したらしく、しきりに砲撃してくる。
……上空5000mに展開させた瑞雲と雪風からの観測情報により、弾道解析済み。
利根の回避行動も適切……被弾確率は0.1%以下まで減少。
ゼロ隊と雪風率いる瑞雲隊から送られてくる観測情報から、戦艦種の予想コース算出……。
このままだと、雷撃の集中点からは逸れる見込み。
敵艦コース修正の要あり……要請。
駆逐艦初霜……艦底部節足腕部に照準……直射砲撃。
観測射第一射……正面装甲部に被弾。
装甲貫徹を確認するも効果なし。
電磁投射砲と言えど、127mmで戦艦種には威力不足は否めない。
光学照準は相変わらず不鮮明……雪風より未来予測補正値込みのリアルタイム照準データが送られてくる。
照準修正値……補正。
効力射……正面左側節足部に被弾、部分破壊を確認。
敵艦進路予測シミュレーション再計算。
終了……微細ながら方位修正に成功。
敵護衛種の前進を確認……距離二万五千……対応、重巡利根の砲撃による殲滅。
観測射と効力射……2発づつの砲撃で、護衛種を殲滅中。
戦艦種の砲撃が激化……利根及び初霜に、直撃弾なし……構わず前進。
敵艦副砲クラスの一斉砲撃を確認、駆逐艦初霜へ向かう弾道予測ライン総数30。
予想弾道回避コースにて、全弾回避……至近弾もゼロ。
戦艦種の雷撃集中ポイントまで到達まで後五分。
敵艦のコース修正、及び攻撃の要を認めず。
上空の瑞雲とゼロ隊に集結命令……戦場観測は彩雲三号機に引き継ぎ。
利根より、護衛艦種を掃討との報告。
駆逐艦初霜の前方に回り込んで、網を張りつつある潜水艦種。
集結後、伏撃体勢につき、脅威度判定大……最優先で要殲滅。
殲滅プラン制定……完了。
前方流域にて、漂流状態で身を潜める小型潜水艦種の予測位置を算出。
初霜によるピンガー実施。
感あり、エコーより敵艦予測位置を修正。
駆逐艦初霜の電磁投射砲を超長距離狙撃モードから、近距離連続射出モードへ変更。
目標距離は約19500、仰角65、弾種対潜スピアー弾、初速設定を500m/sに設定。
到達予想高度10000……大気シミュレーションより予想弾道算出。
誤差修正。
エーテル流体潮流シミュレート完了……データ受領。
敵潜水艦種……C01からC12の全機ロックオン。
環境変数補正、未来予測固定。
……砲塔一つに一隻を目標し、射撃。
空に向けて、砲撃……繰り返すこと6斉射……計24発の対潜砲弾を投射。
上空10000にも達する高い放物線軌道を経て、砲弾が空中で分離。
対エーテルコーティングを施された黒い劣化ウラン製の細長い弾頭が、次々とエーテルの海に飛び込んでいく。
敵潜水艦種は伏撃準備体制のまま、深度50にて微動だにしていない。
ソナーに感あり、小型潜水艦種への命中音を多数検知。
……続いて、立て続けの爆発音……音波解析。
状況、前方にて伏撃を仕掛けようとしていた敵潜水艦種を全て駆除。
上空の雪風より、エーテル流体面下にて、12の爆発を確認との報告。
駆逐艦初霜の進路オールクリアと判断。
続いて、戦艦種が雷撃集中ポイントへ差し掛かる。
真正面から艦攻隊が放っていた12発もの雷撃が一斉に直撃。
俯瞰映像でも戦艦種の前面部が浮き上がり、その装甲が次々とはじけ飛ぶのが見えた。
前部節足をまとめて失った戦艦種は浮き上がったあと、勢い良く前傾姿勢となると、盛大なエーテルの柱に包まれる。
……エーテルの柱が収まった後も、その動きを停止したまま慣性航行状態となり、砲撃もピタリと止んだようだった。
擱座状態となったところへ、利根の砲弾が次々炸裂し始める。
更に戦艦種の上空から雪風の白い瑞雲が急降下し、250kg爆弾を投下。
その一撃は、装甲が剥離した部分へ直撃し、戦艦種の体内奥深くで起爆する。
更に装甲がはじけ飛び、生体部分の肉片のようなものが装甲の隙間から吹き出し辺りへ飛び散る。
更に……20機のゼロが水平爆撃コースで殺到。
ゼロにも60kg爆弾を装備させており、同様に装甲が剥離した部分を狙っての投弾指示。
対インセクター用の徹甲焼夷爆弾……むき出しになった内部組織を中から焼かれ、更に砲弾用の液体爆薬嚢にでも引火したのかあちこちで誘爆を始める。
対象の無力化を確認。
……ゆっくりとその巨体がエーテルの海へと沈み始める。
由良艦隊の佐神中佐からも、敵残存艦隊を殲滅したとの報告。
当該流域での敵戦力の完全殲滅を確認。
残存敵戦力ゼロ……味方の損害、ラプラスの魔発動後は皆無。
状況終了――戦闘モード解除。




