外伝1「わたし達の戦い」②
……由良艦隊の示現体へ、こちらの提案を示現体共鳴通信にて提示。
同時に情報連結フルコンタクトのリクエスト送信。
非稼動状態であっても、基本的には同類……彼女達さえその気になれば、中枢ユニットの状態から、自律稼働示現体として目覚めることは出来るはずだった。
その上で、情報連結すれば……情報フィードバックを受けた彼女達もわたし同等レベルの存在となれる!
旗艦由良より「同意」の返信と共に相互情報連結が開始される。
傘下の駆逐艦群からも「同意」の返信、情報連結開始。
続いて、後方の龍驤への情報連結リクエスト……承認。
展開中の彩雲、さらに各航空隊とも情報連結……全機体の操作系及びナビゲーションシステムを掌握。
同時進行で雪風、利根へもプラン提示と情報連結……両示現体からも同意。
これらの情報のやり取りは、実際には0.1秒ほどの超高速で行われた。
ほとんど、即時とも言える速さで、全艦、全機によるダイレクトリンク網が確立する。
「おい! 柏木……一体何を始める気だ……由良の全制御が一瞬で奪われたぞ! ……何が起きている!」
「わ、解らん! 利根、初霜! お前達……一体何をした?!」
「「現時点より、全艦艇の示現体の無制限情報連結を実施。我らこれよりひとつとなりて、インセクターとの戦争を遂行する。……最優先項目は乗員保護、次に敵の殲滅……これより全艦統一作戦行動に移行、乗員各位は持ち場にて待機するよう要請します」」
情報連結によるフルコンタクト、無制限情報共有。
それは、複数示現体の意識融合すら可能とする。
そう……わたし達はひとつになった。
皆の思いは共通していた……もう、これ以上、誰ひとりとして死なせはしない。
最優先撃破目標……右翼、敵重巡種と制定。
撃破プランを選定。
最適解……算出。
駆逐艦初霜による電磁投射砲による超遠距離砲撃。
然るべき後に、前衛艦隊各艦の同時砲撃によるピンポイント集中狙撃による敵艦セントラルコア破壊。
このプランが最速、最適なプランであると結論。
駆逐艦初霜……兵装、127mm電磁投射砲を選択。
敵艦までの距離150000。
通常モードでの狙撃は弾頭融解により不可能と断定。
弾速低下、砲身延伸による長射程モード。
超長距離精密射撃……条件付きで射程内……なお、駆逐艦初霜の直接光学観測範囲外。
前衛由良艦隊各艦より、駆逐艦初霜へ多角的観測情報を送信……受領。
観測機情報から敵砲撃の弾道計算……前衛各艦、最適回避行動へと移行。
予想命中率0.01%まで低下。
エーテル大気状態、複数観測点にて同時測定……大気シミュレーション実施。
予想概算値を算出……続いて、駆逐艦初霜による観測射撃を実施。
……第一射……弾着まで60秒…………弾着。
近弾……直撃弾無し。
エーテル濃度偏差予想値、及び重力偏差値を観測射の弾道より、再計算……弾道誤差修正値、受領。
観測射、第二射……敵艦への直撃弾を観測。
次弾装填、被弾位置より、修正コンマ00000単位にて実施。
エーテル流体面による艦体振動補正、実測値と予想値が完全一致……オールクリア。
エーテル大気流体変動予測値……修正。
敵艦回避行動予測分析完了。
由良艦隊各艦との統制射撃リンク確立、砲塔操作員へ射撃座標送信……拒否。
軽巡由良、各砲塔への音声モードでの指示要請。
……了解、直ちに勧告を実施。
「こちら軽巡洋艦由良……艦隊統合意識体を代表し、当艦乗員へ通達。只今より、敵艦へ全艦統制一斉射撃を実施します。……砲員各員は操作をマニュアルからオートへ変更してください」
「待ってくれ! お前は何だ! 一体何をするつもりだ!」
砲員のひとりが叫ぶように、応える。
説明している時間はない。
「私は由良……現在、本艦は全艦隊統合情報連結モードの発動により、統合統制行動中。統合未来予測システム「ラプラスの魔」起動中につき、この流域の全事象は分子運動の一つに至るまで掌握済み。よって人力によるマニュアル操作は不要……私達を信じてください」
……何故受け入れないのか……やはり、人間は不要……そんな感情がもたげそうになる。
そんなわたし達の感情を誰かが止める……これは利根さんの意志?
ああ、今の感覚は別の誰かの思いだ……誰だろう。
統制を乱してはいけない……わたしは皆であり、皆がわたしなのだから……個は埋没させる。
わたし達は、この戦場の味方全てを生かし、敵を……殲滅するのみ!
「こちら柏木提督! 艦隊各員へ最優先命令を通達する! 艦隊各員は全操作モードをフルオートへ移行せよ! こいつらは全艦相互リンクの上での統制行動に入っている……。つまり、正真正銘こいつら全員の総力……本気で戦うつもりって訳だ! こうなると、俺達はただの足手まといにしかならん……。怪我しなくなきゃ、大人しく全てを委ねろ! 自分達の艦を……信じてやれ!」
「ははっ……そうか……! そう言うことか。野郎ども、運を天に……いや、愛すべき俺達の艦に命運を託そう……構わんやってくれ! なんか知らんが、どエライ事をやらかそうってんだな!」
ありがとう……謝意を送る。
全艦同時砲撃実施プロセス再開。
統合未来情報予測システム「ラプラスの魔」による未来予測が発動。
観測範囲内の全事象の情報を把握……未来シミュレーションを実施。
わたし達には……未来が……見えるっ!
着弾タイミングを合わせた時間差を付けた一斉砲火!
それは、正確に重巡種の同一箇所に炸裂する。
拡大映像にて、装甲貫徹、内部構造の重度破壊……セントラル・コアの露出を確認。
目標セントラル・コア……第二斉射実施。
全弾一点着弾……コア粉砕……それに伴い重巡種の沈黙を確認。
その特徴ある巨大な砲角が力なく垂れ下がり、装甲接合部の赤い光が消滅する。
「な……冗談だろ……全艦の砲を1m程度の目標に同時着弾させるなんて……ありえねぇ!」
佐神中佐が驚愕する……敵統制艦にして、最大の脅威が沈黙した以上、右翼艦隊の脅威は激減した。
次の脅威は、戦艦種。
対応検討……終了。
戦闘シーンの表現は、敢えて戦闘ログ風に無機質に表現してます。
こんな感じの戦闘描写は、戦闘妖精雪風の神林長平氏が「敵は海賊シリーズ」でやってました。
機械による冷徹な戦闘って、たぶんこんな調子です。
そこには、情念も許容も慈悲もない。




