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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
外伝「出撃前夜」

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外伝1「わたし達の戦い」①

 まさか、この段階で伏撃を受けるなんて……! しかも、背後からとなると完全な待ち伏せ。

 ……黒船が罠をかけてくるなんて、これまでは考えられない話だった。


「……佐神中佐……被害状況と現場の状況を報告!」


 柏木提督が叫ぶ。


「殿艦の有明と夕暮の警報が間に合った……! 一応、見張りは置いてたんだが、例の新型の自動警戒システムが役に立ってくれたな! 初撃は全艦回避成功……奇襲食らって、損害ゼロとは実に幸先がいいぞ。柏木提督、爆雷による対潜牽制攻撃の許可を願う!」


「待て! 後ろを取られたとなると、このままでは前方の戦艦種に挟撃されるぞ! 速やかに転進、離脱にかかれ……極力交戦は避けろ」


「軽く言ってくれるなよ……想定がちと甘かったんじゃねぇか? ありゃ、どう見ても伏兵だ……前に俺達が威力偵察かけた時は、こんな奴らは出てこなかったんだがな。敵潜水艦種は小型ながら軽く10隻はいる……俺達がカニって呼んでる奴らだ。船体に取り付いて自爆されると、駆逐だと一撃だからな……。すまんが、この場は勝手にやらせてもらうぞ! 有明と夕暮は、牽制爆雷を放て! 対潜砲弾もバラ撒いとけ! ひとまず全艦2時方向へ転進! 次に5時方向へ転舵だ! こうなったら、予定通りのコースで行くぞ!」


 佐神中佐の指揮のもとに、隊列を乱さず、由良艦隊は二時方向へ転進。


 戦術マップにも、敵のマーカーが新たに追加……触接中の彩雲からの映像情報も入る。

 

 けれど、わたしは次元穿孔よりも奥へと入り込んだ、彩雲2号機からの俯瞰映像情報に着目する……敵艦影は見ず。

 

 現時点での敵増援の可能性は低い……現状では、唯一とも言える安心材料。

 

 由良艦隊の周囲に砲撃が加えられつつある……戦艦種が前進しており、その攻撃の第一波だった。

 流れに乗った上での直進コースを取ったらしい……鈍足の戦艦種にしてはその前進速度がえらく早い。

 

 戦術マップ上でも、すでに右翼艦隊が行動を始めていた……敵の対応も想定以上の速度……。

 威力偵察の際は、ここまで手際は良くなかったのだけど……学習された?

 

 潜水艦種群の予想コースも由良艦隊を後方から半包囲する陣形を維持している。

 

 このままだと、由良艦隊は3方向から完全に包囲されてしまう……そうなったら、逃げ場もないまま殲滅されてしまう。


「佐神中佐! 敵の行動がこちらの予想より早いっ! このままだと貴様ら、頭を抑えられるぞ! 現プランは即時破棄! 直ちに回頭、6時方向へ離脱せよっ! 敵潜水艦種を蹴散らし、撤収せよっ!」


 由良艦隊の後背にいるのが戦艦種のみならば、さほど問題なかったのだけど……潜水艦種にここまで、肉薄されてしまったのは想定外だった。

 

 速力自体は水雷戦隊編成の由良艦隊が圧倒的に早いのだけど……小型潜水艦種は20相対ノットは出る。

 戦闘行動や回頭をすれば、艦隊移動速度もさすがに落ちる……そこを狙われたら、総崩れになりかねない。

 提督の指示は、むしろ危険というべきもの……進言すべきかどうか?

 

「柏木……貴様らのところへ敵を連れて行ってどうするっ! この作戦の目的はなんだ? そもそも、この程度の事でうろたえんなっ! このど阿呆が! 貴様は昔からそうだ……肝心な所でテンパりやがる……まぁ、見てろや」


「佐神! 貴様、何をするつもりだ!」


「我ら由良艦隊は予定通り、敵艦隊を誘引し可能な限り敵を引き付ける! 各艦も攻撃を開始! なぁに、敵戦力を誘引するのが俺達の役目なんだろ? ならばその役、最後までやりとげる! 人間様にも意地があるって事をお嬢ちゃん達にも教えてやるぜ!」


「待て佐神! 勝手な行動は許さん!」


「そ、そうなのです! あなた方、有人艦隊は敵と交戦しない……そう言う約束だったのです!」


 提督と利根さんが必死に止めようとしている……序列としては提督が最上級指揮官なのだから、これは抗命とも言える。


 けど……戦術的には、佐神中佐のほうが正しい。

 

 柏木提督の指示通りに由良艦隊が動いたら、由良艦隊も危険な状況に陥ってしまう上に、利根とわたしだけで、敵艦の全てを相手にする羽目になる……その場合、シミュレーションでも勝率が著しく落ちる事が確認されている。

 

 正面決戦では勝ち目がないからこそ、囮艦隊で敵を分散させ、その隙に強行突破を狙わざるを得ないのだから。

 

 想定外の潜水艦種が10隻もいるとなると、敵戦力は総勢30隻にもなる……勝率は極めて低い……危険な状況。

 

 こうなるともう、由良艦隊に徹底して苦労をしてもらうと言うのが最善……最悪、捨て石にするのもやむを得ない。

 本作戦の戦略目標は、敵の殲滅ではなく、あくまで駆逐艦初霜わたしの次元穿孔への突入とその支援。

 

 目標達成の為ならば、味方の犠牲は許容すべき……戦争に勝つとは、突き詰めればそう言う事。

 

 ……そう頭では解っているのだけど、わたしの中の何かが、それで納得していい訳がないと……無言の叫びを上げる。

 

 未来予測システムの演算結果が表示……このままだと、確実に敵右翼艦隊が由良艦隊を押さえ込む形になる。

 

 事前予想では、右翼艦隊が展開しても、余裕で振り切れるはずだったのだけど……。

 

 伏兵の潜水艦種の攻撃と、それに伴う艦隊速度の低減と、反撃行動でその想定が完全に崩れてしまった。

 ……それに右翼艦隊の行動も無駄がなく、由良艦隊の動きを読みきった上で、かなり早い段階で動いていた……。

 

 もはや、ロケット増速システムを使った上で増速をかけても、捕捉されるのが少し伸びるだけ……そんな状況だった。

 敵重巡の射程に入ったのか、由良艦隊が更なる砲撃を受け始める。

 

 よりにもよって、重砲撃タイプ……榴散弾が艦隊の真上で次々と炸裂し、各艦に被害が出始める。

 

 由良……被弾、小破。

 如月、被弾……中破。

 睦月……至近弾、損害軽微。

  

 各艦より次々入る被害報告。

 一連の被害で戦死20、負傷50。


 ただの数字なのだけど……20人……それだけの人々が、一瞬で命を落としてしまった……。

 掌に痛み……知らず知らずに、拳を握りしめていて、爪が食い込んでいた。


 如月の真上で榴弾が炸裂したせいで、如月の被害が深刻だった。

 その損傷は、速力減を伴うものとなっている。

 

 駆逐艦如月の艦長からは、殿を務める旨の打電が繰り返されていた。

 

「柏木……俺と貴様は、士官学校の一年違いの先輩、後輩……正直、嬉しかったぜ。この俺にこんな大作戦で先陣を切る名誉を与えてくれるなんてな。俺の部下達や他の艦長も同感でな……総員やる気満々だ! 安心しろ、敵右翼艦隊は、俺達が刺し違えてでも潰してやる! 全艦減速……如月と足並みを揃えろ! 足並みが揃ったら、全艦3時方向へ一斉回頭! 敵右翼艦隊へ突撃を敢行する!」


 ……現在の状況から、佐神中佐の作戦結果予測。

 

 被害想定、最良のケースでも艦隊の半数が轟沈との計算結果。

 最悪想定だと……全滅。

 

 条件が悪い……右翼艦隊だけでも数的には劣勢である上に、潜水艦種の追撃を受けている。

 4倍以上の数が相手で、挟み撃ちにされる……それで無事に済むはずがない。


 ……わたしは黙々と演算結果を利根さんへ送信。

 戦術マップのデータが更新され、由良艦隊の予想被害が表示される。


「佐神中佐! 被害想定は見ての通りだ……全滅するぞ! もういいから、退くんだ! あとはこちらで何とかする!」


 柏木提督の警告に、佐神中佐も少しは驚くと思ったのだけど、涼しい顔だった。


「だからどうした? この作戦、桜蘭帝国の未来がかかってるんだってな……。そう言う事なら喜んで、ここで死んでやるさ! 龍驤の航空隊の連中だって気持ちは一緒だろうさ。柏木、それに示現体のお嬢ちゃん達、俺達を……人間を少し位、当てにしてくれないか? 女子供に心配されるほど、俺達はか弱くねぇんだ」


 現場叩き上げのおにぎり頭の厳つい艦長……佐神中佐。

 無理して作ったらしい笑顔は、鬼が笑えばこんな感じ……みたいなんだけど……その想いは伝わってきた。

 

「こちら春日井大尉! 状況はこちらでもモニターしている! 我が隊はこれより由良艦隊の援護に回る! 全機、我に続け!」


 待機命令の出ていたゼロと艦攻隊も突撃を開始しようとする。

 もう作戦は破綻している……こうなれば、犠牲を覚悟の上で彼らを捨て石にする他無い。

 

 つくづく思う……人間は……強い。

 他者を生かすために、未来を託すために、平然とその命すらも投げ捨てる。

 

 でも……だからこそ、これ以上は誰ひとりとして、無駄死にさせてはいけない。


 わたし達は……わたし達の戦いを始めなければならない!


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