外伝1「最終ブリーフィング」②
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現在、2chRead 対策で本作品「宇宙駆けるは帝国海軍駆逐艦!」においては、
部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。
読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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戦術マップに視点を戻す。
次元穿孔、手前左右にインセクター艦隊……こちらから見て、左翼側に戦艦種とその護衛艦種が合わせて8隻ほど。
右翼側には重巡種に率いられた駆逐艦種が12隻。
総計22隻……小型種が大半と言えど、戦力的にはかなりの規模。
特に戦艦種が極めて厄介。
戦力的には、こちらを遥かに圧倒している……。
インセクターが何故、長期間この流域に留まっているのか?
その理由ははっきりとは解っていないが……インセクターの行動パターンの一つとして、次元穿孔に固執する傾向があり、ある種の習性のようなものか、そこから何らかの形でエネルギーを得ているのではないかと推測されていた。
次元穿孔もここ以外の人類の領域でもいくつか発見されていたのだけど、そこからインセクターが湧いてきたりする事があり、その上優先攻撃目標とされる事が判明し、結局桜蘭帝国の領域内にあったものは全て重力爆弾で破壊されてしまった。
今のところ、帝国の領域にほど近い、いわば手が届く流域に位置するこの次元穿孔が、ほとんど唯一の希望の道と言えた。
この次元穿孔から吐き出され、帝国の領域に流れ着いた異文明由来のエーテル空間航行艦。
それがきっかけで、もうひとつのコリドールの存在可能性が見出され……。
そこへ進出できれば、分断された世界を再度つなぎ合わせる事も不可能ではないかもしれない。
このままだとジリ貧だと、誰もが悟っている中のささやかな希望。
けれども、解っていることはあまりに少ない……。
有線式情報プローブの集中投入観測の結果、少なくとも向こう側がインセクターの巣窟ということはない……その事だけは解っているのだけど、セカンドコリドールがどうなっているのか……異文明とはどのような存在なのか。
それらは、全く予想すら付いていなかった。
漂流艦に使われていたテクノロジーや艦橋と思わしき部分の調査結果から、異文明人は人間サイズであり、技術力もほとんど同等レベルだと推測されていたのだけど。
戦闘にでも巻き込まれたのか、損傷も激しく異文明人の死骸なども見つからずじまい。
形状や構造から、戦闘艦艇と言うよりも輸送艦艇……それもごく一部だと推測されていた。
……要するに、向こう側にも似たような星間文明が存在する可能性が高いくらいしか解っていないのが実情。
何より、その異文明人側がインセクターをこちらの世界へ送り込んでいる可能性も否定できない。
……だからこそ、次の段階として、個体戦闘力も高く、激しい重力偏差に堪えられる程の強靭さを持ち、長期間の単独行動も可能なわたし達示現体。
その中でも、トップクラスの生存性を誇るわたしが単艦突入をするという話になったのだ。
有人艦を送り込むというプランも提示されたようなのだけど……転移の際、どのような影響が出るのか予想も出来ない以上、人体実験と変わりない……突入時の重力偏差も人間の耐えられる限界を超える為、死ににいくようなものだった。
そう考えると、わたしのような示現体の投入は理にかなっている。
例え、この世界に帰れなくなっても、少しでもこちらに情報を送り届ければ……それが未来の希望につながる。
……わたしは、そう信じている。
「……現状としては、見ての通りの状況だ。現在、左翼側から由良艦隊が進撃を続けている。連中は、どう言う手段を使っているのか相変わらず良く解らないが……すでに由良艦隊を捕捉したようだ。艦隊フォーメーションを迎撃態勢に移行しつつある。なお、由良艦隊の会敵予想時刻は30分後と予測されている」
由良艦隊は、戦艦種の射程ギリギリを掠めて、左翼敵艦隊を誘引しつつ半円を描くような機動で、更に右翼艦隊の鼻っ面を掠め、そのまま敵艦隊を引き連れて、下流側へ転進する予定だった。
極めて危険な任務なのだけど、彼らは戦闘行動は一切行わないようにと厳命されている。
敵艦隊も次元穿孔からある程度離れると、引き返すと言うのが今まで何度か行われた威力偵察の結果、判明している。
先行する囮艦隊の全艦は、魚雷も撤去した上で増速ブースターを搭載し、初めから敵艦隊から逃げきる事だけを想定している。
これは、わたしの主に提案が採用されている。
駆逐艦にとって、魚雷は戦艦すらも沈めうる言わば、最大火力ではあるのだけど。
最大の重量物でもある上に、危険物とも言えた。
その魚雷を搭載せず、燃料も最低限にし、さらに緊急増速も可能となれば、敵艦隊に追撃されても十分逃げ切れると予想されていた。
生身の人間にあの加速は少々堪えるだろうけれど……致し方ない。
魚雷の撤去については、乗員側も随分抵抗したらしいが、駆逐艦の場合魚雷がほとんどむき出しで、至近弾で誘爆、轟沈した例は、今も昔もさほど珍しくない。
わたしも厳しい戦況下では、魚雷は真っ先に投棄している……実戦においては、敵を倒すことよりも、生存率を上げる事が重要なのだ。
戦艦クラスを相手にして、沈められることなくその主攻を引き受けられるなら、それは事実上、戦艦一隻を無力化したに等しい。
沈められない限り、駆逐艦にだってやれることはいくらでもあるのだ。
結局、乗員達は不承不承と言った様子だったが……非稼動状態の示現体からは、全艦から同意の意志は確認できている。
彼女達もわたし達同様、乗員の死傷は嫌なのだ……。
「インセクターが従来通りの行動パターンを示せば、右翼艦隊も由良艦隊を迎撃する為に動くはずだ。この段階で利根と初霜が前進開始する事となる。突破ルートは敵左翼側を想定している……戦艦種の正面へと進むことになるが、ヤツの足は鈍足だ。この時点で孤立している可能性が高く、その場合は利根とその艦載機瑞雲、初霜で集中攻撃を仕掛ける。そして動きが止まった所で、龍驤の有人艦載機部隊が止めを刺す……ただし、これはあくまで戦艦種の戦闘力が衰えた上での話だ……火力や護衛艦が健在な場合は、航空攻撃の中断もあり得る」
「……航空攻撃に際して、犠牲は常に付き物です。……我ら航空戦隊にとっては、先陣を切り、散ってこそ華と考えております。提督……攻撃の順番を再考することを進言します」
若い士官が割り込んでくる。
ゼロ隊の指揮官……春日井大尉だった。
「却下だ……VRシミュレーション結果では、そのやり方では損害が大きすぎると判定された。春日井大尉……諸君らの出番は予定通り一番最後とする予定だ。……元々ゼロでの戦艦種への爆撃なんぞ、損害ばかりでさしたる戦果は期待できない。君達の役割は上空警戒と万が一敵の空からの増援の際の対応だ……役割を取り違えるな」
「……小官は納得出来ません! 我々は戦力外……と言うことですか!」
「戦力外とは言わない……場合によっては戦況を左右する重要な予備戦力だと認識している。君はパイロットとしても指揮官としても有能な士官だ。そう言う者だからこそ、出来る役割がある……君達は今後、龍驤の無人機のアグレッサー役や戦術ドライバ開発、サードフェイズの基礎技術開発に、大いに仕事をしてもらうつもりだ。こんな所で簡単に死なれては困る。すまんが、これは命令だ……諸君は最終局面に至り別命あるまで、後方にて待機せよ! そう言う事なら、納得出来るだろう?」
「命令であれば、致し方ありません……了解であります」
春日井大尉は、まだ何か言いたげな様子だったけど。
命令と言われてしまえば、引き下がるしか無かったようだ。
「さて、戦艦種の対策だが……片舷への集中攻撃で砲塔を無力化するか、足を殺せれば、ほぼ突破は成功したも同然。だから、そのどちらかを目指すこととする。想定外の増援艦隊などが現れなければ、それで問題ないだろう。敵艦隊を突破後……駆逐艦初霜は次元穿孔へ突入する。突入を確認後、重巡利根及び艦載機部隊は速やかに反転し撤収する。敵艦の撃破に拘泥する必要は一切ない……各員そのつもりでいて欲しい」
柏木提督の作戦説明は、これで終わり……後はもう、時間の許す限りの質疑応答を残すのみだった。




