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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
外伝「出撃前夜」

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外伝1「出撃前夜」④

「うん……その……なんだ、満足したか?」


 目の前に並んだ全てのスイーツを制覇して、人心地ついたわたしに呆れたように言う中佐。

 かなりの量だったのだけど、夢中で食べているうちにいつの間にかなくなってしまった。

 

 少し名残惜しいのだけど……何事も過ぎたるは及ばざるが如しと言いますからね。

 物足りないくらいが、一番良いのだ。

 

「わたし……とっても満足です。柏木中佐……ありがとうございました。これで、心置きなく任務に就けます」


 ……今度の任務は、セカンドコリドールへ続くと予想される次元穿孔への単身突入偵察ミッション。

 インセクターの領域内にある上に、詳しい情報が一切ない未知の領域。

 

 エーテル空間戦闘艦の突入実績も全く無く……生還の可能性は極めて低い。

 

 本来は雪風と二隻体制で挑む予定だったのだけど……雪風の損傷で初霜わたし単艦での突入となった。

 

 その為、タダでさえ低かった作戦成功率が更に下がったのだけど、どのみち零コンマ台なのは変わりない。

 はっきり言って、誤差だ。

 

 わたしは……雪風を道連れにするようなことにならなかった事に、密かに感謝していた……。

 

「……そうか……例のセカンドへの突入作戦か……」


「はい……戻ってこれる可能性は半々……なんて言われてますけど、実際は一割どころか、一分にも満たないとわたしは計算してます。そもそも、それ以前にインセクターの巣窟を突破できるかどうかも正直、怪しいですね……」


 わたしの言葉に柏木中佐は深い溜め息を吐く。

 

「クソッタレ……お前らみたいな貴重な戦力を、あんな投機的な作戦に費やするなんて、参謀本部は何考えてやがんだ」


「……僕ら、自立稼働示現体による無人艦の実戦データとしては、十分なものが集まったんだってね。……つまり、僕らは用済み。なら、博打に投入して、あわよくばって感じじゃないかな? まぁ、そんなもんだろうさ」


「すまん……計画を覆すだけの権限が、俺にあればよかったんだが……。結局、こんな程度の事しかしてやれん。……本当にすまない」


「お気持ちだけで十分です。それにセカンドの存在自体は、すでに確認されてますからね。あれはこの世界の希望です……その最初の一歩を刻むお役目……むしろ、光栄に思ってます」


「……お前は……それでいいのか? 死ねと言われているのに等しいのだぞ?」


「その程度……わたしも雪風も駆逐艦だった頃から、何度も経験してますよ。……キスカ撤退に北号作戦、坊ノ岬……佐渡ヶ島沖海戦……いずれも作戦成功率は一桁台なんて言われてました。佐渡ヶ島沖では、結局艦自体が最後まで持たなくて沈んじゃいましたけど。今更、その程度……どってことないですよ」


 ……過信する訳ではないけれど……駆逐艦初霜は幸運艦と名高い艦だった。

 

 キスカでは、若葉ともども敵艦隊を引きつける為の囮として……北号では先導役を引き受け、敵との遭遇をすべて回避。


 坊ノ岬でも……大和を守りきることこそ、叶わなかったものの……大和の隣で敵機の集中攻撃が降り注ぐ中、ほとんど無傷。

 

 佐渡ヶ島沖海戦では、大戦を生き伸びた艦艇はもちろん、大破着底した艦すらも修復し、かき集め……ほとんどすべての戦力を投入した決戦で、動員艦艇の半数が沈む中、最後までしぶとく生き残った。

 

 駆逐艦初霜は、あの激戦で一発の被弾もせず凌いだのだけど。

 宮津湾での被雷の被害は艦のキールにまで及んでおり、本来はあのまま打ち捨てられるはずだったのだ。


 そこへ、一海戦持てば十分と言う事で、強引な修理を施され第二次日本海海戦に出撃。

 結局、最終決戦の佐渡ヶ島沖海戦自体は乗り切ったものの。

 日本への帰途の途上で力尽きることになった。


 主機が異常停止し、艦体のあちこちから浸水が始まり、ゆっくりと傾斜。


 救援に駆けつけた雪風や磯風、前衛艦隊旗艦利根……そして、駆逐艦初霜の乗組員達。

 彼らに見守る中、初霜は役目を終え、力尽きた様に海へと還って行った。

 

 戦いに勝利し、乗組員も誰一人死なせずに、日本に帰すことが出来た……まさに、本懐だった。


「柏木中佐……せめて、僕の艦体が直るまで作戦を順延とか、それくらい出来ないのかい? 僕もセカンドへの次元穿孔へ続く流域の敵戦力の配置情報を調べてみたんだけど……。戦艦種も含めて、軽く20隻はいる……あれを単艦で突破するのは至難の業だよ」


「そうだな……作戦の中断は、今更出来ないだろうが……。せめて、突入支援艦隊くらい出せないか……交渉してやるよ。次元穿孔に辿り着く前に沈められてるようじゃ、そもそも作戦自体やる意味がない……ちょっとそこで待ってろ」


 そう言うと柏木中佐は席を立つと、携帯端末を片手に何処かに連絡を付けているようだった。

 

「……雪風……別に無理して、わたしに付き合う必要なんてないです」

 

「いいや、どうせ……君が失敗したら、次は僕の番さ。早いか遅いかの違いだよ……。なら、一緒に行こうよ。君と僕なら不可能だって、可能に出来る……僕はそう信じてる」


 そう言って、雪風が笑う……雪風が一緒……。

 それはとても心強い事なのだけど、なんだか気が進まなかった。

 

 やがて、柏木中佐が戻ってくる。

 

「柏木中佐……どうだったんだい? 交渉は……」


「すまんな……上と交渉したんだが、48時間の作戦順延を認めさせるのがやっとだった……。まぁ、明日の出撃は準備不足って事で、時間は稼いだ。もっとも、この程度じゃ雪風の方は間に合わんか」


「……なにせ、帰還するのがやっとの全損状態だったからね……。そうか……それは実に残念だ……本当に……」


 雪風が俯くとギュッと唇を噛んで、拳を握りしめるのが解った。

 わたしはそっとその手に掌を重ねる……その気持ちだけで十分だった。

 

「……そうなると、やはり単艦突入ですか……けど、大丈夫! なんとかします。でも、48時間とはいえ、時間に余裕が出来たのは助かります。現状、リアクターの出力が安定しない上に、蓄電素子の稼働率も万全とは言いがたかったので……」


「ああ、問題点があるようなら、是非報告してくれ。艤装も大物の交換リクエストなんかも、あれば言ってくれ、むしろ些細な不具合だって構わんぞ、時間稼ぎの交渉材料になるからな」


「なるほど、細々とした整備不良をネタに作戦決行を引き伸ばす……そう言うことだね。けど、戦力不足についてはどうするんだい? 繰り返しになるけど単艦じゃ絶対に突破は無理だ。せめて、敵の主攻を引き受ける囮役くらいはいないと、どうにもならない」


「囮役か……そう言う事なら、俺のところの重巡利根を使おう」


「重巡利根? あれは確か大幅改装中のはずじゃなかったかな……」


「そう、大幅改装中だが、それも明日には完了し、無人艦として運用が開始される。セカンドフェイズ……聞いたことあるだろう? 自律稼働示現体による無人運用艦の次期テストケース……君達、駆逐艦で予想以上の戦果が出せたからな……。次の段階として重巡以上の大型主力艦艇で実施される事が決まってたんだ。……それがうちの利根って訳だ。次期サードフェイズでは空母による無人艦載機運用も視野に入れているからな……航空巡洋艦の利根が選ばれたのも、それが大きな理由だ」


「へぇ……セカンドフェイズか……。なるほど、僕らファーストフェイズは最後の任務として、その戦闘経験を後輩に譲り渡せと……そう言う事かい?」


「そう言うな……お前達の仕事振りで自律稼働示現体は戦力として信頼に足る。……そう判断されたんだ。だからこそ、本来の予定が大幅に繰り上がったんだ。どうだ? 曲がりなりにも重巡洋艦だ……単艦とは言え、戦力的にはなかなかのもののはずだ」


「確かに、戦力的には……ね。ただ、無人運用となると話は別。その辺はどうするのさ?」


「そうだな。要するに起きたてのヒヨッコ状態での参戦になるからな……。誰か経験豊富な示現体のフォローが必要なんだが……。確か、自艦の再建中で暇そうな示現体がいたと思ったんだがな……」


 そう言って、柏木中佐は雪風に視線を送る。


「柏木中佐……そう言う事なら、僕にも出番がありそうだね」


「そう言う事だ……すまんが、付き合ってもらえるか?」


「ああ、そう言う事なら、喜んでやらせてもらう……。初霜……見送り程度になるだろうけど、少しは希望が出てきたんじゃないかな?」


「……柏木中佐……そんな……さすがに無茶じゃないですか?」


「雪風……この場合の突破成功率は、どんなもんだ? 概算でいいぞ」


「そうだね……初霜単艦での突破成功率は一割以下……パーセンテージで言うと一桁台。更にセカンドから無事生還となるともう1%を確実に切る……。でも、重巡利根の支援がある想定なら、突破成功率自体は最大限に見積もって半々くらいまで向上する……僕に言わせれば、半々なんて、贅沢すぎる数値だよ」


「そりゃ、お前の感覚がおかしい……五分五分なんて、普通に賭けだろ。……だが、ギャンブルとしちゃなかなか悪くない数字だ……だが、その数値の根拠は? そこまでのものなのか?」


「そうだね……。まず敵艦隊は戦艦種を含むとは言え、空母系を随伴してない。一方、利根は瑞雲を搭載してる。数は少なくても僕が持ってる航空管制ドライバを使えば、全機にエースパイロットを乗せたくらいの効果はある……。砲火力も僕ら駆逐艦とは訳が違う。戦艦種を上手く引き付ければ、成功の見込みは高いね」


「無人航空機の戦術ドライバや航空管制システムなんて、どこから湧いたと思ってたんだが、お前らがテストしてたのか……」


「そう言う事。実戦に投入された訳じゃないけど、VR演習では本職の航空隊の連中を翻弄した程度には、使えるはずだよ」


「なるほど……そう言う事なら、決まりだな! 雪風、初霜……ひとつ頼んだぞ!」


 柏木中佐がニヤリと笑う。

 

 ……かくして、半ば絶望的と判断していたセカンドへの突入作戦は……思わぬ展開を見せることとなった。

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 現在、2chRead 対策で本作品「宇宙そら駆けるは帝国海軍駆逐艦!」においては、

 部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。

 読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。 

                  Copyright © 2018 MITT All Rights Reserved. 

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この外伝、思った以上のボリュームになり、3-40000くらいに達する見込みです。

しばらく、おつきあいください。(笑)

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