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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
外伝「出撃前夜」

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外伝1「出撃前夜」②

 わたしも始めて入るのだけど、士官用の喫茶室と言うのは、思った以上に豪華だった。

 

 フカフカの絨毯に、本物の木で出来た黒檀のテーブルと椅子が並んでいる。

 豪華なシャンデリアの少し暗めの明かりに照らされて、メイド服を着た従業員が無言で一礼をする。

 

「奥のパーティションを借りるぞ? こいつらは俺の命令で同行してるし、便宜上とは言え少佐待遇……立派な士官だ……なんら問題はなかろう?」


 そう言って、柏木中佐は自分のIDカードを提示する。

 

 ちなみに、途中のセキュリティは、わたし達に支給されていたIDカードであっさり通れた。

 中佐の話だと、わたし達は便宜上、駆逐艦の艦長クラスと同等の少佐の階級と権限が与えられてるらしい……知らなかった。


 中佐の話だと、この基地内をわたし達が、ウロついていても、少佐権限がある以上、本来は別に問題になら無いという話だった。


「畏まりました中佐殿……では、奥にご案内します」


 メイドさんに案内されて、パーティションで区切られたテーブルに案内される。

 

 椅子のクッションもフカフカで、勢いよく座ったら思い切り沈み込んで、思わずワタワタする。

 そんなわたしを面白そうに眺める柏木中佐。

 

 ……一方、雪風は優雅な仕草でふわっと椅子に腰掛ける。


 なるほど……勢い良く座るとこうなるから、本来はそうやってゆっくり座らないといけないんだね。

 ……さすが、雪風ちゃん!

 

「元々ここは、将官様の密談とか、俺達士官連中の情報交換なんかにも使うところでな……。声も漏れんし、顔を合わせてもお互い見なかった事にする。ここは、そう言う所なんだ。お前らもその辺は気を使う必要はないぞ。それに建前上とは言え、利用資格もちゃんとある……遠慮は無用だ」


「はぁ……椅子一つ取っても、すごく立派ですね……。わたし達の艦のブリッジとは訳が違いますね」


「そもそも、駆逐艦の艦橋に椅子なんて無いからね。長時間の航行なんかだと、弾薬箱に腰掛けたり、床に寝っ転がったりしてるよ」


「……雪風、たまに物凄くだらけてますよね……」


「そうだな……俺も艦のブリッジの居住性とか、少しは考えろって言いたいぜ。さて……好きなものを頼んでもらっていいぞ? 正直、お前らの好みなんぞ、解らん。値段とかは気にせんでいいぞ。中佐ともなれば給料も悪くないし、どうせツケだ……。なんだったら、適当なモノで腹ごしらえもしていけ。合成品ばかりだが、味気ない戦闘食よりはマシだろう?」


 雪風といっしょにメニューを覗き込んで見る。

 見たことない食べ物やら、お酒なんかが写真付きで載ってる。

 

 わたしの知ってるお料理とかは……カレーライスとかおにぎり?

 カレーライスは兵隊の皆さんがよく食べてたのを覚えてる……。

 ラーメン、ステーキに、冷やし中華。


 ここ……何屋さんなんだろ?


「これは……なんでしょうね?」


 『Sweets』と書かれたところのメニューを広げてみて、思わず視線が釘付けになる。


 赤いのや白くてフワフワしてそうな何か……ケーキとか言うらしい。

 果物やらお菓子っぽいのがいっぱい載った……パフェとか言うのにも不思議と心惹かれた。

 

 ……お肉とかお魚の良く解らない料理より、このスイーツと言うものに無性に興味が湧いてきた。

 

「ぼ、僕は初霜と同じのでいいよ……」


 困ったように雪風が苦笑しつつ告げる。


「なら、この赤いのが乗ったしょーとけーきってのにしましょう!」


 やたら力のこもった声になってしまい、雪風が微妙な表情で見つめ返す。

 ……わたしの勘が告げていたのだ……これを食べなきゃ、きっと後悔すると。


「はははっ! 何を頼むのかと思ったら、そんなものでいいのか……なら、飲み物はコーヒーでいいか? ケーキと合わせるなら、紅茶ってのも悪くない……オススメだぞ?」


「じゃあ、わたしはその紅茶ってのがいいです。雪風は?」


「僕は……そうだね……コーヒーにしてみよう。ほら、警備兵達が夜勤の時とかに、缶入りの飲んでるの見たことないかい? 目が覚めるとか言ってたよ」


「へぇ……そう言えば、確かそんなの乗組員の方々も飲んでましたね」


「やれやれ……せっかく人と変わらん身体があるんだからな。……お前達にも、少しは生きる楽しみって奴を教えてやりたいと思ったんだが……なかなかいい反応じゃないか。うちにも利根の示現体がいるんだが……文字データで話しかけても、どうも面白みに欠けててな。年中カプセルに詰め込まれて、何の問題もないとか平然と言いやがる」


「我々の主任務は戦うことですからね……本来、このような身体が必要かと言われれば、正直疑問です」


「だが……お前らを自律稼働させた結果、完全な無人稼働が実現出来て、将来的に人間が戦場に立つ必要がなくなるかもしれないと言う話じゃないか……。お前達を無理やり、抑え込む今の俺達のやり方は……間違っているような気がするんだ……」


 難しい顔で柏木中佐がそんな事を言う。

 確かに、以前の運用では、初霜にも大量の軍人が乗り込んでいたんだけど……。

 

 正直、効率の悪さは否めなかった……。

 なにぶん命令やハードウェアを介した操艦は、わたしがダイレクトコントロールすることに比べたら、恐ろしくまどろっこしい。

 

 せっかく、未来予測システムがあっても、有人による多人数操艦では、未来予測値を提示しても、操作員の判断、操作と余計なプロセスが多すぎて、結果的に何の意味もなかった。

 

 この示現体によるダイレクトフルコントロールが実現できたからこそ、未来予測システムも真価を発揮出来るようなったのだ……先の戦闘の戦果も未来予測システムの恩恵は大きかった。


 雪風が作ってくれた……ほんの小さな針の穴を突くような一瞬のチャンス。

 それを活かせた故の奇跡的な勝利……それが先の一戦の実情だった。


 いや、奇跡と言うより……雪風との情報連結により、高度な相互連携を実現出来たからと言うべきだろう。


 従来型の有人艦だったら……双方爆沈が関の山だっただろう……。


 軍人たちには表立っては、とても言えないのだけど……わたし達、戦闘艦艇示現体の有用性は明らかだった。


 100mを超えるような戦闘艦を自分の手足のように操れ、何より、いくら艦に損害を受けようが、誰も死なない……その点は極めて高く評価出来る。


 元々、コリードール空間の環境は、生身の人間が戦えるような環境ではないのだから……。

 エーテルの海に落ちた人間は10秒も持たずに蒸発する……エーテル気体も呼吸可能なのは、流体面付近のほんの10m程度まで……そこから上は帯電したプラズマ雲で霞む死の世界……。


 戦闘機の類も気密服が必須。

 燃料切れで不時着したり、撃墜されるとほぼ100%戦死……太平洋戦争の頃の方が、まだ生還の見込みがあっただけマシ。

 

 ……戦いなんて、わたし達がすべて引き受ければいい……そう思う。

 たとえ艦がエーテルの海に沈んでも……それは、わたし達示現体一人が犠牲になるだけの話だから。


 わたし達、示現体にとっては、戦いの果てに沈む……それはそれで本望だった。

 

「……そうですね。戦場も、コリドール空間も生身の人間が戦うには過酷に過ぎます。……それこそ、わたし達のような存在だけがあの戦場で戦うのが、本来あるべき姿なのかもしれません。実際、効率の面ではわたし達、自律示現体の統一制御の方が遥かに効率的ですから……でも」


 そこまで言って、少し言葉を切って、柏木中佐をじっと見つめる。


「……でも?」


「人と共に戦う事を望む……それもまたわたし達の本能のようなものみたいです。……こうして、お話出来ただけでも、わたしはとても嬉しいんです」


 そう言って、微笑んで見る。

 実際、こんな風に普通の女の子のように扱ってもらえるとか……なんだろう。


 何と言うか……満ち足りたような思いだった。

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