第十七話「始動! 第26独立機動艦隊!」③
それはさておき、ハーマイオニーさん。
防空戦闘指揮官としての適性が高いなら、祥鳳、信濃の護衛艦隊の隊長格としてはうってつけ。
正直、シホちゃんに空戦指揮と防空戦闘指揮を兼任させざるを得ない状況は、問題と思っていたので、ハーマイオニーさんのような護衛戦闘の専門家の参戦は非常に助かる。
アドモス商会に一つ借りが出来てしまった……。
「ひとまず、編成としては祥鳳が旗艦と言うのは変わらずだけど、信濃さんは航空隊の主力を任せるよ。信濃さんの使う秋茜とか言うのは、戦闘攻撃機ってとこらしいからね。黒船側も例の大型ドラゴンタイプとかが各所で確認されているようだから、おそらく次の戦いでも出てくるだろうね。あれは、どうも母艦を必要としないスタンドアロンタイプのようで、航続距離も長く非常に厄介な相手のようだ……カドワキさんその辺の対策はどんなもんで?」
「おう! その辺は任せろ! 新型のアサルト・ゼロとバスター・ゼロの先行試験機が610の千歳、千代田に配備されてるんだが、すでにドラゴン級相手に戦果を挙げてるぜ! 奴ら、護衛の小型ドラゴン……ワイバーン級なんてのも出してきてるんだが、アサルトがワイバーンの相手をして、バスターが後方からドラゴンを仕留める……この戦術で対応出来てる。秋茜はまだ対ドラゴン戦での実績はないんだが……30mmガトリング砲やロケット弾も十分有効打を与えられるはずだ。……あちらさんの航空戦力は、重防御と大型化の傾向が強まりつつあるからな。こちらも格闘戦重視の軽戦闘機じゃなく、火力と防御重視の重戦闘機を投入しないと奴らにゃ勝てんと言うのが、エスクロンとうちの共通認識だ」
得意そうに口を挟んでくるのは、アドモス商会の兵器技術開発課の主管エンジニアでもあるカドワキ氏。
2000年前後のアニメから着想を得た変態兵器をやたらと開発するのだけど、意外と堅実派でシホちゃん達の意見もちゃんと聞いてくれるらしい。
人型機動兵器とか馬鹿なモノを開発してくるんじゃないかと警戒していたのだけど。
人型兵器がエーテルロード戦では、お呼びでない事は解っているようで、私の懸念を伝えた所、浪漫なのは確かだが、実戦で使えるわけがないと一笑に付された。
個人的には、人型機動兵器のような浪漫兵器は男の子の憧れだと思うのだけど、黒船相手に人型兵器で格闘戦とか全く意味がない。
その辺はちゃんと解ってるようで、むしろエスクロンよりも堅実な物を作るという印象だった。
まぁ、その辺は未来人の兵器を転用するエスクロンと、エーテル空間戦闘艦の装備を発展させると言うカドワキ氏達の技術思想の差異なんだと思う。
どちらもそれなりに長所短所はあるので、両社がお互い競い合って、フォローしあっている現状は決して悪いものではなかった。
実際、カドワキ氏達が作った垂直発射方式の飛翔魚雷も、面制圧兵器として意外と実戦で有用とされたので、雷電姉妹辺りはすでに搭載済み。
被弾誘爆を嫌って、魚雷を装備することが滅多にない初霜ですら、飛翔魚雷パッケージについては、二基も搭載したくらいなので、どうもそれなりに有用な兵器らしかった。
「カドワキさん達のV型ゼロ……悪くないみたいだね。IJN系の空母系の娘達にもかなり好評みたいで、順調に普及してるらしいじゃないか。アサルトパーツとバスターパーツというパーツ交換システムで運用に柔軟性を保たせつつ、従来機の強化という手法……保守的な娘が多いなかよく考えていると感心したよ」
「あたぼうよ! こちとら使ってもらわにゃ話にならんからな……連中、ゼロの形してりゃ、それで満足らしいからな。むしろ、使用者側の要望に沿ったと言って欲しいな」
「まったく、アドモスさんにも色々お世話になってしまった……今後も頼みますよ。」
「そりゃ、こっちのセリフだぜ……こっちもあの初霜ちゃんに随分協力してもらったからな……。うちとしても、おたくらのような実戦派の艦隊のバックアップ企業として贔屓にしてもらえるのは実にありがたい。なんか必要なものがあったら、ジャンジャンリクエストしてくれ! それにこの三人もうちの企業支援艦隊の一員だったんだが、旦那の為に引っ張ってきたんだ……信濃ちゃん共々面倒見てやってくれ!」
最初はマッド系エンジニアだと思ったのだけど、この人物……意外と出来るエンジニアだった。
元々我が艦隊はエスクロンがスポンサーとして名乗り出ていたのだけど、先月の捕物で初霜が活躍してしまったせいですっかり目を付けられてしまったらしく、猛烈な売り込みを掛けてきた。
元々610艦隊のスポンサー企業でもあり、こちらにも信濃さんやハーマイオニーさん達を増援として手配してくれるなど、裏に表に強力に支援してくれていた。
「ありがとう、色々助かりますよ。これなら後衛の空母護衛をハーマイオニーさんとJ級の二人と、疾風ちゃんの4人体制にできる。初霜と雷電姉妹は前衛、伊400のヨーコさんは偵察や伏撃として便利使いさせてもらう……編成としてはこんな感じで行こうと思う……どうかな?」
ハーマイオニーさんは、提督に同意するようにうんうんと力強く頷いている。
ここまで無口で指揮艦とか務まるのかなと思わなくもないのだけど……実際の戦闘指揮は、データリンクでの非言語的なやり取りで行うので、問題ないのだろう。
「わたしも、問題ないと思います。黒船も潜行種や飛翔種の新型の交戦例が増えてますからね。カドワキさん、あとでハーマイオニーさんとJ級のお二人もシステムアップデートをしてもらいましょう」
「ああ、初霜ちゃんと疾風ちゃん、それに雷電姉妹は新型オペレートシステムなんだっけかな。空母の方のオペレートシステムは、駆逐艦とかとは勝手が違うから、移行のハードルがなかなか高くて難儀してるが……そのうちなんとかするさ。ハーマイオニーについては、戦歴見てもらえば分かる通り、割と歴戦の防空艦だからな……永友艦隊の防空戦闘能力は相当高くなるだろうさ。三人共、この新型オペレートシステムについて、ちょっとデータ見てくれや」
カドワキ氏が三人に技術的な説明を始めると……三人が目を見開きながら、目を輝かせている。
この三人は、事実上のアドモス商会専属の護衛艦だったのらしいのだけど。
カドワキ氏達が気を回して、こちらの増援として組み込んでくれたのだ。
星間連合軍の上層部にも根回しをしていたようで、話自体は驚くほどスムーズにまとまった。
何だかんだ言って、星間企業というものは、政治的影響力も高いようだった……。
そして、私の権限というのも、私の知らない間にずいぶん高くなっているようだった。
さすがに、少しは自分の影響力というものを実感している。
新参の彼女達については、正規艦隊と違い企業支援艦隊所属だっただけに、先進装備を受け入れるだけの柔軟性もあるようで、なかなかの逸材のようだった。
……かくして、我々の戦闘準備は着々と整えられつつあった。
現状の迎撃態勢は万全とも言える布陣で、余程の大戦力が相手でない限り、恐らく守りきれるだろう。
けれども、懸念点も無いこともなかった。
皆には、話していないのだけど。
カドワキ氏の報告によると、回収できた敵性晴嵐の解析結果から、ソフトウェア周りが初霜のものと共通しているとの報告があったのだ。
つまり、敵性伊400と初霜は同じ陣営の所属艦の可能性が高いと言うのが現時点での結論。
だがしかし、その事は敵性艦の極めて高い戦闘力への裏打ちともなっていた。
我々は次の戦いの相手は、黒船と言う想定でいるのだけど。
万が一、敵性伊400の陣営が攻め込んでくるような事態となれば……。
初霜や伊400の戦闘力はいずれも強力……伊400は島風さん達対潜戦闘のエキスパートを退けているし、初霜に至っては、これまでの戦績でも単独で戦局を左右するほどと実証されている。
もし、初霜が敵に回って、あのレベルの艦が複数で攻めてきたら……そう思うとぞっとする。
そうなったら、我々では対抗できないかもしれない。
それに、初霜自身も何を考えているのだろう?
何より、敵性工作員の可能性が高い例のイオンと言う少女のことも……。
最近、初霜と親身になって話す機会に恵まれず……なんとなく、距離が空いてしまっていた。
あれこれ、考えていても仕方がないので、全員解散後……私は初霜に、一人で司令室に来るように伝えておいた。
かくして、私と彼女は司令室に二人きりで、話をする事になった……。
とりあえず、色々改稿中なので、ブクマいただいてる方へは訳の解らないタイミングで更新通知が行ってると思います。
お騒がせしております。
調子に乗って、今日も7時アップです。
……一話分を短めにして、なるべく頻繁にアップする方針にしてみようかなと。




