第十五話「眼下の敵を捕獲せよっ!」③
新手の出現に当然敵も反応したようで、生き残った5機の晴嵐が一斉にスツーカに群がる。
元の晴嵐とかけ離れた高性能機5機掛かりで追われているにもかかわらず、スツーカは巧妙に銃撃を回避すると、それどころか後方機銃で一機を返り討ちにする!
「うむ……マラート君特性の戦闘ドライバもなかなかの代物になってきたな! 敵もまぁまぁの腕利きのようだが……。私の駆るスツーカを落とそうなど、100年早いな……出直して来いッ!」
「大佐! 対空砲火来ます! 回避をっ!」
……無線越しのもう一人の声……その直後に下からの荷電粒子砲の光芒が迫る!
けれども……発射よりもワンテンポ早く回避行動に移っていたスツーカはそれを容易く回避する!
さらに、残った4機の晴嵐からの集中砲火にさらされているのに、それすらも避けていく……!
このスツーカ、どうなってるの? 有人で直接操縦してる様子なのだけど、動きがもはやキモいレベル!
どうやったら、こんな変態機動が出来るのか……?
スツーカなんて鈍足で頑丈さ以外取り柄のない爆撃機のはずなんだけど……。
もはや、理不尽を通り越して、冗談のような光景だった……。
「今のは、どうやら新兵器のたぐいのようだが……撃つと決めてから発射までのタイムラグが大きいようだな。いくら威力があろうとも、当たらないのでは世話ないな。……それにしても、千代田君……遅いぞ」
その言葉とともに、スツーカを追撃していた晴嵐の一機が吹き飛ぶ!
雲間からの銃撃だった! 増援?!
「何言ってんのさっ! 大佐が急ぎすぎなんだってば! こっちだって半分ちょっとしか出せなかったんだから! お、何こいつ……避けんの? 結構、やるじゃない……でも、水上機風情がこの新型ゼロに勝てると思ってんのかなぁ?」
上空の雲の隙間から、ワラワラと22型のゼロ戦が舞い降りてくる。
その数、ざっと8機……。
多勢に無勢と悟ったのか、生き残った3機が例の鋭角的な急降下で射線を回避しようとする。
「うぇっ! なんかカックーンッ! って曲がった! なにそれキモい! でも、そう来るのは読み通り……この千代田さんに読み合いで勝とうなんて、100年早いっ! いくらすばしっこくっても、クロスファイアで一挙に殲滅よ!」
勝ち誇った台詞と共にエーテル流体面ギリギリを進んでいた4機のゼロの編隊が急上昇してきて、先に現れた8機と合わせての十字砲火点を形成する……3機の晴嵐はそのど真ん中へ飛び込むような形となり、三機ともあっさりと引き裂かれ、エーテルの空の華となる!
「はい、おしまい! なんだ……もう終わり? 島風ちゃんの話だと結構な腕利きって話だったけど。結局、航空戦って数と相互連携がキモなのよね……。ま、まぁ……大佐は別格だけどさ……いやぁ、大佐が味方でよかったわぁ。信濃ちゃん、お久しぶり……間に合ったようで、良かった良かった!」
「まだよっ! 油断しないで! 荷電粒子砲来るよ!」
言ってる矢先から、エーテル流体面下からの荷電粒子砲の砲撃!
けれど、狙われたゼロはすでに回避行動に移っていて、その砲撃を回避する。
スツーカと言い千代田のゼロと言い……先読み回避が尋常じゃない! どうなってるの?
「ちょっ! 千代田……なんで、今のタイミングで避けられるのよ!」
「何でって……撃たれるより先に警告してくれるからね。どこからいつ撃たれるってのが解ってりゃ、回避も楽勝……当たったら一撃だろうけど、当たらなきゃ意味ないし! それよりフレッチャーズ! 今ので敵艦の位置を特定出来ただろっ! こっちでも艦影捉えた! とりあえず、撃っちゃえ!」
「その十把一からげみたいな呼び方やめて下さーい! 私はUSNチャレット! 相方はコニーちゃん! 敵艦未来座標受領……とりあえず、射程内なんで撃ちます! 全砲門ファイアーッ!」
こちらの戦術マップとリンクしたようで、マップ上に次々増援の艦影が表示されていく。
先陣を切るのはチャレットとコナー。
後方に千代田、周辺には12機のゼロ22型、更に私の上空にはJu-87スツーカ!
あれ? こっちの彩雲や生き残りの秋茜まで勝手にデータリンク統合されて、マップ上に表示されてる……強制外部アクセス?
なんだこれ……誰がやってるの?
着弾ギリギリのタイミングで敵影ロスト……どうやら、相手は深く潜って回避する心づもりらしい。
こうなると尻尾を捕まえるのは骨が折れる。
その上、相手はアクティブソナーを無力化する隠密性の極めて高い潜水艦。
ホント、厄介な相手……10mも潜れない黒船の潜行艦とは訳が違う……。
「敵影ロスト! これより、二隻同時で変調ピンガー打ちます! コナー! しくじらないでね!」
「打ち合わせ通りだね……3、2、1……今っ! やった! 敵艦エコーあり! 捕まえたっ! って、魚雷二発が接近中ーっ! チャレット! 回避行動に移ってっ! えっ? 長距離ホーミング魚雷ってなに? なんか、回避コースの指示付きで弾道予測来てるけど……曲がるの? なにそれ! ううっ……これは、もう黙って従っちゃおうっ! 回避! 回避ーっ!」
「正直、もう訳が解らないんだけど……ここはあの娘を信じようっ! とにかく、こっちの仕事はこれでおしまい! あとはハーダーちゃんにお任せよっ! てっしゅーっ!」
二人の交信の直後に、敵影と重なるようにUSNハーダーのマーカーが表示。
ええっ! そんなとこにいたの?!
彩雲からの拡大映像を回す……敵艦座標に激しい水泡が立ち、伊400がその巨体をさらけ出す。
それだけにとどまらず、伊400は艦体の後ろ半分が持ち上がった、不自然な姿勢で浮き上がる!
更にその下から顔をだしたのはUSNハーダー!
伊400は完全に艦尾側からハーダーに持ち上げられた状態になって身動きが取れなくなる!
「おおっしゃあっ! マジかよっ! 半信半疑で言われたとこで浮上したら、ドンピシャでブチかましてるじゃねぇか! ケツ上がっちまったら、いくらなんでもどうにもなんねぇだろ! こうなったら相討ち上等っ! これでも喰らいやがれっ!」
密着した状態からの、ハーダーの対空機銃と艦載砲が一斉に火を噴く……ハーダー本人もハッチから飛び出してくると、嬉々としてロケットランチャーを構えてぶっ放す!
伊400のスクリューと機関部が破壊され火を吹き、6門3基の荷電粒子砲もたちまち全損!
その装甲もみるみるうちに穴だらけになっていく……。
……あれだけ苦戦した相手が増援艦隊の流れるような連携攻撃の前にあっけなく無力化してしまった。
こっちとしては、もう言葉もない……。
「おいおい……お前ら、なんなんだ! その鮮やかな連携は! しかも、この化物潜水艦を鹵獲とか……信じらんねぇっ! 千代田……お前にこんな真似出来るとは思えねぇ。どこのどいつだ……こんな高度な連携を仕込んだやつは!」
「カドワキの旦那じゃん! 元気してる? まぁ、この千代田さんにかかれば、これくらい朝飯前よっ! 本流域に敵性艦の反応なし! 戦闘ー終了っ! ……全艦ダイレクトリンク解除! ……いやぁ、凄かったわ……お見事、お見事! 初霜ちゃん、ご苦労さん……終わったよ」
モニター越しに千代田がそう言うと、フラフラしながらその隣へ現れたのは、いかにも寝起きな感じのもさもさな感じの長い黒髪の、黒いネグリジェみたいなスケスケなのを着た小さな女の子。
この娘が例の初霜って娘なのかな?
……でもなんで、そんなカッコなの? なんかその……黒っぽい下着っぽいのが丸見えなんだけど、いいの? それ。
「はぁ……皆さん、お疲れ様でした。なんとか、損害も出さずに終わりましたね……。えっと、信濃さんと武蔵さんはご無事ですか? それに民間人が多数いるって聞きましたけど、その人達も無事なんですか?」
「おかげさまで、こっちもギリギリセーフ……ありがとね。結構、危うかったんだけど、スツーカの人が助けてくれてさ! ……もしかして、あの人が噂のスツーカ大佐?」
スケスケな服については、敢えて触れない……本人、気付いてないっぽいし……。
こう言う時は見なかったことにするのがマナーだと思うよ?
「そそ、島風ちゃんが一人で行っちゃったから、こっちも後を追おうとしてたんだけどさ……。便乗させろとか言って、無理やり乗り込んできちゃって……さっきもこっちの足並みとかガン無視で、一人で突っ込んで行っちゃうし……もうメチャクチャな人よ。初霜ちゃんも大佐に強引に連れてこられちゃったんだよね」
「はいっ! わたし……ホテルで寝てたはずだったんですけどね。「寝ている暇はないぞ! 出撃だ!」とか言われて……着替える暇もなく連れてこられちゃいました……。このパジャマ、良く見たら凄い透けてますよね。さすがに、これで人前に出るなんて、ちょっと恥ずかしいですよ」
どうしよう……思い切り、TV中継されてるよって言ったほうがいいのかな?
モニターの向こうのジョニーさん達、すっごい困った顔してるんだけど。
「ゴメン……初霜ちゃん、それテレビ中継されてるから……とりあえず、なんか上から羽織ろうか」
モニターの向こうで、初霜ちゃんがピキッと固まり涙目になると、みるみるうちに真っ赤になっていく……。
「う、うにゃああああああっ!」
……噂のモンスターデストロイヤー初霜ちゃん。
その悲鳴はとっても可愛らしかった。
味方の連携が振り切れてる……と思ったら、初霜ちゃん登場。
しかも、サービス付き。(笑)
一応、女の子なんだから大佐、少しは気を使ってあげて! と言いたいとこですが。
大佐は大佐で、同じ強者と言うことで、勝手にシンパシー感じてるので、お構いなしです。




