第十四話「決戦! ぐれーとバトル」③
さて、武蔵さんと信濃ちゃんの対決は最終局面!
一方のフッドとビスマルクの二人の対決は……と言うと。
サーベルと剣でとりゃあなんて言いながら、腰の引けたチャンバラをやってる始末なんですよね。
うーん……これは、いいとこ、学芸会?
まるっきりド素人のチャンバラ……。
聞いた話によると、白兵戦を想定してちゃんと訓練してるのは、血の気が多く近接戦を多用する駆逐艦が中心で、戦艦や空母は白兵戦なんて想定すらしてないらしく、皆、こんな調子らしいんですよね。
確かに、空母や戦艦なんてこんな風に自分からぶつけようとしない限り、白兵戦なんて起こりようも無いですからね。
そんな訳で、彼女達は、パワフルで動きが早い事を除けば、概ね普通の女の子レベル。
これは……思った以上に駄目な感じです!
とりあえず、下手なチャンバラはやめて、今度は泥仕合の取っ組み合いになってきたようですが……。
もう見なかったことにして、せめて、武蔵VS信濃の決戦の模様をナレーションで盛り上げるとしましょうっ!
「……さぁっ! 武蔵と信濃! どちらも譲らず! このまま行くのか! 行くのか?! おおっとぉっ! ついに正面からの衝突! 両者合わせて13万トンの大質量同士の大激突だぁーッ!」
お互い、少し舳先をずらしながらの正面衝突……。
巨大な鐘楼でも付いたかのような凄まじい轟音……どちらの船体も派手に破片と火花を撒き散らしながら、お互いの巨体に突き刺さるようになって、停止する。
「こ、これはっ! 凄まじい衝撃にもかかわらず、両艦沈まず! 一歩も引かない意地と意地との激突だぁっ!」
……信濃の艦橋から人影が飛び出し、飛行甲板を駆け抜ける!
対する武蔵は、第一砲塔の上で腕を組んで仁王立ち!
「おおっ! いよいよ姉妹対決もクライマックス! 奇しくもどちらも侍スタイル! 伝説の剣豪よろしく二刀流の武蔵! 対するは天然理心流の居合の構えでひた走る信濃ちゃん! これは……意外に本格的だ!」
……けれど、本格的だったのは構えまでだったようだ。
信濃ちゃん……初撃で、カッコよく居合抜きでも見せてくれるのかと思ったのに、普通に抜いて正面からの力任せの打ち下ろし!
武蔵さんも刀を交差させて受け止めるのだが、勢いを殺しきれず自分の刀で顔面を強打した挙句に、信濃ちゃんの一撃が痛そうな感じで額にゴインとまともに入った!
……ちょっと待ったのポーズをしながら跪く武蔵さんと、泣きそうな顔でオタオタする信濃ちゃん。
「ご、ごめーんっ! 力入れすぎた……台本通りなら、ここで受けきった武蔵が「良い一撃だぁっ!」って言うとこなんだけど、いけそう?」
「すまん……し、しばし待ってくれ……。ちょっとうっかり手が滑った……なまくらとは言え、まともに入ると凄く痛いぞ。なんか火花が見えたぞ? おおっ、頭をぶつけて星が見えるというのは本当なのだな……」
「わああっ! 武蔵、デコから血が出てるよ! だ、だれかーっ! メディーック!」
……もう初っ端から、グダグダ……これは、もう駄目な予感しかしません!
これ以上、ボロが出る前にCM……その間に編集技術を駆使して、少しでも派手な感じに仕立て上げるのだ!
「し、視聴者の皆様、盛り上がってきたところですが……ここでCMです! チャンネルはそのままっ! なお、番組はご覧のスポンサーがお送りします!」
……とりあえず、臨時CMを挟んで仕切り直し。
思った以上にダメダメな素人剣術試合とかホント、どうすりゃいいのやら。
これまで、熱く燃える展開だったのに、最後がこれとは、どうしたものか。
けれども、我々もプロである……編集スタッフが次々と集まり、四人の姿を象ったVRモデルを元に、たちまち迫力ある戦闘シーンが仕立てあげられていく。
CM明けには、とりあえずこのでっち上げVRムービーを視聴者に見てもらうとしよう。
酷いヤラセもあったものだが……素人の泥試合を見せられた挙げ句のグダグダエンディングよりは、まだマシと言うもの。
むしろ、演出と呼んでいただきたい!
とりあえず、優秀なスタッフ達の手で、如何にもな戦闘シーンは出来つつあるので、もう4人には好きなだけ遊んでてもらおう。
フッドとビスマルクは……何か、お互いの衣装の剥ぎ取り合戦みたいなことを始めてしまってますね……。
これは……もはやゴールデンタイムには流せません……はい、カットーッ!
信濃ちゃんは、武蔵さんの頭に包帯を巻いてぐるぐる巻きにしている……。
なんとも、微笑ましいんだけど、もはや決着どころではない様子……。
とりあえず……4人はもう仲良く喧嘩みたいな調子なので、実質これで状況終了と思って良さそうだった……。
この後は、即席の戦闘ムービーを流して、それなりに盛り上げて……両者引き分けって事で幕切れ。
最後に、ハイライトシーンを纏めて、適当なところで関係者や4人にインタビューでもやって、NG集でも流しながらのエンディング……ですかね。
いやはや……総合的に見ると、パプニング続きのグダグダでしたが、エンターテイメントとしては悪くない。
視聴率もかなりいい感じで、スポンサーの商品も飛ぶように売れてるらしい。
結果だけ見れば、大成功! 観客船の方でも大いに盛り上がっているようで……大騒ぎ!
安全性を考慮して、100kmほど離れた場所からの観戦ではあるのですが……。
本来なら、クローズド構造のエーテル空間船を、わざわざ昔ながらのオープン構造に改造した観客船を用意したんですね。
……おかげで、ライブ感が全然違ったとの評判です。
遮蔽物のないエーテル空間内では遠くの音も聞こえてくる……砲声が聞こえ、爆炎が見える距離にいる……安全と解っていても、スリル満点な体験だっただろう。
観客動員数は10万人……一枚一万クレジットのプラチナチケットなんですが、一時間も持たず完売だったそうですから。
興行収入はチケット代だけで、10億クレジット。
視聴率は40%と信じられない数値。
スポンサーからの広告料も視聴率加算で、凄まじい額になってますからね。
この僅かな時間で、動いたクレジット総額は国家予算規模なんじゃないですかね。
これ……美味しすぎますよ。
うちの上層部も間違いなく、味をしめたでしょうし、他局もきっと追従する流れになるでしょうね。
もし、他でもこう言う機会があれば中継させてもらいたいし、可能であれば黒船との戦闘も……何とか我々TVクルーも同行させてもらえたり出来ないだろうか?
もちろん、星間連合軍からプロモーションビデオの類は回ってくるのですが……。
色々編集加工された代物なので、リアリティに全く欠けているとの評判で……何とも微妙な代物なのです。
確かに危険かもしれないが……一度、本物の生の黒船との戦闘と言うやつを現場で取材したい……そんな風に思ってしまうのは私も生粋のマスコミ人だからかもしれなかった。
そんな風に、色々考えながら一息ついていたら、突如耳慣れないサイレン音が響き出し始める。
思わず、カドワキ氏とエリコ嬢と目があうのだが……二人共、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
他のスタッフも同様で、私も今頃になって、それが船内備え付けの非常警報装置から流れているものだと気づく。
続いて、正面の大モニターに強制割り込みで「Caution!」の赤い文字が明滅する。
『警告! 本流域に、黒船警報が発令されました。民間船並びに非戦闘員は直ちに現流域から退去してください! 現流域は戦場指定されました……この流域に留まることは大変な危険を伴います……! 民間船並びに非戦闘員は直ちに現流域から退去してください! 繰り返します……本流域に黒船警報が発令されました……』
無機質な合成音声による警報……こんなものは初めて聞いた。
訓練でもドッキリでもない……ですよね?
元々は、この話……短編外伝みたいなコメディ調な話のつもりで書いてたんですが。
第一部の引きを受けて、なんだかシリアスな雰囲気に……。
ちなみに、ハーダーちゃんはジョニー・カンタビラ氏の実況の大ファンだったりします。
「突撃! 第9潜水艦隊24時」と言う番組で取材を受けた時に知り合って、後日プレゼントが送られてきて、嬉しすぎて卒倒しそうになったと言う裏エピソードがあります。(笑)
ちなみに、戦艦、空母連中は大規模戦闘でしか出番が無いので、戦闘技量や実戦経験では緊急出撃や巡回任務で駆り出されまくってる駆逐艦達に大きく水を開けられているのが実情です。
信濃ちゃんは、割りとアドモス商会べったりなので、兵器開発の協力とかしてるので、派手にあちこち改造してたりしますが……実戦経験となると祥鳳とか千歳、千代田の方が上だったりします。




