第十四話「決戦! ぐれーとバトル」②
一方! 信濃さんと武蔵さん達は……。
「ちょっと! カドワキさん! これ一発撃つたびに、グワングワンになって、照準ブレブレで全然当たらないよっ! と言うか、スタビライザーとかペラとか撃つたびにあっちこち壊れていってんだけど? これって一体、何発持つのっ!」
「おのれっ! 46cm砲を空中目標へ直射で当てるのがこんなに難しいとは! 予想命中率0.5%だと? ええいっ! だが計算上200回も撃てば当たる! まだ30発! ガンッガンッ! まわせーっ! うてーっ!」
はい、どっちもグダグダな模様です……。
派手なだけで、サッパリ当たらない砲撃戦をやらかしているようです。
……ここは別の二人の対決に……ズームインッ!
「……まずは、ビスマルク! 反撃の38cm砲が火を噴く! フッドはこれを避けれるのかーっ!」
カメラのスポットを移すなり、ビスマルクの主砲がフッドを捉える……まさか、これは……直撃コース?
「あら? 私ってばいきなりやっちゃった? ……私の勘が告げている! ここで沈むのが貴様の運命だと! やられ台詞は、色っぽ可愛らしく、「うにゃーんっ! やられちゃったぁ!」……でお願いします。大丈夫! 艦が沈んだらまっさきに救出してあげるから! でもって、この猫ちゃんコスプレセットを着せてあげるからっ! 私ってば、とってもやさしーっ! 惚れるんじゃねぇぜ……フッド!」
……ビスマルクさんの暴走がとどまるところを知らない。
彼女は手を顔にかざす独特のポーズを決めると、その左手に高々と猫耳猫しっぽ付きの紐ビキニにフリフリをいっぱい付けたコスチュームを掲げる。
いや、見てみたいような、見てはいけないような……視聴者コメントはもはや沸騰状態っ!
そして、そして!
……その砲撃は極めて正確にフッドに直撃する……と思いきや!
その艦影をすり抜けていって、その背後に流体エーテルの巨大な柱が立ちのぼるっ!
「……これはっ? 当たったはずなのに当たってないーっ? 何が! 何が起きているーっ?!」
私自身も何を言ってるのか解らないが……その不自然な光景に目が釘付けになる。
「ミラージュフォグシステム……おかしいと思えよ。わざわざ隠蔽システムを解除して、真っ当に撃ち合いなんてするわけねぇだろ? 霧をスクリーン代わりに使ったホログラフって奴だ……そこにフッドは居ねぇぜ。残念だったな! フッド……フルパワー射撃のクールタイムにゃ、十分だったろ? やってやれ……一気に決めてやんな」
「あ、はい……解りました! そうですね……あんなの着せられるなんて冗談じゃない……着せられるより、着せて愛でます! これねっ! ビスマルク、その台詞まるっと全部お返しよ……私が用意したのはこれっ! ふわモコニャンニャンパジャマDXよっ! 武人然とした貴女がこれを着て丸くなる……考えただけでゾクゾクします! じゅるり……いけないヨダレが……。とにかく、収束荷電粒子砲……出力全開! 全門斉射! これで……終わりよーっ!」
もうやだ……この二人。
ゴールデンタイムなんですよ? 全銀河生中継なんですよ?
何を口走っているのですか? だが、よろしい……続け給え。
チャンネル667の辞書には、自重とか真面目になんて言葉は載ってないのだから!
「荷電粒子砲の螺旋光芒がビスマルクに迫るーっ! これはさすがに回避不能! ビスマルクさん、ふわモコニャンニャンパジャマ待ったなしか! 正直、私はどっちが勝ってもいいぞー!」
思わず、私も煩悩全開の発言をしてしまったが……視聴者コメントも似たようなものだ。
……と思ったら、ビスマルクに直撃しかけた荷電粒子砲が不自然な軌道でねじ曲がって、明後日の方向へ飛んでいく!
「ええっ! なんで、そこでクニョンって、曲がるの! カドワキさん! 話が違うーっ! 誤差や減衰も考慮して2000mなんて、至近距離で撃ってるのに何で曲がるの?!」
「うぉっ! なんだそりゃ! エスクロンの……てめぇら……何か仕込んでやがったな!」
カドワキ氏がエキサイティングな調子で、ドンッとエリコ嬢を指差す。
彼女は不敵に笑うと、大げさな様子で髪をかきあげる。
「ふふんっ……こんな事もあろうとかと思って、密かに強電磁界フィールド発生装置を搭載しておいたのよ! 宇宙戦艦じゃ、こんなの標準装備だもの……備えて安心って奴ね。こんな事もあろうかと思って……こんな事もあろうかと思って……! うふふふふ……。エンジニアにとって言ってみたい台詞ナンバーワンよね! なんって……気分がいいのかしら……」
「て、てめぇっ! よりにもよって、この俺に向かってその台詞を吐くかっ! 俺だって、言ってみてぇよ! こんちくしょーっ!」
やはり、この二人面白すぎると私は思います。
「はっはっは! 荷電粒子砲のコースから、そっちの居場所も特定したわ! と言うか、荷電粒子砲が霧を払ってくれちゃったから、その何とかフォグも、もう意味なしね! こっちは、実体弾の38cmがあるのよ? もうこれはいっただき! ごちそうさファイエルッ!」
ビスマルク! 必中距離からの砲撃……けれど、こっちの砲撃もやっぱり、思い切り外れる。
「ええっ! なんでぇっ! 変なふうに砲弾が曲がったよっ! エリコ! どうなってんのよ! これっ!」
「そりゃあ……そんな荷電粒子を捻じ曲げるような強電磁界シールドなんて展開したら、質量弾だって影響受けるだろ。お前ら……その辺、少しは考えなかったのかよ……」
「あ……それ、盲点だった……えっと……曲がることを前提に補正値組んで撃ってみて? 駄目?」
「即席でそんな芸当出来るわけないでしょ! 副砲やら機銃ももっと駄目。この電磁フィールド……邪魔っ! もう捨てていい? でも、そうすると……フッドの荷電粒子砲が……あんなの食らったら流石にヤバイ……。あーもうっ、どうすりゃいいのよ……」
うーん、このグダグダ感。
どっちも試作品の応酬だからこそだとは思うのだけど……実戦でこんなだったら、酷いことになっていただろうに……。
まぁ、本来演習だから、こんなものなのかもしれない……そう思うことにしよう。
「……つまり、お互い主砲が使えない……となると、ここはやっぱり……」
フッドさんが何やら含みのあるような台詞と共に苦笑する。
「そうねぇ……こうなったら、お互い至近距離での全砲門開けからのぶちかまし? こうなったら、直に乗り込んでいって、フッドちゃんひん剥いて公開ニャンニャンの刑! 決定っ!」
「もうそれしかありませんね……あはは、なんか楽しくなってきました! 受けて立ちます! ニャンニャン言うのはそっちよっ! こうなったら、正々堂々とド突き合いで決着を付けましょう!」
フッドとビスマルク……お互いヤケクソのように、正面から副砲機銃を撃ち合いながら向き合って……。
やがて、お互い艦首から正面衝突……!
そして、そのままビスマルクVSフッドの艦上白兵戦が開始ッ!
視聴者コメントは……。
『まさかのキャットファイトキターッ!』
『なんか、ビスマルク殿、剥くとか言ってましたぞ? これ放送コード引っかかって、中継キャンセル待ったなし?』
『そうなったらきっと有料裏配信が出回るに違いない! チャンネル667ならきっとやってくれる!』
……皆さんのコメントについては、私からは敢えてノーコメントとさせていただく!
もはや、技術力勝負でも何でもなくなってしまったが……最後に勝負を決めるのは熱い拳でしたっけね。
もうこっちは放っといて、私としてはもう一つの対決を見届け無くてはならない!
「……カドワキさぁん、46cm飛行砲……もう無理みたいですよ? イナーシャルキャンセラーがあるから大丈夫とか言ってたけど、撃つたびにすっごいバランス崩れるし、ペラの強度も問題ありですよ? 結構、ちまちまと撃たれてるのもあるけど、今撃ったので半分くらいペラがすっとびましたよ? 高度維持不可能……このままだと、墜落します! ねぇ、これってやっぱり、失敗作じゃないですか? 聞いてます? カドワキさん」
なんだか、20世紀の古典アニメのBGMでもかかってそうな光景だった。
崩れ行く巨大構造物……ストリングスの旋律が似合いそうな……そんな雰囲気です。
「むむむ……こりゃもう駄目だな。イナーシャルキャンセラーの出力をもっと上げないと……だな。おまけに、「Kazakami」の砲撃で思ったより被害が出てる……近接戦用の旋回機銃でも盛っとくか! とは言え……ここまでグダグダな結果になるとはな……。根本的に色々見直さねぇと実戦じゃ使い物にならんな……こりゃ」
「あーあ……いいアイデアだと思ったんだけどなぁ……。こうなったら、この46cm砲……武蔵にブチかまそ! 武蔵、これ私からのプレゼント! 受け取って!」
信濃ちゃんがそう言うと、上空の46cm砲がグラリと傾き、まっすぐ武蔵めがけて突っ込んでいく!
「なっ! 信濃っ! 冗談では無いぞ! そんなもの食らったら、さしもの私もっ! どぅわああああっ!」
46cm砲塔が文字通り、武蔵の甲板に突き刺さる。
2,500トンもの重量物を叩き込まれ、武蔵の艦首が大きく沈み込みこみ、エーテル流体面に完全に浸かる。
艦橋に居た武蔵さん本人がカメラのフレームから居なくなる……。
「ぎゃわわー」だの「どぅええ」だの乙女らしからぬ叫び声が聞こえてきますが、これは聞かなかった事にしましょう。
旅は道連れ世は情け、大昔のことわざですねー。
だが、それでも武蔵は沈まないっ!
完全に艦尾が浮き上がった状態から、ゆっくりと元に戻ると甲板まで浸かりながらも持ちこたえる……!
「こ、これは信濃ちゃんも思い切った! だが……さすが武蔵! これでもまだ沈まないとは! 並の戦艦なら、とっくに終わっているぞ! だが、これでもう信濃ちゃんも手札を使い切ったんじゃないでしょうか!」
「ふふん……46cm砲をぶつけたのは、動きを止めるためよ? こっちも最後の手段……体当たりよっ! 並の空母が大戦艦武蔵に体当たりなんかしたら、一方的に押し負ける! けど、こっちも並の空母じゃない! 艦体は元々大和級……頑丈さにかけては右に出るものなし! 排水量は同じく6万5千トン! 同クラスの突撃! 耐えれるものなら耐えてみなさい!」
「ふははははっ! 信濃! そう来たか! 良いだろう……こちらも今ので第二砲塔が沈黙したからな。砲撃戦ではなく、近接戦で決着というのも趣深い! かかってこいっ!」
なんだか、ヨタヨタで前後不覚の様子ながらも、気丈にカッコよく口上を決める武蔵さん!
いよいよ最終局面ですな……実に、盛り上がりますっ!
戦艦武蔵も同様に、信濃へ進路向けると全力で加速を始める!
戦艦対空母の異色の姉妹対決のファイナルステージの幕がここに切って落とされたーっ!
さて、ぐれーとバトル……引き続きお送りしております。
「こんな事もあろうかと思って」……エンジニアの一度は言ってみたい台詞ですよね?
それを逆に言われてしまったカドワキ氏……涙目でございます。
それにしても、身内での新兵器テスト演習だけに、グッダグダです。
それとついでにお知らせです。
割りとアップ時間が一定しない当作品ですが。
本日から、16時台のアップを基本にしたいと思います。
……まぁ、ストックゼロになったら、定かじゃないですけどね。(笑)
デイリーアップも問題ないようなので、これも続行します。




