第十四話「決戦! ぐれーとバトル」①
「はいっ! 視聴者の皆様、お待たせしました! CMもエスクロン社とアドモス商会のライバル製品同士のCMが立て続けに流れるとか、そんなところでも場外乱闘! なんてツッコミ入れたくなる調子でしたね……。チャンネル667としては、CMも番組の一部なので飛ばさないで御覧ください! スポンサー様が泣いちゃいますから! そして、今ご覧頂いたCMのあの商品……今なら、なんと3割引きで大変オトクです! お申込みは今すぐ、テロップのナンバーをコール! と言ったところで、後半戦行ってみましょうっ!」
CM明けで、早速私は軽快な調子でトークを再開する。
何やらカドワキ氏の元へ緊急連絡が入ったとかで、バタバタしていたようだったが……。
「カドワキさん、もうCM明けてますよ! 早速ですが解説をお願いしますよ。」
「ああ、悪ぃな……本社の方からちょっと野暮用で連絡が入ってな……。まぁ、少々気になる内容だったんだが……。島風ちゃんが動いてるなら、問題ねぇかな……いや、なんでもねぇ! こっちの話だ。戦況はどうなんだ?」
……野暮用って何の話だったのだろう? 島風ちゃんって、あの610のだろうか?
ちょっと気になりますね……。
でもまぁ……どうせ、我々一般人には関係ない話でしょうね。
「そうですね……ひとまず、両社の新型戦闘機同士の空戦対決の様相を呈してきましたね。防御力は同程度、火力と射程については「Kazakami」が優位、機動力は秋茜が有利……。一発屋と堅実に当てていくスタイル……そんな感じですかね。空戦自体は空戦のプロの信濃ちゃんが優勢といった様子ですが……。信濃ちゃんには武蔵の装甲を抜ける火力がない以上、このままだと厳しいのではないかと思いますが」
「まぁ、そうだな……なんだエスクロンの新型、防弾もしっかりしてて意外に安定性もあって、悪くねぇじゃねぇか。問題は……やはり、ソフトウェアだなぁ……。戦艦は砲戦主体だから、この手の飛行体の群体制御には向いてねぇからな……これじゃ、実戦レベルの完成度とは言えねぇな……」
「そうなのよね……駆逐艦初霜が作った空間砲戦ドライバが解析できれば、随分マシになると思うんだけど。既存のどの系統にも属さない独自ハードウェアドライバなんで、正直手に負えない。空母の娘はあっちはあっちで「Kazakami」の流体制御飛行が馴染めないみたいで、まともに運用出来なかったのよね。だからこそ、あれを現場の即席で空間機動砲として運用した駆逐艦初霜の異様さが際立ってるのよね……。カドワキさん、そっちにも彼女のデータって回ってますよね? 正直、どう思いました?」
「ああ、公開データベースに上がってる程度の情報だがこっちもチェックしてるさ。だが、申し訳ないが……駆逐艦初霜については、俺も理解の範疇を超えてるな。艦体オペレートシステムにしたって、従来の戦闘艦頭脳体のものと軽く数世代は違う……と言うか完全に別物だろありゃ。自前で、自己改良を続け変容していくシステム……どこのどいつなんだかな……そんなもの作ったのは……」
「今のところ、エーテル空間戦闘兵器の開発に関しちゃ、うちとおたくがツートップ状態……。星間連合軍のもつ技術より、軽く一世代は進んでるはずなんだけど。そのどちらよりも進んでるって……どういう事なんでしょうね……?」
「さぁな……。一応、信濃ちゃん達のような普通の艦艇頭脳体も、戦闘経験をフィードバックして、無意識に戦術ドライバを改修とかやってたりするんだが……。だから、そいつの延長線と言えなくもないが……。明らかに次元が違う気がする。強いて言えば、生物的な進化能力……それに近いような気がするな。まったく、なんにせよ……あれが味方で良かった。うちも機会があったら、売り込みにでも行ってみるとするかな」
なんだか、技術者同士で高度な技術論が始まってしまったようだった。
なるほど、さっぱり解らん話ですな!
これでは視聴者が退屈してしまう……ここはやはり、私の腕の見せどころですな。
「どうやら、戦況は膠着状態のようです……。ですがやはり、信濃ちゃん……火力不足は否めないッ! それに数も信濃航空隊の方が少ないです! カドワキさん……信濃の艦載機搭載機数はこんなものじゃないはずですよね? 一応、資料によると、元々50機近くは搭載できるはずですが……。飛行している秋茜と偵察機をあわせても30機程度ですよね? 後の20機は隠し玉として温存しているとか、別の新型機とかそんなところでしょうか?」
「そうだな……ある意味アレは新型機と言っていいかもしれんな。まぁ、秋茜の実戦テストとしちゃ悪くないデータが取れたからな。そろそろ、本命の投入で一気にケリを着けるか! 信濃ちゃん、例のアレ……そろそろ、かましてやんな!」
カドワキ氏がメガネをスチャッと直しながら、厳かに告げた。
これは! ここに来て隠し玉の投入なのかーっ!
「んふふ……待ってました。と言うか、やっと射程に捉えたとこなんだけどね。武蔵姉さん、ごめんね……ちょっとキツイのお見舞しちゃうから!」
信濃ちゃんが笑顔と共にそう答えるのと共に、武蔵とビスマルクの周囲に立て続けに3つの巨大な流体エーテルの柱が立つ!
「な、なんだと! 砲撃だと! この威力……我が46cm砲クラスではないか! くっ! まさかフッドの砲撃か! おのれ! どこから撃ってきた!」
「くっくっく……どこを見てるのかな? 上よ……上ッ!」
……その時、会場各所のカメラがエーテルの空に浮かぶ異様な物体を捉えた!
「な、なんだあれはーっ! 大きいなんてもんじゃない! 砲塔に見えます……まさか、空中砲?! そ、そんなものが実現できたのかぁっ!」
大きな箱型の砲塔に3本の砲身……X字型に4つの巨大な翼が生えていて、底部には半円球状のリアクターユニットらしきものが3つ並んでいるのが見える。
「解説しよう! あれこそ、試製45口径46cm3連装空間機動砲! 大和武蔵の主砲を空間機動砲へ改造した超兵器だ! 打ち下ろしの質量弾だから圧倒的な射程と威力ッッ! それに加えて、強固な装甲に包まれた本体は、現存するいかなる航空兵器の武装でも破壊不可能! まさに、人類の新たなる力……超兵器とでも言うべきものだ!」
私が実況するより早くカドワキ氏の解説が入ってしまった。
まぁ、ここは製作者本人に任せるとしましょう。
「ちょっと! あれだけの質量体……どうやって、飛行させているのよっ! まさかっ! 重力機関?! そんなのエーテル空間で使っちゃ駄目でしょ!」
「……さすがになかなか苦労したぜ……元来宇宙空間用の重力機関を重力圏下で使う……そこで起こりうる問題は何かな? エリコ君!」
「重力機関による局地的重力偏差と自然重力との干渉により、想定外の極小のマイクロブラックホールが生成される危険が常に付きまとう。それ故に惑星上ではその使用は厳禁とされ……エーテル空間でも同様に空間崩壊の危険性を伴う為に使用は厳禁とされてきた。いえ、その危険性故に誰も手を付けなかった……禁忌の技術!」
「ああ、まさに教科書的模範解答をありがとう。だが……そいつは、疑似重力場を連続展開して推進機関として使う場合に問題になるってだけでな。こいつの場合、単純に重量を軽減して、大質量体を空中に浮かべる為だけに用途を限定した、疑似重力場浮揚システムとでも言うべき代物だ。浮かべてしまえば、あとはさしたる問題もない……よく見ろ! 浮揚推進力自体は多数のプロペラで行ってんだぜ? さすがに、機動力は話しにならんくらいに低いが……。もとより、その防御力は強固に過ぎるほどだ……まさに最強の超兵器ってとこだ! 悪いが……武蔵の装甲もコイツの前には、紙も同然……奇しくもそっちの「Kazakami」と似たようなもんだが……。残念ながら、こいつはスケールが違う! 思い知ったか! だっはっはっは!」
……カドワキ氏の言ってることは私には良く解らないが……。
重力機関自体、ゲート生成には必須である以上、エーテル空間での利用実績もある……実効的な禁止条約がある訳ではないので、思わぬ事故が起きなければ問題ないとも言える。
「す、すごい発想……ですね! それにしても……派手に発泡しているようですが、一発も当たってないのはどうなんでしょう?」
「ま、まぁ……それは仕方がない……。昨夜組み上げたばかりで、試射も出来ないままぶっつけの演習テストになっちまったからな。どうせ、この演習自体、新兵器のお披露目と実戦テストが主目的だからな……信濃ちゃん、どうよ? そろそろ、一発くらい当ててくんねぇかな?」
「……いやぁ、私、そもそも空母ですからね……。砲撃戦はもとよりド素人なんで、デフォルトのユニバーサル砲戦ドライバ任せです! 上空5000mからの砲撃とか修正値もイチから取り直しなんで、そりゃ当たんないですよ! けど、レキシントンさんとか実戦初弾でドラゴン型大型飛翔体撃ち落としたって話だったし……。大丈夫! シミュレーションではちゃんと当ててますから……それに夾叉はしてますから、時間の問題……! やったぁ! ついに一発命中っ!」
モニターの向こうで、信濃ちゃんがガッツポーズを決めると同時に、武蔵の第一砲塔が火を噴く!
「おのれっ! やってくれる! 第一砲塔弾薬庫に緊急注水! 誘爆を防げ! ビスマルク! こうなったら、主砲で反撃だ! 機動砲も砲塔へ接近戦を挑め! 距離を詰めればあのような巨大目標……当てるのは容易い!」
「うわぁ……空飛ぶ46cm砲とかシュールすぎるわ。でも、確かにこりゃヤバイわ……でも、武蔵さん……上ばっか気にしてると、フッドちゃんが撃ってくるよ? たぶん、近くまで来てると思うんだけど……って、うぉうわぁっ!」
ビスマルクさんが奇声を上げるのと同時に、螺旋状の光条がその艦橋の至近距離を掠めて行った。
「おおっと! このタイミングで謎の攻撃……今のはなんだ! なんなんだーっ! カドワキさん! 解説お願いします!」
「おうともっ! 今のはフッドの新兵装……連装荷電粒子砲! 数々の失敗! 紆余曲折を得てついに完成した新兵器だっ!」
「……荷電粒子砲はエーテル空間内では直進性に問題があって論外だったはずなのにっ! くっ……カドワキさん、今度はどんな芸当を使ったんですか?」
「くっくっく! その辺は先日のネストグランデ戦で得た戦訓って奴があってな……。セントラルコアから放たれ、千歳の艦体を撃ち抜いた粒子砲は、今のように螺旋状の光条で極めて高い直進性を見せた! これにより、荷電粒子の相互干渉による弾道安定効果が立証されたのだよ! そして、ついに我々はエーテル空間用荷電粒子砲の実用化に成功したのだ! さぁっ! フッド! その威容を見せつけるのだぁっ!」
カドワキ氏の声に応えるように、荷電粒子砲が放たれた方角に漂っていたプラズマの霧の中から、巡洋戦艦フッドがその威容を現す……。
「ふっふっふ……ビスマルク……良い勘してるではないか! 今の一撃を避けるとは、さすが! 大したものだ! それでこそ、我が終生のライバルっ!」
「それほどでも……けど、なんでそんな近いのよ……。ステルスなら、もっと遠くから狙い撃ちした方がいいんじゃないの?」
「いやぁ……今のところ、荷電粒子の収束率に問題があって、射程が話にならないくらい短いんですよね……10kmも離れたら、拡散しちゃってバラけちゃうんですよ。その為に、ステルスで懐まで忍び寄る必要があったとか、もう本末転倒ですよねー!」
「何それ……? でも、ブリッジ狙いとかマジやめて! 私、脱がすのは好きだけど、脱がされるのは嫌なの! って……えっと、ここで会ったが百年目ぇ……わざわざ、沈められに来るとはしゅしょーな奴め! 今度もやっぱり、ワンパンKOされて悔し涙で、枕を濡らすといいぞ! はっはっはー! ねぇ、フッドちゃん……台詞、これでよかったけ? と言うかしゅしょーってどういう意味だっけ?」
……ビスマルクさんもフッドさんも、とんだ大根役者でしたっ!
台詞棒読みな上にグダグダ……放送作家のナガセさんが泣いてます。
「……そこで、私に聞くのってどうかと思うんですけどね……。殊勝ってのは……じゃなくてっ! わーっ! わーっつ! と、とにかく……それはこちらの台詞だビスマルク! 今日こそは貴様を沈める! このフッド……英国騎士の誇りに賭けて、貴様を討つ! いざ尋常に勝負っ!」
「おっけー! その喧嘩買った! 武蔵っ! 悪いけど、信濃ちゃんの相手はよろしくー! 待望の喧嘩相手が出てきてくれたんだからね! ここは一騎打ち! 盛り上がってぇっ! キターッ! こうなったら、フッド! お前をニャンニャン言わせてやるから覚悟しろっ!」
「望むところだーっ! ビスマルクっ! 貴様を私の膝の上で丸くさせてやるーっ! そして、フッドの膝枕ってば最高って言わせてやるんだからねっ! 積年の思い! 思いしれーっ!」
……二人共、脚本とかどうでもよくなってません?
何言ってるのか解りませんよ?
……と言うか、愛の告白みたいに聞こえるのは気のせいでしょうか?
視聴者コメントは……と。
『俺をニャンニャン言わせてくれ……。」
『フッドさんの、お膝の上で丸くなる……きっとスベスベでふわふわで……ムッハァッ!』
『二人の背景に、百合が咲いたよ? キマシタワー?』
さすが、空気の読めるマイフレンズ達、その熱い思いが滾りまくりだ!
こうなったらもう、このノリで行ってしまいましょう!
さぁ、島風ちゃん達のマジな戦いを尻目にこっちは、ぐだぐだ感漂う超兵器合戦!(笑)
温度差が凄まじいですが……こっちはそんな大事になってるなんて知りませんからね。
そりゃあもうスチャラカです。
フッドとビスマルク……因縁深いこの二人ですが。
プライベートでは割りと仲良しさんなんですね。
普段は別にお互いニャンニャンと言わせ合ってないし、膝枕とかもしませんよ?
二人で猫カフェ行って、至福のひと時を過ごしたりしてるだけです。
ノリと勢いで訳が解らないノリになってるだけです……多分。
ちなみに、視聴者が「キマシタワー」とか言ってるのは、この未来世界では、20ー21世紀ブーム的なものが起こっていて、当時……つまり、現代のサブカルチャーとかもリバイバルしてるからです。(笑)
別に未来シミュレーション小説とか御大層なもんじゃないので、その辺はネタとして流してください。




