第十一話「After The Carnival」①
巨大な島のような黒船の移動要塞、レベル5ネスト級……。
私達の目前に、ネストグランデとも呼ばれる巨大構造物がその威容を見せつけていた。
全長1km……共生飛翔体総数、推定500機。
六角形の飛翔体格納ブロックを延々とつなぎ合わせた超巨大な蜂の巣を裏返したような形状。
……まさに化物……黒船を統べる王者とも言うべき存在。
けど、それはもう過去形で語るべきだった。
……我が第610高速機動艦隊のまさに狂乱の突撃祭りの結果、ネストグランデは全てのセントラルコアを同時破壊された事により、その全機能を停止し、崩壊しながらエーテルの海へと沈み行くところだった。
「フハハハハハ! 黒船共め! これで終わりか……! 今の一撃はなかなか良かったぞ! だが、我が生命の炎を消し去るには些か不足していたようだな! もう終わりなのか! 物足りんっ! 全くもって物足りんぞぉ!」
……千歳の高笑いが響き渡る。
もうノリノリである。
「千歳、艦体に綺麗に大穴あいちゃったんだから、笑ってないでグエン提督を連れて退艦しなさいっ! それ……もうちょっとしたら吹っ飛ぶよ! お前ンとこの核融合炉、絶賛暴走、メルトダウン寸前っ! 超やばいんだって! いいから、急いで脱出しろっての! 千代田も二人の回収支援よろしく! ネストグランデは絶賛崩壊中……すぐに動けそうも無い艦は艦体を放棄……手近な僚艦に拾ってもらいなさい! 動ける艦は手近な仲間を拾って緊急離脱! とにかく、急いで……崩壊に巻き込まれます!」
こっちは、千歳の馬鹿口上に付き合ってられるほど、余裕ない。
矢継ぎ早に各艦に指示を出す。
千歳の艦体側面には、セントラルコアが最後に放った粒子砲により、艦体を斜めにぶち抜く大穴が空いていた!
まさか、そんなトンデモ兵器を隠し持っているとは予想外だった。
かろうじて、誘爆は免れたものの被弾部周辺は赤熱しており、極めて危険な状態にあった。
そんな致命傷を負いながら、全くひるまずにありったけの20cm砲を叩き込んで、セントラルコアを仕留めたのだから、千歳の敢闘精神は大いに讃えたいと思う。
……ところで、千歳って……軽空母だよね?
さて……何がどうなって、こんな有様になったのか。
ネストグランデは、私達がその姿を捉えた時点で、飛翔体群第二陣を射出した直後だったらしく、全くの無防備状態だった。
再三慎重にと言っていたのだけど……絶好のチャンス到来とばかりに、陽炎と不知火が突撃開始!
……マランとデリブルも以下略。
そんな4人に変に刺激された雷と電もそろって吶喊。
……千歳、千代田がそれを黙って見ているわけもなく、20cm砲を乱射しつつ突撃……。
全艦、乱痴気騒ぎ状態のまま、護衛艦を蹴散らしながら、全艦に対固定目標用に臨時増設されていた36連飛翔魚雷、総計350発を一斉にばら撒きながら、ノンブレーキで島のようなネストグランデに次々突き刺さり、その巨体をボロッボロに引き裂いた挙句、ゼロ距離射撃祭りを開催っ!
……その光景はちょっとした火山噴火のようだったと付け加えておこう。
反撃らしい反撃もネストのセントラルコアが放ってきた粒子砲の直撃を食らった千歳が大穴開けられ、オーバーキルされただけ。
その千歳も、グエン提督共々ピンピンしてるようなので、問題はない。
対称的に千代田の方はほぼ無傷。
……千代田は割りと加減が上手いので、突撃しても大抵無事に済ます。
逆に千歳はいつも全力全開だから、毎回こうなる。
むしろ、千代田さん、20cm砲なんて降ろして、私と一緒に後ろで観戦しない? って思うのだけど、妹はお姉ちゃんに付き合うものらしい。
千代田さん、あなたは常識枠なんだから、いつでも戻ってきて良いんですよ?
ノンブレーキで先陣切って突っ込んだ陽炎と不知火は仲良く折り重なるように、ネストグランデに乗り上げたような状態。
さっきまで、そのアホみたいな6連装127mmを撃ちまくっていたのだけど、どっちも反動で、まるでねずみ花火みたいにグルグルと回った挙句、バッタリと横倒し……。
最後には、お互い見境なく撃ちまくってた砲撃が両者に着弾、ほぼ同時に爆発と言う酷いオチを見せつけてくれた。
後続の雷電姉妹は、途中で正気に返ったらしく、直前でストップかけたのでどっちもセーフ。
彼女達曰く……。
「まさか本当に皆、ネストグランデに突っ込むとは思わなかった」
……ですよねー? 普通はそう思いますよねー? ブレーキを踏めた君達は正常。
とにかく、二人がふっ飛ばされた陽炎達を無事回収してくれたようなので、問題なし。
マランとデリブルの二人は……。
デリブルは何がどうなったのかは良く解らないが、艦首を下にしてネストグランデの艦体に深々と突き刺さっている……。
突き刺さった状態のまま、砲撃と残ってた飛翔魚雷をばら撒いたらしく、ネストは内部から破壊され、近くにあったセントラルコアのひとつが為す術なく消滅……お手柄!
爆風に煽られて、火達磨になった120mの駆逐艦が宙を舞うとか、シュールな光景が見えたが……私は気にしない。
マランのほうは無事で、艦内で目を回していたデリブルを回収したとの報告が入った。
そのまま、収容し離脱するそうだ……はっちゃけ気味なお姉ちゃんの面倒をしっかり見るマランはいい娘。
と言うか、どこも妹の方が優秀な気がするのはなんでなんだろう?
作戦参加艦艇、7隻中、4隻擱座炎上、2隻小破、損耗率約6割……目を覆わんばかりの大損害!
……と言いたいところだが、我が610はいつもこんなもんだから、むしろ許容範囲。
後先考えずに、突撃する馬鹿ばっかりだから、全艦無事に済む事なんて滅多にない。
もちろん、私は突撃しない主義なので始めから問題ない。
私もちゃんと止めたのだけど、結局こうなった……私は悪くない。
「ネストグランデの沈黙に伴い、敵性エーテルロードへのエーテル流の逆流を確認……これで敵の増援は打ち止め。もう後始末なんて、後続の応援艦隊にお任せでいいでしょ! みんな、作戦目標は完遂よ……擱座した艦体は捨て置いて、無事な艦は速やかに現海域から離脱! 大事なことなので、二回目です……お祭りは終わりです!」
そう言ってから、祥鳳達から回ってきた戦闘詳報に目を通す。
敵の飛翔体群第二派は母艦だったネストグランデの統率を失って、同士討ちを始めて勝手に自滅しかけたところへ千歳、千代田の戦闘機隊と祥鳳とレックスの残存戦闘機隊がトドメを刺したようだった。
でも、なんか変な事書いてある……。
「ねぇ、この九九艦爆がドラゴンタイプを撃墜って? 千代田、この報告は何? フカシ? 一応、公式記録として残るんだから、適当な事言わないでくださいね」
「フカシじゃないよ! やたら動きの良い九九艦爆が急降下してきたと思ったら、ドラゴンに爆撃して撃墜してたのよっ! いやぁ……空対空爆撃とか爆撃機対策でそんなのがあるって話は聞いた事あったけど……祥鳳ちゃんも器用な事するよね」
確かに祥鳳がそんな話してたような気もするけど……ぶっつけ本番でやれるような事とは思えないんだけど……。
……やるじゃん、祥鳳。
「下流の方でも、例のスツーカ大佐がビッグクローラーを仕留めたそうだ! 向こうも相当被害を被ったようだが、全員無事……雷電姉妹、良かったな! 俺達の完全勝利ってとこだな! お前ら、マーベラスだ! 今夜はいっちょ祝杯をあげるとするか!」
千代田に無事回収されたグエン提督の言葉に皆、同意の言葉を返す……。
まぁ、ネストグランデなんて、普通にやったら一個艦隊は壊滅するところ……航空戦力500機とか正規空母を4隻くらい連れてこないと無理だろう。
むしろ、この程度の損害で済んだと考えるべきで、まさに大勝利と言えよう。
「ど、どっこらへんが完全勝利なのよーっ! 大惨事になってるじゃないのーっ!」
雷がなんか絶叫してる……。
雷電姉妹と私以外の全艦ボッコボコ……体当たりなんかしたら、そりゃ当然の結果。
今頃になって、千歳の艦体が爆発炎上する……ネストグランデも内部で次々誘爆しているらしく至る所から火を吹き始めていた……あ、ついに半分に割れた。
陽炎と不知火は今も盛大に色々誘爆を繰り返してるし、デリブルもそびえ立つ松明の如し。
誰がどう見ても大惨事だよね……これ。
でも、勝利には違いない……敵はもっと大惨事って事で……!
えっと……お疲れ様。
はい、決戦のトリを飾るのは例の武闘派集団610の面々ですが……。
思ったより、酷かった。
サブタイトルは普通に訳すと「祭りのあと」ですが「あとの祭り」の方が的確かもしれません。(笑)
次回は、全員集合しての水着回?(笑)
ちょっとほのぼのして、第一部完です。
お察しのように、この話……ノリと勢いばかりで、あまりストーリー性とかは重視してません。
第二部は少しはストーリー性とか重視してみようかな。
とにかく、彼女達の戦いはまだまだ続きます。




