第八話「剣崎ホテルで見る夢は?」①
とにもかくにも、敵の第一陣は撃退した。
敵の後続も接近中だが……ビッグクローラー級はとにかく足が遅い。
この付近のエーテル潮流は流速も遅いので、敵の推定侵攻速度は約5-10km……人が駆け足で走る程度の速度。
やる気があるのか? と聞きたくなるほどの鈍足。
ビッグクローラーが港湾施設をその射程に入れるまで18時間ほどの猶予があることが判明した。
こちらとしては、敵の戦力を相当削っている上に、上手く行けば戦艦込みの大佐とやらの艦隊という増援も得られる。
焦って攻め込む必要も無いという事で、我々は補給と休養の為に一時帰還していた。
先の戦闘で港湾統括頭脳体も戦闘経験を積むことが出来たので、補給の間くらいは偵察と防衛を任せても問題なさそうだった。
実際、散発的に敵機の襲来は続いているようなのだが……敵航空戦力はすでにあらかた失われており、あまり問題なさそうだった。
未来人の航空隊もかなりやられたのだけど、戦闘中に戦闘機を増産して出撃させるとかいう離れ業で、むしろ戦闘前より数が増えてる……未来人の生産力、意味がわからん。
そして、私は皆を祥鳳の食堂に集めて、約束通りディナーとスイーツを振る舞う事にした。
決戦前に何を呑気なと思われるだろうが、決戦前だからこそ……だ。
作戦の方針としては、ビッグクローラーを撃破後は間髪入れずに、敵の大本……ネスト級を撃破すべく、雷達と連動し続けざまに殲滅作戦に移行する予定だった。
敵の戦力がどこまで増大するか解らない以上、恐らく長期戦になる……のんびり食事をできるのは今くらいのものなのだ。
これにはリチャード少佐も賛同してくれて、提督二人が肩を並べて、エプロン姿で厨房で料理に勤しむと言う光景が展開されていた。
「ふむ……リチャード少佐はパン職人と言う話だったが……料理の腕もかなりのものじゃないか……。実に手際が良いね」
「うちは、いわゆるパンレストランって奴でね……パンが売りなんだけど、軽い料理も食べられる。おかげで、シェフの真似事も出来るようになったって訳さ……。ミスター魁一郎もパティシエなのに、何で料理も出来るんだい?」
「私のスイーツを贔屓にしてくれてたレストランのオーナーがいてね。出入りしながら、色々手伝ったりしてるうちに覚えた……なにせ、使う道具やらは大差ないからね。スイーツ作りだって、包丁や火だって使う……焼き窯だって使いこなせるよ? 実はピザとかだって作れる」
「……エリソン達は握り寿司食べたいとか言ってたけど、流石に海鮮ものは無理かな? 僕も日本食は好きなんだけど、中継ステーションとかでも、おにぎりとかはあっても寿司とかは見掛けないんだよなぁ……」
「さすがに、宇宙だからなぁ……私も生の魚は見た事ないな……。合成品のツナ缶なんかはあるみたいなんだけどね……流石にあれはちょっと違うなぁ。けど、海鮮物も海のある惑星でも行けば手に入るって話だよ。日本人ってやつはどうも宇宙時代になっても海産物へのこだわりを捨ててないらしく、マグロやサンマなんかを養殖してるところがあるみたいなんだ」
「日本人の食べ物にかける執念は凄いね……なんでもくじらの為に、平和団体の妨害船を捕鯨船にラム付けて、事故と称して撃沈したり、捕鯨反対の国の大統領をだまくらかして、くじら料理食わせて美味いって言わせたりしたんだって?」
「……そんな事してたの? い、いや……僕の時代はもうちょっと大人しかったよ……たぶん」
ああ、でもラム付きの捕鯨船はニュースでやってたなぁ……やたらゴツい船首の殺る気に満ちた船だったけど……一応、砕氷用とか言ってなかったっけ?
「さぁ……ブルーアースって団体の妨害船が三隻まとめて、真っ二つにされて、正直日本人舐めてたとかコメントしてたけど……」
……これは酷い。
でも、そんなラムシップなんぞを進路妨害するほうが悪い。
「昔から、日本人はキレると大変って言われてるからね……。ところで……この戦いが終わったら、皆で休暇でももらって、海でバカンスとかどうだい? この近くだと、エスクロンって企業国家の主星が海洋惑星らしく、リゾート地としても有名らしい。どうだろう? リチャード君も皆の水着姿とか見てみたいと思わないかい? なんと言うか妄想が捗るよねぇ……」
私がそう告げると、リチャード氏も目をつぶって、しばし沈黙。
「解ってますなぁ……永友提督も!」
そう言って、リチャード少佐がバンバンと私の肩を叩く。
さすが、少佐……解ってくれたか。
ケプラー20星系府とエスクロン社国は、同じエーテルロード支流に面した隣国のようなもので、友好的な関係らしいので、総督に言えばそれくらい手配してくれるだろう。
皆の休暇については……厳しい戦いとなるのは確実だから、むしろ当然の権利だと思っている。
実際問題、皆の艦も無傷で済むとは思えないので、艦のメンテや改修にかこつけて、強引にでも休暇を認めさせるつもりだった……そう仕事こそが提督の仕事と言うべきものだろう。
……それはさておき、やっぱり水着回ってのは漢のロマンだと思うのだが、どうよ?
さて……他の皆は……と言うとお風呂タイムだ。
彼女達も女の子なのだ……戦いを終えて硝煙薫るなんて、イヤに決まってる。
と言うか、戦闘艦頭脳体は皆、綺麗好きでお風呂好き……それぞれの艦にも備え付けのもあるはずなのだけど。
祥鳳のお風呂はやたら豪華だとかで、うちの駆逐艦勢は常連状態。
話を聞いたUSN組も食いついて来て、全員でのお風呂タイムと相成ったらしい。
もちろん、私達は紳士なので覗きなどと言う無粋な真似はしない。
……その楽園たる光景を想像するに留めるのだ。
立ち籠める湯気と水音……そして、普段お目にかかれない、乙女たちの一糸まとわぬ姿……。
きっとそこは……極上の空間。
リチャード少佐も思いは同じらしく遠い目をしている。
ムフフ……ムフフフフフフ。
まだまだ戦闘終わってませんが。
一段落ということで、皆お風呂とご飯タイムです。(笑)
皆、戦場に生きる乙女なので、こんな風にちょっとした時間があれば楽しんじゃいます。
日本勢は基本的にお風呂にこだわりがあるので、駆逐艦勢なんかは皆、大型艦にお風呂借りに行くのが基本。(笑)
戦闘ばっかじゃなくて、皆のほのぼの日常回なんかも描きたいですねー。
ちなみに、疾風はGL系の娘ですが、こんな事もあろうかと百合タグは実装済みだ。(笑)
※太平洋戦争艦艇裏話。
「剣崎ホテル」
祥鳳は元々は潜水艦母艦剣崎と呼ばれていて、泊地なんかで潜水艦隊の補給をしたり、乗組員の休憩施設代わりに使う艦でした。
その為、居住性が当時の艦の中でも最高レベルと言われるほど良くて、エレベーターに広いお風呂、広くて足を伸ばせる休憩室、豪華な食事が出ると言う事で、潜水艦乗りからは「剣崎ホテル」と呼ばれて、親しまれていたそうです。
大和の方は皮肉交じりでしたけど、こっちはむしろ親しみを込めてそう呼ばれていて……空母になってしまったのを見た潜水艦乗り達は残念がっていたそうです。
本作でもシホちゃんと関わった娘達は、シホちゃんとこに洗面器片手に遊びに来たりします。(笑)
更に提督と言うスイーツマシーンと言う名物が加わったのでしほちゃんホテル化待ったナシ?




