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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
第一部「来訪者」

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第七話「切り札はキミの中に」①

 明らかになった敵艦隊の陣容報告に、私は驚きを隠せなかった。

 

 敵機総数だけでも160機……超巨大戦艦種を含む、大艦隊……今の我々には荷が勝ちすぎているのではないか?

 皆を失うのではないかと言う恐怖……自然と身体が震える。


 けれども、懸命に背筋を伸ばし、恐怖を押し殺そうと努力する。

 ここは何が何でも恐怖に屈するわけにはいかない。

 

 しほちゃんと目が合う……彼女もレックスさんからの報告に、驚きと恐怖を禁じ得なかったようだ。

 不安そうな表情と頬を伝う汗……おそらく、冷や汗なのだろう。

 

 けれども、それも一瞬だけ……私の視線に気づくと、安心してと言いたげに微笑む。

 

「提督……敵の攻撃は、集中ではなく波状攻撃のようです。タイミングがバラバラなので、先程のように空とエーテル流体面上からの連携なら、各個撃破も容易いです。ビッグクローラーも護衛のザカー級を蹴散らせば、艦爆隊の集中爆撃で案外簡単に沈みます。的が大きい上にほとんど止まってるくらいには動きが鈍いし、対空攻撃力はどってことないんで、飛翔体と護衛がいなければあまり、恐れる必要もありませんよ」

 

 そう言って、しほちゃんはにこやかに笑顔を見せる。

 

 まったく、こんな女の子に気を使わせてしまうとは私も不甲斐ない……。

 戦争の経験がないとか、そんなのは言い訳だ……励まし支えるつもりが、逆に励まされるなんて、情けない……。

 しっかりしろ、永友魁一郎っ!

 

「ああ、そうだな……それにしても、大きいな……全長700mもあるのか……。見た目もあれだな……王蟲まんまだ……大きさとしてはスカイツリーを横倒しにしたくらいかな……」

 

 思わず何とも解りにくい例えを持ち出してしまった。

 慌てて一生懸命、情報端末を操作するしほちゃんは何というか……健気な娘だった。

 

「……えっと、王蟲は良く解りませんけど……スカイツリーってあれですよね? 2000年頃の地球で対軌道電磁投射砲を作ろうとして失敗して、モニュメントとして平和転用した建造物の一つって……。私はよく知りませんけど、私達の時代から50年足らずで、日本もそこまでの軍備を備えようとしてたんですね……」

 

「ええっ? 何それ? 何がどうなって、そんな話になったの?」


 全くもって意味不明のしほちゃんの説明に思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

 と言うか、対軌道レールガンってどこから、そんな話が出たのだろう?

 未来人……やっぱり、よく解らん。

 

「この情報端末のデータベース検索で出てきた「人類建造物史」ってのに、そう書いてあるだけなんですが……あれ? なんか違いました?」

 

 そう言って、隣までやってきてぴったりと寄り添うと、手にした情報端末の画面を見せてくる。

 腕に当たる慎ましやかなそれの感触が何とも言えない……と言うかわざとやってない? しほちゃん?

 

「そ、そうだな……どちらかと言うと、超巨大な電波塔ってところだなぁ……。「電」しか合ってないじゃないか。それにしても、なんだこれ? めちゃくちゃな事を書いてるな……。巡礼の順番を待つ人々――宗教施設としても使われていたようだって……。これ、単なる展望台への直通エレベーターの順番待ちの行列だろ。でもまぁ……ピラミッドや古墳なんかも当初は何のために建てられたかとか良く解ってなかったって話だったからね。時が過ぎると本来の建設用途なんて解らなくなるんだろうな」

 

 当時の写真付きで解説してるのは、良いのだが……やれ宗教的な施設となっていただのなんだのと。

 なんだか、好き勝手にものすごく適当な事を書いている……。

 

 600年後の未来の世界……スカイツリーも古代遺跡扱いとは、なんともはや。

 嫌が応にでも遠くに来てしまった事を実感する。

 

 同時にくだらない話をしているうちに、先程の動揺が嘘だったかのように平常運転に戻っている自分に気づく。

 

 まったく、しほちゃんには助けられてばかりだった。

 

「……すまんな……しほちゃん、気遣いに感謝する」

 

 礼はすぐにするに限る……私の前の人生での経験則だった。

 

 あとになってから礼を言うというのは、なんとも気恥ずかしいものでつい言いそびれてしまう。

 礼も言えなくなってから、後悔するのでは遅いのだ。

 

 そう言って、しほちゃんの頭に手をのせる。

 ホントは、抱きしめてやりたいとか思ったのだけど、それは駄目。


 ……ボディタッチは私の禁則事項なのだ。

 

 ただし、向こうからやってくる分には私は一切拒絶したりなんかしない。

 しほちゃんもその気があるなら、ドーンと来い! だぞ?

 

「何のことですか? しほちゃん、解りませーん! でも、褒められちゃった! てへっ!」


 代わりに返ってきたのは、照れ隠しらしい肩からドーンと体当たり……思わずヨタつく。


 違う……そのドーンじゃない……。

 

「とりあえず、本艦も前に出ます……初霜ちゃんが単独で、港湾施設防衛に先行してますからね。あの娘、やっぱ凄いです……私の戦闘機隊と連携してあっという間に第一波を蹴散らしちゃいました。疾風ちゃんも先行して初霜ちゃんのフォローお願い……! 港湾施設の固定砲台も、例の戦闘機もダメそうな予感しかしないからね……単艦で守りきるのも限度があるよ。こっちの航空隊も先発組は弾撃ち尽くしてるからね……一旦戻して補給が必要。あーあ、私もレックスさん位、いっぱい飛行機積めればなぁ……」

 

「うーん、そりゃ構わないんすけど、そうなると……しほちゃんががら空きになるんじゃねぇっすかね。提督も乗ってるんだから、無茶は自重するっす」

 

 しほちゃんのつぶやきに疾風ちゃんが割り込んでくる。

 彼女はアグレッシブな言動が目立つ割には、意外と慎重派だった。

 

「大丈夫だよ……なんか、私敵からハブられてるっぽいし……むしろ、港湾施設よりも私を攻撃目標にして欲しいくらい。あ、もちろん……提督の安全は最優先ですからね……。もし、私がやられても昔の人みたいに艦と運命を共に……なんて、しないでくださいよ。どうせ艦体なんて三日もあれば再建できるんですからね! もしもの時の為に、脱出ポッドも用意してあります。いざとなったら、あの中に押し込んでエイヤって放り投げます」

 

 そう言って、得意そうに胸を張ると、しほちゃんは艦橋の片隅に立てかけられた棺桶のような物体を指差す。


 ちなみに、その脱出ポッドと称するものは、耐熱耐圧構造の宇宙用救命ポッドをエーテル空間用に改造したもの。

 動力も一切なく……エーテル流体の流れに乗って、ただひたすら漂流する……恐ろしく不安な代物だった。

 

 その形は限りなく棺桶を彷彿させて、こんなものに乗せられて漂流なんて、あまり考えたくない……。

 そう思わずには居られなかった。

 

「うん……もしもの時が来ないことを祈ってるよ。だが、状況的には祥鳳が前に出るのが一番のようだ……しほちゃん、遠慮は要らない。前進だ……でも、怖くなったら、いつでも下がって良いんだよ?」

 

 一番最後のは、私の本音だ……出来れば、逃げ出して布団でも被っていたい。

 

「イヤですねぇ……皆、頑張ってるんだから、私一人がビビって下がってちゃカッコ悪いですよ。ホントを言うと、敵機が迫ってくると思わず身体がすくみ上がっちゃうんですけどね。でも、今回はなんか大丈夫っ! もしかして、提督に勇気をもらえてるのかな? なぁんて、えへへ……」

 

 撃沈艦の娘達は……皆、その最期の記憶が少なからず、トラウマになっていると言う話だった。

 そのトラウマを乗り越える糧となっているのであれば、私がここにいる意味はある!

 

 ……まったく、お互い勇気づけあってるのでは世話がない。

 

 続いて、戦術モニター上にアラート……港湾施設隊の防空戦闘機隊が敵の第二派と交戦を開始したようだった。


 エーテル流体面下に潜んでいた固定砲台群が長距離対空砲撃を開始する……。

 

 けれども、撃墜報告数はゼロ。

 それどころか、フレンドリーファイアで味方機が3機ほど撃墜……。

 

「……おいおい、何をやってるんだ……向こうも情報連携してるはずではないのか?」


 初霜としほちゃんの見事なまでの空海連携戦闘を見た直後と言う事もあって、浮足立った上に味方撃ちと言う無残な結果に思わず愕然としてしまう。


 何というか……これは酷い……!


「ああーん、もうっ! やっぱり駄目じゃん! 港湾統括頭脳体は、想定より弾道がブレるのと思ったところで砲弾が炸裂しなかったって……。試射する暇が無かったのが原因とか何とか言い訳してるよ……。エーテル大気中で、砲弾が真っ直ぐ進むと思ってる方が間違ってんのに……。そもそも、対空砲火のタイミングも戦闘機の攻撃タイミングも全然駄目! まったく……いくら民生用で戦慣れしてないからって、何やってんのさーっ! まるっきりド素人じゃないのっ!」

 

 しほちゃんが足踏みをして、叫びながら暴れる。

 あんまり、暴れるとその白くて可愛らしい下着とか色々見えるぞー等と思いつつも……案の定な結果に、思わず頭を抱えたくなる。

 

 戦闘機隊もまともに敵機を落とせないうちに接近されてしまい、バタバタと落とされていく……。


 装備からして、遠距離砲撃型のようなのだが、その分懐に入られると弱い。

 かなり頑丈な機体らしく一発二発食らっても問題にしないようなのだが……寄ってたかって集中砲火されるとやはり限度と言うものがあるようだった。


 大口径砲搭載戦闘機なんて、二次大戦中にも何度も作られて、ほとんど全てが駄作機のレッテルを張られたのが史実なのだけど。

 

 ……未来人は、過去の歴史から学ぶという姿勢が欠けているようだった。

 

 そもそも港湾統括頭脳体は、施設管理が任務であって元々戦闘用じゃないと言う事もあるだろう。

 兵器にしても事実上、初の実戦投入だから問題は付き物とは言え……これはマズイ、どう見ても劣勢。


 もう少しは役に立つと思っていたのだけど……この調子では、突破されるのは時間の問題。

 

 けれども、しほちゃんの戦闘機隊も一旦補給に戻って来ている最中で、レックス隊も敵第三波に備えている事もあり、今から救援要請をしても到底、間に合わない。

 

 何より、敵はまだまだ来る……レックスさんにはなるべく戦力を温存していて欲しかった。

 

 現状可能な策としては、支援の為に上空待機中の祥鳳直掩機を使うしか無かった。

 

「提督……直掩機を出撃させますか?」


 恐る恐ると言ったしほちゃんからの問いかけに、私も結論を出せずに考え込む。


 ここで直掩機の8機を使ってしまうと、祥鳳の防空戦力がなくなってしまう……可能ならその選択は避けたかった。


 だが、決断せねばならない……この場の最上級指揮官は私なのだから……。


さて、舞台は再び戦場にっ! 一転、なんともピンチな状況です。

頼りない味方、迫り来る難敵……想定外にむっちゃ弱いヘタレな提督に逆転の秘策はあるのか?!


余談。

港湾施設管理頭脳体は、普段はロボットなんかを統率して、エーテル空間航行艦の運行管理やら補給や修理、施設管理。

更には食堂の運営、お掃除やらが任務です。


つまり、民間用の物凄く平和ボケAIなのです。

……演算能力自体は規模が違うので、レックスさんの三倍とかスーパースペックなんですけどね。


そんなのを戦闘用に転用する辺り、未来人もなんとも酷な事をおっしゃる。

この辺の数値と上辺だけ見て、机上の空論並べて、何とかなると思っちゃうのが未来人です。


あったりまえなんだけど、閣下の職人芸なんて真似できるわけねーよ。


提督も提督で、ヘタレ気質で事前の準備と想定に熱心なんだけど、こんな風に歯車が狂っちゃうと弱いです。

想定外にイマイチ弱いのは、シホちゃんも似たようなもんなんですが……それでもむしろ、励まそうとする辺り……やっぱこの娘、イイ娘。


閣下今すぐ来てーっ!(笑)

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