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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
第一部「来訪者」

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第六話「プロジェクトR ~とある未来人開発者の挑戦~」③

 大佐の機体はまっすぐに4機編隊の先頭機に向かう。

 

 正面衝突コースのまま、敵機が回避行動に移った瞬間に12.7mmを斉射。

 

 敵がたちまち炎上墜落する。

 

「今のがヘッド・オンによる見越し射撃だ。シミュレーションにしては悪くないな……奴ら、こっちが突っ込むとすぐにビビって機首を下げる……そこが狙い所だ。うん、この機体……機動性はなかなかいいじゃないか……」

 

 良く解らないけど、さすが二桁撃墜記録を持つエース。

 初めて乗る機体で、あっけなく敵機を一機撃墜。

 

 駆逐艦の対空砲火と三機がかりの集中砲火……それでも器用にヒラヒラと避けていく。

 私の作った空戦プログラムではとてもこんな芸当は出来そうもない……これがエースの実力っ!

 

 でも、やはり……大佐と言えども限度はあるようだった。

 

 まず流体面近くまで追い込まれ、敵艦とすれ違いざまに対空砲火を浴び被弾、大佐も向かってきた敵機に当てるのだけど、炎上させたものの落とせない。

 

 そこを残った二機に集中砲火を喰らい失速……炎上し墜落。

 

 ……そこまでだった。

 

 スコアは一機撃墜に、もう一機もその後墜落していたので相打ちと言える。

 ……初めて乗る機体、あの戦力差にも関わらず二機撃墜……キルレシオとしては1:2だから悪くない数値どころか、これはもう驚くべき結果だった。

 

「うーむ、やはり初めて乗る機ではこんなモノか。だが、悪い機体ではなかったな……改良次第で化けるかもしれんぞ……これは」

 

 撃墜判定をもらって、最初のカタパルト待機モードに戻る大佐。

 

 撃墜時の状況なども実際の戦場と同じように炎に包まれて、エーテル流体面上に不時着したはずなのだけど。


 なんとも平常運転と言った様子だった……大佐の記録によると被撃墜回数30回超と記されている。

 良く解かんないけど、そんなにホイホイ落とされて、生還できるものなのだろうか?

 

 とは言え、今の空戦データだけでも、私達にとっては値千金の価値のあるものだった。

 回避機動や空戦機動……どれを取っても私達の作った空戦機動プログラムではありえないようなものだった。

 

 後ろで主任がガッツポーズを取っている……。

 

 ……これはボーナス頂きかもしれない!

 

「大佐……お見事でしたよ。素晴らしいデータが取れました……ご協力に感謝します。お疲れでしょうから、一旦休憩してください」

 

「おいおい……エリコ君、何を言ってるのかね? まだまだ一回飛んで一回落とされただけだ。今の結果は私としても実に不本意な結果だ……もう一本やらせて欲しい。それとやはり、火力が貧弱過ぎる上に射程が短すぎる! この機体に搭載できる最大火力の火器としてはどのようなものがあるのかね?」

 

「そうですね……一応、最大火力となると、70mmの小型リニアレールガンがありますね。ただし、イナーシャルキャンセラーの併用は必須となるので、単発式になってしまいますけど……」

 

 私がそう告げるとVRモニターの向こうで大佐が破顔する。


「なんと! そんな素晴らしいものがあるのかね? そうか、さっきのイナーシャルキャンセラーを使えば大口径火砲であっても反動を殺せるのか! 威力としてはどの程度なのだろう? それを搭載すればきっと私の理想の機体に近づく。やはり、戦闘機と言えども火力がないとな……機動力があって、高火力……素晴らしいではないか!」

 

「さ、さすがに機体バランスが変わるので、機動性は落ちることとなると思いますが……。そうですね……私もそんな気がしてきました!」

 

 確かに近接格闘戦になって、数で押されてしまうと大佐ほどのパイロットでもどうにもならなかった。

 リニアレールガンなら射程も長い……敵の火力も機銃レベルなのだから、わざわざ同じ土俵で勝負するまでもない。

 アウトレンジから一方的に数を減らし、近接戦を挑むのは最後の手段とする。

 

 おまけにリニアレールガンの火力なら、対艦攻撃も可能となる……現実の戦場を知る大佐ならではの発想だった。

 

 早速、VRシュレーター上での機体データのアップデートを実施する。


 細かい煮詰めは後回し……機体構造も……元々安定性重視の機体なので、思ったより問題はない様子。

 重量が許容範囲を超えてしまったので、装甲の簡略化や肉抜きで対応。

 

 型式名は「T/RY-HUR型」と命名。

 

 これは大佐に敬意を込めて、彼の本名のイニシャルから命名させてもらった。

 

「それでは、大佐……お待たせしました。ご注文通りの高火力化仕様機です。「T/RY-HUR型」と命名しましたが、どうでしょう? かなり重たくなってしまいましたので、軽量化の為に装甲を簡略化せざるを得ませんでしたので、防御力がやや低くなりましたが……その辺りは、トレードオフって所ですね」

 

「いや、こんなものだろう……悪くないな。HURとは私のイニシャルかね? 君もなかなか洒落が効いているじゃないか……水玉模様? いや、軽量化のための肉抜きと言うやつか……面白い機体だな。重いといっても、私のかつての愛機カノーネンフォーゲルに比べたら、マイルドなものだろう……では、第二ラウンド……参るぞ!」

 

 そう言って大佐の第二ラウンドが始まる。

 敵の編成は最初と同じ編成。

 

 大佐は今回は流体面直上ギリギリを突き進む。

 

「一つ聞くのだが……この砲の射程はどの程度なのかね?」


「本来、宇宙空間用なので、気体抵抗や摩擦を考慮しなければ100km以上の射程があります。エーテル気体中であることと、その機体用に砲身を短くしたり、パワーダウンさせたデチューン仕様なので……。視程も考えるとせいぜい10km程度が有効射程と言ったところでしょうか……」

 

「10km! それではもはや艦砲並ではないか……凄まじい射程だな……全くもって素晴らしい! ……では、試射ついでに軽くあの駆逐艦にでも当ててみるか」


 敵艦との距離が10000mを切った時点で、大佐がレールガンを無造作に放つ……数秒後、ザカー級の黒いフナムシのような艦体のど真ん中に命中。

 

 轟沈判定と表示される……あれ? 試射じゃなかったの?

 

「ほぅ、このレールガンは弾道特性も素晴らしいな……文字通り真っ直ぐ飛ぶのか。弾速も中々のものだな……これはまさに空飛ぶ戦車のようではないか……。どうだね? これこそが新時代の戦闘機と言うべきものだと思う。空戦では敵機よりも、むしろ地上からの対空砲火の方が厄介なのだ……。私も何度もイワン共の対空砲火に落とされ、苦汁をなめたものだ」

 

 やがて、大佐は目標を敵機に変える。

 

 約三秒間隔で、無造作にレールガンを撃つ。

 一発ないし二発で敵機はあっけなく直撃弾を食らって爆散していく。

 

 ……これほどまでに一方的とは思わなかった。

 敵機も回避行動を取っているのだが、まるで大佐の砲弾に当たりに行っているかのような様相だった。

 

 やがて、敵機は格闘戦のレンジに入る遥か以前に、一発の反撃すら許されず全滅……大佐の完勝だった。

 

「ふむ、やはり思った通りだ……いいかね? 戦闘機だからといって、近接格闘戦に拘る必要もないのだ。この射程と火力ならば、対艦攻撃にも使える……黒船相手には実に良い機体だ。もう少し大型化して、更なる火力を追求するのもいいだろう……。それと、私はこのレールガンと言う兵器をいたく気に入った……是非、私のスツーカにも積めるようにして欲しい。そうだ! マラート君も主砲をこのレールガンに変えてみてはどうかな?」

 

「はぁ……私は構いませんけど、エーテル空間での視認可能範囲なんて、せいぜい20km程度ですよ? そんな射程があっても宝の持ち腐れじゃないですかね」

 

「何を言ってるのだね? 戦場の空には常に私が舞っているのだ。私が弾着修正すれば、視界外からのアウトレンジで敵を一方的に叩けるではないか」


「ああ、その手がありましたね。いいですね……そう言う事なら是非お願いしたいです。それならば、いつものように置いてけぼり状態でも後方から大佐の支援が出来ます!」


「エリコ君、どうだろう? そちらにマラート君の主砲改装の手配を頼めるだろうか? 我々の装備に関する経費は星間連合軍にでもツケておいてくれれば、それでかまわないと言質をもらってる」

 

 戦闘機開発協力の見返りとしては、まったくもって安いもの。

 艦載用のリニアレールガンなら、既存の宇宙戦艦の搭載砲で似たようなサイズのものを転用すれば済む話……まぁ、それなりのソフトウェア改良が必要になるとは思うけど。


 有視界範囲内でなら、それなりに当たると思う……たぶん。

 

 注目度ナンバーワンのスターシスターズの艦載兵器に採用実績が出来るとなれば、我社としても非常に有意義な話だった。

 

 主任に目配せすると、無言で頷かれる……ゴーサインは出た。

 

「かしこまりました……ではそのように手配します!」

 

 それから、更に数回ほどのシミュレーションを重ね、本機「Kazakami T/RY-HUR型」はほぼ完成形となった。


 当初プランの機体とはかけ離れた別物になってしまった気もするのだけど……大佐による実戦証明済みとも言える機体なのだ……この機体はきっと素晴らしい戦果を打ち立てるに間違いなかった!

 

「今日は色々楽しかったよ! 正直、時間の無駄になるかもしれないと思っていたが、私としても、未来人の最新科学の一端を見れて、実に勉強になった。お互いにとって実に有意義な時間だったな。エリコ君には改めて、礼を言わねばなるまい……ありがとう。君達エスクロン社とは、今後も様々な形でお世話になるかもしれないが……ひとつよろしく頼むよ」


 ……多大なる戦訓と最上級の賞賛の言葉を残して、偉大なるエースパイロットは帰途について行った。

 

 もちろん、軌道エレベーターから少し寄り道をして、彼女達に海を見せるのも忘れなかった。

 

 海を目にした時の彼女達の感動したような面持ちはきっと忘れられないだろう。

 いつか、大海原を征くと言う彼女達の夢を叶えたい……そんな風に思った。

 

 例の牛乳も……最高級品の天然モノがうちの社長名義でダース単位で送られる事となった。

 実物を試飲した大佐は、「やはり本物は違う! 素晴らしい!」と何度も連呼していた。

 

 戦艦マラートの改装も中継ステーションの現地チームによって、急ピッチで進められている。

 大佐が戻る頃には、完了する見込みだ。

 

 もちろん、今後、戦艦マラートのエーテル空間での戦闘記録についても、提供してくれるそうなので、我社にとっては願ったり叶ったりだ。


 ついでに言うと、大佐の愛機Ju87スツーカについても、大佐の要望を織り込んだ改修バージョンを用意する予定だ。

 

 T/RY-HR型についても、矢のような催促をしてきていたケプラー20星系府に、人類史上最強のエースパイロット監修と言う触れ込みで機体建造データを送った……早速量産して、来るべき戦いの日に備えると言う話だった。

 

 本来は来週が納期だったのだが……最後の悩みどころだった搭載火器の問題が大佐のアドバイスでクリア出来た。

 私には、あの戦闘機が大活躍する未来が容易に想像できた……これは歴史に残る偉大なる第一歩なのかも知れなかった。

 

 先方はいたく喜んで、契約金を上乗せの上で支払ってくれる事になった。

 

 おかげで、私には社長から直々に臨時ボーナスが出ることとなった。

 その額はちょっとした宝くじに当たった程のもので……まずは、家族に仕送りをして親孝行しよう。

 

 向こうはそこまでお金に困ってるとは思わないけど、下の妹に何か買ってあげるように、お母さんに頼んどこう……。


 あの娘も少しくらいお洒落して欲しいんだよね……。

 上の妹は……あんにゃろに、お金なんか送ったら、酒代に消えるのが関の山だから、知ーらないっ!


 せっかくだから、少し贅沢して可愛いお洋服も買って、お化粧品なんかも揃えて……そうだ! 自家用車両なんかも買っちゃおうかな!

 

 なお、我が社と大佐は、今後も様々な形でお付き合いをさせて頂くということとなっている……。

 なんと、正式なスポンサー契約のみならず、ネーミングライツ契約も交わせたらしい。


 ……彼の名を関する兵器がこれからも人類の平和を護る戦いに続々投入されることとなるだろう。

 

 軌道エレベーターで宇宙へと帰っていく大佐を見送ると、夕闇迫る夜空に向かって、私は覚えたてのナチス・ドイツ式の敬礼を捧げる。

 

 偉大なる英雄に栄光あれっ!



そんな訳で、第六話「プロジェクトR ~とある未来人開発者の挑戦~」をお送りしました。

次回はまた戦場に戻ります。


……なんかいい話っぽく締めくくってますけど。

もうどこからツッコめば……状態なので、ツッコミお待ちしております。(笑)


今後もこの企業国家エスクロン社は出て来ると思います。

大佐の公式スポンサーですからね。


ちなみに、提督達やエーテル空間戦闘艦は、いずれも星間連合軍と言う銀河連邦的な組織に属しているのですが。


実際は、色んな形で企業とか星系国家から資金や物資の援助をもらってたりするので、スポンサーの意向とか義理や人情で、かなり好き勝手に動いたりしてます。


大佐の艦隊はトリプルナンバーの独立艦隊なので、基本的に誰の命令も受けない立場なんですが。

大佐は戦の気配を察すると、何処へだろうがお構いなしで参戦します。(笑)

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