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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
第一部「来訪者」

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第六話「プロジェクトR ~とある未来人開発者の挑戦~」①

 私の名前は、クスノキ・エリコ。


 最近、大学の研究室から、花形部署とも言える兵器開発局へ異動してきた新鋭気鋭の若手技術者のひとり……年は26、十分若いと思う……うん、絶対。 


 ご先祖様は、日本人だったらしく、古代文字の漢字で書くと「楠木恵理子」となるらしい。

 

 漢字には、文字そのものに意味があるのだそうで、クスノキと言うファミリーネームは日本に自生していた樹木の一種。


 遡ると古代日本、西暦1300年頃の武将楠木正成と言う人物が先祖だと言う話なのだが、あまり根拠は無い……と言うか良く解らない。


 代々そう言い伝えられていたらしいので、多分そう言う事にしておいたほうが誰にとっても幸せだと思う。 

 恵理子と言う名前は、理性的な恵まれた子供になれとかそんな願いが込められているようだった。

  

 漢字を当てた名前を付ける……これは我が家の先祖代々の伝統と言うことなので、自分に子供が出来たら、日本人風の名前を付けたいと思ってる。


 まぁ、相手なんかいないから、いつの事やらと言った感じなのだけど。

 そんなファンタスティックな思いが込められた名を私は誇りに感じている。

 

 とは言っても、この時代、人種なんて肌や髪の色程度の意味しかない。

 でも、この日系人特有のきれいな黒髪はちょっとしたお気に入りかな。

 

 こう見えても大学は主席卒業……入社後も大学の研究室努め……研究者としては、順当なエリートコースに乗って、早くも順風満帆の人生を約束されたようなもので、私は勝ち組と言っていいだろう。


 お父さんがエスクロンの重役なので、コネ出世なんて言うやつもいるけど、うちの一族は代々エスクロンの重鎮を排出してきた家系ながら、我が社はあくまで実力主義……そんな甘い社風じゃないってのは、皆も良く知るところだろう。


 そもそもお父さんは研究開発とは関係ないし、そんなコネを使って、娘の出世をアシストするような人じゃない。

 もちろん、イザって時は助け舟くらい出してくれるだろうけどね。


 とは言えども、イイ男にはイマイチ縁がない上に、職場と自宅を往復するだけの毎日で、日に日に野暮ったくなってるってのが、なんとも悲しいところなんだけどね。

 

 その分、充実した毎日を送ってるから、これはこれで悪くないと思ってる。


 ちなみに、家族はお父さんとお母さん、あと1個下の妹と10歳下のやっぱり妹がいる。

 10年も離れた妹ってのは、もう妹と言うより、自分の娘みたいな感じで、よく子守とかもさせられたものだ……。


 実際、ミルク飲ませたり、オシメ替えたりとかもしたんだけど、本人は覚えてるはずもなく、この話をすると嫌そうな顔をするので、あまりしない。


 けど、色々尊敬もされてるみたいで、いつもお姉さま、お姉さまといつも後を付いてくるような感じだった。


 あの娘ももう高校生……あの娘も色々あったのもあったから、入学式で涙が出たくらいだ。

 

 うん、私はなんだかんだで、人並み以上には幸せって気はする。


「やぁ、エリコ君……おはよう! 例の新型の開発の方はどうだい? 旧時代の骨董品でいつまでも戦わせてちゃ彼女達に申し訳が立たない。試作データで構わないから、回して欲しいって要望があちこちから来てる。特に最優先って事になってるケプラー20星系府への実機データの納期は来週だけど、可能なら前倒し出来ないかな? 向こうさん、相当切迫してる……どうも近日中に本格的な黒船との実戦が始まりそうな様子らしい。そうなると我が社としても、ここは何が何でも間に合わせたい所だからね……ここはひとつ頼むよ!」

 

 星間企業国家……エスクロン社国、技術開発部。


 それが私の職場……私はそこで新型のエーテル空間戦闘機開発の主幹エンジニアと言う大役を担っている。

 

 朝一で出勤して、本腰入れる前に、ちょっと一息入れようとしていたら、間髪入れずやってきた主任からの進展状況確認と、無茶ぶりに私はため息でもって応える。

 

「はぁ……おはようございます……エディ主任。進展状況ですか? 一応、ベース機体は出来ているんだけど、搭載火器の選定に困ってるとこです。スターシスターズ達は、化学反応砲なんて時代遅れのを使ってるんですよね……。一応、あの娘達の使う戦闘機の機銃を転用してるんだけど、シミュレーション結果はどうもパッとしない。黒船の飛翔種の防弾性能が向上してる傾向があるんだけど、そもそも火器については20世紀レベルの非効率的なもの。しかも、あの娘達って、どうにも保守的な上に技術的な話とか全然通じないから、お話にならないのよね。まぁ、技術格差が600年もあれば無理もない話なんだけど……。装備自体や弾薬のたぐいは、自動工廠で過去データを元に再現してるから、供給体制は問題ないけど、エーテル空間対応兵器の新規開発となると、相当な難題なんですよ」

 

 スターシスターズ……戦闘艦艇頭脳体とも呼ばれる戦闘艦を一人で操るオーバーテクノロジー地味た無人兵器のインターフェイスユニット。


 宇宙時代の人類にとっての要、エーテルロードの守護者たる者たちだ。


 古代先史文明が残した人類にとっては至宝とも言えるエーテルロードが戦場になる。

 そんな事、誰も想定すらして居なかった……結果、頼みの綱が旧時代の兵器とは……なんとも情けない限りではあったのだけど。


 宇宙時代になってから、人類は戦争というものを捨てたのだ……。

 宇宙空間や地上では、散発的に紛争は起こるものの、かつて人類を二分したような世界大戦規模の争いは、一切起こっていない。


 つまり、事実上、ゼロからの再出発に近いのだけど、ここは私達、技術者の意地の見せ所だった。

 

「しかたあるまい……エーテル空間では、既存の光学兵器の類は使い物にならない。人類最終兵器と言われた重力兵器もエーテル空間崩壊の危険があって、とてもあっちでは使えんからな。長距離誘導弾も光子魚雷も宇宙戦用兵器は全く使えん……。よりにもよって、非武装中立のエーテル空間で戦闘なんて、まったくもって難儀な話だよ」


「そうですね……既存の兵器技術がほとんど使い物にならないのは、正直痛いです……。エーテル空間戦闘の研究も、戦争の火種になるからと、条約で禁止されていたのも今となっては、問題でしたね……」


「だからこそ、スターシスターズ達が必要とされた訳なのだがね……。けど、彼女達は戦士であって技術者ではないからね。それ故に我々が支えなければならない……と言うことさ。そうだ……例の大戦の英雄殿との面会の件、うまく行きそうだぞ……先方も是非にと非常に乗り気だそうだ。たまたま、我が社の中継ステーションに補給のために、立ち寄っていたようなんだが、やたら気の早い御仁のようで、今日の午後にでも本社まで来てくれるそうだ」

 

「うそ! ダメ元だったのに……昨日の今日だなんて、すごいすごいっ! しかも、その人ってエースパイロットだったんですよね!」

 

「そうだよ……大戦でもっとも多くの敵を倒した人類史上最強、伝説のパイロット。しかも、再現体となってからも、指揮官なのにわざわざ最前線で、実際に黒船の飛翔体と空戦したりしてるらしい。撃墜数もすでに二桁を余裕で超えているようだ……奴らと直に空戦をした者などスターシスターズでもいやしない。きっと非常に有意義な話を聞けると思うよ。エリコ君も一字一句聞き逃さないくらいのつもりで、しっかり話を聞いておくように! それと出来れば、適当におだてて、VRシミュレーターでもやらせてみて、空戦データも取ってほしい。社長も今後の信頼関係を作るためにも、まずは接待の約束を取り付けたいと言っていたからね……悪いけど、ここは君の頑張りどころだ!」

 

「はい、主任っ! クスノキ・エリコ了解しましたっ!」


 こうして、私は……伝説の英雄「スツーカ大佐」と面会と言う類稀なる栄誉を与えられたのだった!

 

 


 ランチを挟んだ昼過ぎに、「大佐」は我が社へとやって来た。

 厳つい雰囲気の黒いナチス・ドイツの軍服を着込んだ端正な中年……片手には何故か合成品のミルクパック。

 隣には、背の高いシャプカ帽をかぶった、旧ロシア風の黒服の美人が油断なく辺りを睥睨していた。

 

 他になんだか小さいのが三人ほどぞろぞろと左右と背後を固めていた……どうやら護衛のつもりらしい。

 

 資料によると、大佐ご本人とその乗艦、戦艦マラートの頭脳体に間違いなかった。

 小さな三人組もその護衛艦の頭脳体達……スターシスターズ……まったく、いつ何時も職務に忠実とは恐れ入る。

 

 社長を始めとする社の最高幹部連が勢揃いしての本社ロビーで大々的な出迎え……大勢のマスコミもやって来ている。

 本来は、もう一人……CEOもいるのだけど、あの方は表に滅多に出てこないような人だから、案の定出て来てないようだった。

 まぁ、本当に実在するのかすら怪しいと言われるような人物なので、致し方ないだろう。

 

 ……なお、彼ら、黒船と戦うリビルダーやスターシスターズは、エーテル空間から出てくる事は滅多にない。


 その上、彼はリビルダーの中でも有名人……650年も前の世界大戦で、個人レベルで並ぶ者なしと言われた大戦果を打ち立てた伝説の存在なのだ。

 

 黒船との戦争なんて、どこか別の世界の物語。


 ……誰もがそんな風に思っていたし、黒船との戦いで勝利を重ねるスターシスターズも……美人ぞろいの彼女達はちょっとしたアイドルのようなもの。

 

 当人たちが知らないところで、勝手にかつての大戦での戦いを題材とした映画やドラマ、アニメが放映されていたり、彼女達の写真集なんてのも出版されていて、若い男の子達の間で大ブームとなっているらしかった。


 その中でも、最前線で先陣を切って戦う駆逐艦頭脳体の娘達は何故か人気があるらしい。

 

 こんなジュニアスクールの子供みたいなのを偶像化するいうのは、些かどうかと思うのだけど……男心って良く解かんない。


 ……目の前のチビっ娘達を眺めながら、そんな風な感想を抱く。

 

 いずれにせよ……そんな銀河の誰もが注目する存在。

 その中でも、とびっきりの逸話を持つ大英雄がやって来たのだ……。


 星間企業国家たる我が社としては、国賓扱いでも足りないくらい!

 

 今朝の部長の訓示によると、この本社で盛大な歓迎セレモニーで出迎えて、企業国家エスクロンの元首たる社長直々の挨拶と会談、そのあと幹部連たちとの豪華な昼食会、マスコミのインタビューなどが予定されているらしい。

 

 私のところにやってくるのは、恐らく夜になるだろう……そんな風に思っていたのだけど。

 

 大佐は拙速を尊ぶ人のようで、そんなこちらの事情や思惑なんてどこ吹く風だった。

 

「ふむ、昼はここに来るまでに済ませてきたのでな……あいさつが済んだのであれば、さっさとその戦闘機を見せてくれ。インタビューやら歓迎セレモニーなぞ、むしろどうでもよろしいっ! 私は無駄なことが大嫌いなのだ!」

 

 この一喝には誰もが唖然としたが……人類最後の戦争の時代、二〇世紀から二一世紀を生きた軍人たちはそもそものメンタリティが私達とかけ離れている。


 英雄と言えば聞こえがいいが、逆を言えば、数千人単位で人を殺して平然としている殺人鬼のようなものなのだ。

 大佐は我々、27世紀の人間の常識や思惑で動くような人物ではなかった……ただそれだけの事。

 

 むしろ、お付のスターシスターズ達の方が、申し訳なさそうに頭を下げまくっていたのが、印象的だった。

 

 

「では、大佐……これが我が社の開発したエーテル空間戦闘機「Kazakami T/RY」です」


 そう言って、エディ主任が情報端末のモニターに立体図を表示させる。

 

「ふむ……漏斗型とはこれはまた変わった形だな。これはちゃんと飛べるのかな? 私も航空力学を少しはかじったのだが……とても飛べる形には見えない」

 

「エリコ君! 技術的な説明は君に任せる……紹介します、大佐。本機の開発担当技術者のクスノキ・エリコ君です……若輩者と思われるでしょうが。我が社直営のエスクロン技術工科大学を主席卒業した優秀な若手です」

 

「大佐……お目にかかれて光栄です。ご紹介に預かったクスノキ・エリコです。本プロジェクトの主幹エンジニアを勤めさせていただいております」

 

 そう言って、深々とお辞儀をする。

 そんな私を大佐は興味深げに見つめる。

 

 こちらの段取りとか予定が盛大に狂ったので、私も少しはお洒落くらいしようと思ってたのに、そんな時間もなくなってしまった……何とも気恥ずかしくなる。

 

「ふむ、その名前からすると、君は日本人なのかね? 私と同じ再現体の日本人とも何人か会ったが、皆押し並べて好意的だった。まぁ、かつての同盟国だからな……あの国は食べ物も美味いし、黒髪の美人が多くて私も好きだ」

 

 そう言って、私の黒髪をまじまじと見つめる大佐。

 あんまり、梳かしてない上に無造作に縛っただけなんだから、きっとボサボサだ。

 そんなジロジロ見ないで欲しい……。

 

「ご、ご先祖様が日本人なんですよ。一応、遺伝的にも日本人らしいんですけど。詳しいことは解らないんですよね……ごめんなさい、古代地球の……それも日本の事ってあまり詳しくなくて……」

 

「そうか……自らのルーツに興味を持つのは良いことだよ。連綿と続く古代から受け継がれた血脈……先人たる祖先に思いを馳せる。これは未来を生きる者たちの責務と言えよう。それに、大和撫子という言葉もあるそうだからな……せっかくだから、君もそれを目指してみるといい。……黒髪に着物は実に映えるぞ。そうだろう? マラート君……この間のジャパニーズ着物姿……良く似合っていたぞ」

 

 そう言えばマラートさんも黒髪だった。

 

 彼女はロシア艦……スターシスターズはその祖国の文化や伝統を重んじる上に、その外観は祖国の人々と酷似しているのだそうだ……彼女もロシア系の雰囲気と言った所なのだけど。

 かの国はモンゴロイドも多かったらしいので、黒髪は珍しくなかったそうだ。

 

「……私は大佐の着せ替え人形じゃありません! 無理やり着せておいて、何を言っているのやら……。でも、お褒めいただきありがとうざいます……大佐」

 

 マラートさん、怒りながら照れるとか器用な真似をしている。

 戦闘兵器の頭脳体と言う話だけど、メンタル的には私達とあまり変わらないような気がする……。

 

 ……古代ジャパニーズ文化によると、確かこれツンデレとか言うんだっけ。

はい……予告通り戦闘回の途中ですが。

流れぶった切りの外伝的エピソードです……でも、ある意味もう一人の主役が関わってますからね!


ちなみに、予告とタイトルが変わりましたが……サブタイ基本的にどれも遊んでるので、これもその一環って事で。


この作品、基本的に群像劇スタイルなので、作者の気まぐれ……。

じゃなくて、必要に応じて色んなエピソードが出てきます。


それぞれが色んな形で関わったり、交わったりしてますので、読み直すとほほぅとなるかもしれません。


なお、時系列的には永友提督達の所に黒船が来襲する一週間くらい前の話ですね。


今回は、未来人技術者エリコ・クスノキ女史視点です。


彼女の家では、楠木正成が先祖と言う話になってますが……血が繋がってるかは怪しいもんです。

1400年も経ってれば、もう言ったもん勝ち。(笑)


エーテルロードの外、未来人の世界については、これまで敢えてあまり描写してなかったのですが。

このエピソードと共に彼らの世界観に広がりが出来たので……そのへんにも触れたいなと思いまして……。


ちなみに、このエピソード……思ったより長くなってしまったので、3-4回くらい続きます。

好評ならエリコちゃん視点の後日談もありな感じです。(笑)


あ、このシリーズの冒頭は中島みゆきの「地上の星」でもBGMにどうぞ。

エンディングテーマは「ヘッドライト・テールライト」で決まりっすな。(笑)

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