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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
第一部「来訪者」

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第四話「燃える宇宙(そら)」③

「提督っ!」


 真剣な表情のしほちゃんが私を促す。

 ひとまず、ここで慌ててはいけない……敵襲は想定の内。


 まずは、平常心を保たねばなるまい。


「ああ、しほちゃん……どうやら、予想通りって訳だな」


「はい……敵機を見つけたのは、レックスさんの強行偵察機です。彼女の勘が的中……ですね……さすが古参、おかげで奇襲と言う事態は避けられましたね……敵来襲まで多少の猶予があります」

 

 そう言って、にっこりと笑顔を見せるしほちゃん。

 こちらの不安を見透かしたような笑顔に何とも言えぬ安堵感に包まれる。

 

 それにしても、リチャード少佐……いいタイミングで来てくれた。

 これは感謝せねばなるまい……。

 

「……リチャード少佐……聞いての通りの状況だ……着いて早々だが、早速仕事をしてもらう事になると思う。すまないが、まずはこの場で待機をお願いする……情報も共有しておいた方がいいだろう?」

 

「ミスター魁一郎、了解した……レディ祥鳳、敵の規模と推定到達時刻は?」

 

 先程まで軽い雰囲気は微塵もなく真剣な表情のリチャード少佐。

 パン職人の一般人と言っておきながら、なんだかんだ言って戦慣れはしているようだった。

 実に頼もしい青年だった。

 

「数はおよそ40機……到達予想時刻はおそらく、30分もあれば港湾施設上空に到達するかと。すでに、レックスさんが直掩機2個小隊8機を先行迎撃に回したとの事でもう少し時間が稼げるかと。……さすが、対応が素早いです……。これはあくまで推測ですけど、状況的に敵のネスト級が進出した可能性が濃厚です。ただ敵機の数が思ったより少ないので、恐らく第二波がいるか、未発見の敵編隊がいる可能性が考えられます。引き続き、索敵と警戒を厳に致します……!」

 

 なるほど……戦力の逐一投入にならないか心配したが……敵飛翔体の規模から敵が戦力分散していると判断したのか。


 であれば、牽制と時間稼ぎとして後続を待たずに先発隊を差し向ける判断は正しい。

 

 やはり、戦術指揮能力や判断力では、私は彼女達に遠く及ばない……任せて正解だな。

 上空を見上げると、祥鳳から発艦したゼロは編隊を組まずに、次々と別方向へ散っていくようだった。

 

「直掩ではなく、まずは索敵……と言うことかな?」

 

「はい……ゼロ第一小隊は直掩ではなく索敵に回します。第二、第三小隊は直掩として上空警護です……第四、第五小隊及び艦爆隊は順次出撃をかけますが、上空にて予備待機とします。それと初霜ちゃんから出撃許可を求められていたので、すでに許可を出しています……先陣を切るつもりみたいですね。私も艦に戻って、直ちに抜錨します……疾風ちゃんも急いで出撃を……って、もういないか。あ……提督は如何なされますか? 無理に私達と共に出撃せずに、安全な所に避難していただくのも良いかと思います」

 

 恐らく矢継ぎ早に情報が入っているのだろう、しほちゃんが、情報端末と通信機を片手にテキパキと指示を出しながら、そんな風に提案してくる。

 

 こんな時は、私の判断を待たずにしほちゃんの判断で各々に指示を出すように言い含めてあったので、問題ないのだが……皆、私が口を出すまでもなく、最適な判断で最適な対応を行っているようだった。


 あの普段、飄々としている疾風ちゃんもサイレンを聞くなり、直前までエリソン達と戯れていたのに、恐ろしく素早く自艦へと向かっていた。

 

 迎撃行動はスピードが命……即断即決即実行……皆、優秀だった。

 

「しほちゃん、さすがに私が真っ先に逃げ出すというのでは示しがつかないよ。それとちょっとまってくれないかな? ……総督からのホットライン通信が入った……」

 

 私は私で、彼女達と未来人側の連携を取るのが主な仕事だ。

 ……案の定、未来人の総督からの、なかばパニック気味の指示を乞う連絡だった。

 

「良かった! やっと連絡が取れた……永友少佐! 私だ……ベルオーズ総督だ。今の空襲警報は誤報ではないのか? 一般市民や職員から問い合わせが殺到して通信回線がパンクしてしまった! まったく、こんなに早く敵が来るなんて聞いてないぞっ! 一体どうなってるんだ!」

 

 やれやれ……すっかり、冷静さを欠いてしまっている……。

 トップがこの調子では、下の者はさぞ混乱している事だろうに……まぁ、仕方がない。

 平和ボケってのは、そう言うものなのだから……。

 

「……総督、まずは冷静になりましょう……落ち着いて下さい。前々から黒船襲来の可能性はご説明させていただいています。来るべき時が来た……それだけのことです。まずは、港湾管制頭脳体への迎撃命令をお願いします! この日の為にちゃんと備えていたではないですか」


「そ、そうだな……すまない……取り乱したりして……」


「それとレックス及び祥鳳との情報連結の上で、彼女達の指示に従うように取り計らっていただきたい。防空管制は二人に任せて問題ないと判断しております……。彼女達は対黒船戦闘のエキスパートです。そちらは、民間人および非戦闘員の避難を最優先で……手筈は事前に制定したマニュアルに従ってやれば大丈夫でしょう……。時間も30分は猶予がありますから、落ち着いてやれば十分間に合うはずです」

 

 これまでの黒船との戦いは、どちらかと言うと黒船の艦隊とこちらの艦隊の小競り合いが中心で、ゲートや中継ステーションへの攻撃も小規模なものに限定されていた。

 

 未来人達にとっては、こんな港湾施設への大規模空襲は初の経験になるようだ……私も似たようなものだが……。

 こちらが慌てても仕方がない……なるべく、落ち着いて解りやすく説明したつもりだったが大丈夫だろうか。

 

「ああ……解った……気を使わせてすまないな。港湾施設については、多少破壊されても構わない……。だが、30分で民間人の避難は恐らく難しいだろう。皆、このような事態は経験がないのだ……職員ですら、パニックを起こしかけているような有様だ。提督の言うとおり、事前に避難訓練でも行えていればよかったのだが……結局、ぶっつけ本番になってしまった。可能な限り、時間を稼いで欲しい……頼む!」


「そうですね……正直、敵の手が早かったのは否めません……。ですが、この教訓は次に活かせばよいではないですか……」


「……申し訳ない……我々の危機感が足りなかった……再三忠告してもらったのだが。それとゲート関連施設だけは無傷で守り抜いて欲しい……あれがやられると、星系自体が孤立してしまう……。港湾管制頭脳体との連携については、そちらの二人にフルアクセス権限を付与する……後の事は頼む、私は民間人の避難誘導の陣頭指揮を取るとしよう」

 

「了解いたしました! 総督も己が責務を全う下さい……我々も総力を尽くして、敵を迎撃します……では、お互いの健闘を……」

 

「そうだな……当てにしているよ……。気持ち程度かもしれないが、私も君達の武運長久を祈る……これで良かったかな? 古代の表現は難しいがロマンチックだ」


「合ってますよ……そのお気持ちだけで、十分です。ありがとうございます……後は我々にお任せ下さい!」


 ……総督との通信が切れる。

 総督もそれなりに優秀な人物で、可能な限り精力的に動いてくれていたようだったが……。


 敵の動きが予想以上に早かった……増援艦隊にしても、リチャード少佐達が予定を大幅に前倒しで来てくれてギリギリのタイミング。

 

 何もかも準備万端には程遠いが……ここはやるしかなかった。


「しほちゃん、聞いての通りだ……港湾施設の被害は無視して良いそうだ。だが、民間人と非戦闘員を乗せて通常空間へ脱出する民間船とゲート周辺施設は守り抜いて欲しいとのオーダーだ。まぁ、これは言われるまでも無いと思うがね……。あとは避難が滞っているそうなので出来るだけ時間を稼いで欲しい。それと港湾施設の統括頭脳体との情報連結はどうなってる? 先方から君達にフルアクセス権限が付与されているはずなんだが」

 

 私がそう告げると、しほちゃんの目が一瞬遠くを見ているようなぼんやりとした目付きに変わる。

 

「……はい……港湾統括頭脳体との情報連結リクエスト、来ました。頭脳体との相互情報連結完了です……これは良いですね。防衛目標の優先順位も設定……各員に共有済みです……。ありがとうございます……情報連結のおかげで、施設側との連携がスムーズにできそうです。よく未来人がここまで許可しましたね……フルアクセス権限付与だなんて、随分と大胆なことしますね」


 頭脳体同士での情報連結……要は全員でホットラインを繋ぎっぱなしにするような感じらしい。

 

 最新情報をお互い同士でリアルタイム共有するらしいのだが……戦闘艦の頭脳体だけではそこまで密な連携は出来ない。


 港湾統括頭脳体が中継サーバーとして機能することで、高度な情報連携が可能となる……そんな風に聞いていた。

 

 要は、C4I(Command Control Communication Computer Intelligence system)と呼ばれる統合情報システムを高度化したものだ。

 

 ちなみに、フルアクセス権限とは、文字通り港湾統括頭脳体の全機能を掌握できる権限で、未来人にとっては命を預けるのと同義だった。


 未来人達はいまいち不甲斐ない者が多いのだが……そんな英断を下せるベルオーズ総督に尊敬の念を抱く。

 

「それと……私も逃げるのは無しだ……ここはひとつしほちゃんに座乗して、陣頭指揮を取ろうじゃないか……。飾り物でも皆の気分が違う……そういう物なんだろ?」


「はい、そういう物なんです! 今回の作戦で旗艦指名されて、私もう感激しちゃって! 提督用に艦橋に司令席や執務室まで用意しちゃいました! ぜひお願いします! やったぁっ!」


 嬉しそうに飛び上がらんばかりに応えるしほちゃん……初霜もそうだったが。

 彼女達にとっては、旗艦として提督が座乗すると言うのは特別な意味があるらしい……。

 

 正直、最前線で砲声を聞いたり、直撃弾を浴びる瞬間は恐怖以外の何物でもないのだが……それは彼女達だって同じなのだ。

 

 ……私も勇気と言うものを見せてやらねばいかん! 勇敢で男気溢れる提督と言う評判……そんなものとは程遠いと思っているのだが……ここは評判に違わぬよう振る舞うべきだろう。


「提督……当然、我々も参戦するつもりなんだが、迎撃作戦の手筈はどのようになっているのかな? その様子だと、この状況はすでに想定していたようだね……皆、恐ろしく手際が良い。我々も急いで来た甲斐があったな……。それにしても、荷解きもブリーフィングの暇も無いとは……黒船共も少しはのんびりと甲羅干しでもしてくれれば良いのにな。……エリソン、もちろん主機は落としてなんかいないだろうな?」


 それまで、話を聞くにとどめていた様子だったリチャード少佐が口を開く。


 よく見ると、エリソン達はものすご~くソワソワしている。

 ……割りと駆逐艦の娘達は幼い見た目の割に好戦的なものが多い……出撃したくって、ウズウズしているようだった。


「当然ですわ……ここは最前線でーっす! 主機はアイドル、いつでも回せまーっす! そう聞いてくるってことは、出撃ってことですね! 解りました! 皆! 急いで戦闘配置についてっ! 準備ができ次第、早い者勝ちで抜錨でーっす!」


 エリソンがそう言うと、他の三人も一斉に自艦へとトテトテと走り出す。

 もはや、止める暇も無い……リチャード少佐もこれには苦笑い。


「いつもこんな調子なんだ。エリソン達はどうも人の話を最後まで聞かなくてね……ひとまず、こちらも出るよ……すまんね、事後承諾みたいになって……」


「いえいえ、お気になさらずに……リチャード少佐達には、レックスさんの護衛に回ってもらうつもりでしたから、そのようにお願いします」

 

「うん、了解した……それと、僕もいつも通り……エリソンのブリッジで陣頭指揮を取るつもりだ。ここだけの話、毎度この有様なんだ……戦いってのは、本当にどうしょうもなく怖いね」

 

 リチャード少佐が左手を見せると、ブルブルと震えていた。

 心なしか膝も笑っている……先程までそんな素振りもなかったのだが。


 どうやらエリソン達の前ではやせ我慢をしていたらしい。

 

「そりゃ奇遇だ……実は私もだよ。けど、これはお互い武者震いと言う事にしておこう。知ってるかい? 古代日本の武士は戦を前にすると、心身の高揚に伴い身体が勝手に震えだしてたんだそうだ……。だからこいつは、ビビってるんじゃなくて、武者震いだな。可愛い女の子達の前ではせめて、カッコよく振る舞いたいものだね」

 

 そう言って、同じように勝手に震えだした右手を見せるとリチャード少佐も苦笑する。

 

「そうか……なら、こいつはまさにその武者震い……ブシドーって奴だね。とりあえず、無事乗り切れたら、今夜は二人で一杯やろう。あなたとなら、旨い酒が飲めそうだ……ああ、僕達はそちらの指揮に従うつもりだ。可能なら、エリソン達にも情報連結をお願いしたい」

 

「了解した……防空指揮統制はしほちゃんとレックスさんが担当している。そちらは、レックスさん経由で情報連結を行うように、4人に指示をしておいてくれ。それ以降の我々の役目は、艦橋で立派な指揮官っぽく振る舞うだけだな……」

 

「うん、なんだかんだでUSN艦同士の方が連携もやりやすいらしいからね。やれやれ……お互いやれることは指揮官の真似事程度とは情けない限りだが……。そう言うお役目なのだから仕方がないね。けど、お互い少しは緊張がほぐれたかな? ありがとう……礼を言わせてもらう……では、また後ほど会おう! グッドラック!」

 

「ああ、ありがとう……リチャード少佐! 武運を祈る!」


 急ぎ足でエリソンに乗り込むリチャード少佐を見送ると、私もしほちゃんと共に祥鳳へと走る。

 最後に振り返ると、艦上のエリソンと一瞬目が合いペコリとお辞儀をされる……。

 

 すでにレックスさんは抜錨しており、リチャード少佐の艦隊もけたたましいサイレンの中、エリソンを残して次々と抜錨していく。

 

 頭上ではすでに祥鳳から飛び立ったゼロ隊が小隊単位で編隊を組みつつあった。

 

 祥鳳の甲板の上に立つと、しほちゃんが何か言いたそうな顔をしていた。


 ここは指揮官らしく……出撃の号令でもしろと言うことなのだろう……。

 まったく、良い世話女房だな。

 

「それでは、祥鳳! 君に命じよう、旗艦軽空母祥鳳、抜錨ッ! 総員傾注っ! 第201独立遊撃艦隊はこれより、黒船の敵性飛翔体群の迎撃任務に着く……! 私にとっても、ここまでの大規模空襲に対する拠点防衛戦闘は始めての経験だが……事前の作戦プラン通りやれば、何ら問題ないはずだ。黒船共をエーテルロードの果てに追い返すのだ! ……各員の奮闘を期待する! 以上っ!」


 通信機越しに全員の威勢のいい返事が帰ってくる。

 士気は上々……迎撃態勢も整いつつある……後は勝つだけだった。

 

「演説お疲れ様でした。なかなか良かったですよ! ……それでは、軽空母祥鳳抜錨しますっ!」


 しほちゃんの返事と共にすでに抜錨準備の出来ていた軽空母祥鳳がゆっくりと動き出す……。

 

 こうして、後にケプラー21星系攻防戦と呼ばれる事となる……黒船との史上初となる大規模星系防衛戦闘が始まったのだった……。

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