思う存分揉みしだけ!!
月に幾度かある全校朝礼の時間は、決まって名簿順に座らされる。
校長の有り難いお言葉を右から左へと受け流しながら、叱られない程度にマッタリと時間を潰す。
こういう時女子で良かったと思うのは、スカートの下で胡坐を書いていてもバレないところだ。
私、梨緒の後ろに並ぶのは愛梨。あえて愛梨と読ませない理由は、愛梨いわく彼女を出産した時に親が産後ハイという厄介なものをこじらせ、若干はっちゃけた結果がもたらした、昨今流行りの名前によるオリジナリティなんだとか。
ちなみに幼馴染の千枝との共通の友人でもある。
そんな彼女はCカップの美乳をお持ちである。ちなみにCカップの片乳ノルマは7・5cm以上。つまり、私の両乳が全力で挑んでも決して敵わない存在なのである。
「ねえ、暇だからいつものやつイッとく?」
愛梨は手の平を私に向けて、指をわきわきと動かしている。
入学した当初から変わらない並びのせいか、こういった朝礼のほか体育や合同授業の時にも恒例となっていることがある。
……これはあくまで噂話だが、乳は揉まれればもまれるほど大きくなるという伝説があるらしい。きっと揉まれることにより、己の中に眠っているオナゴの性が覚醒するに違いない。
少なくとも私はそう信じたい。
「んでは始めまーす!」
愛梨が慣れた手つきで、私の背後からわきの下を経由し乳をわしわししてくる。
「あんたの乳ってさー、上から撫でると無いけど、下から探すとみつかるよね! なんか多少引っかかりがある気がする!」
ありがとう、万有引力! ありがとう、重力! わずかな乳袋でも、ちゃんと地面に引き寄せられているのだね!
「で、どう? 昔より膨らみを感じた?」
笑顔で振り返ってみると、愛梨は梅干を食らったようにしょっぱい顔をしていた。
「昔……二泊三日の入学研修旅行んときのあんたは、なんかこう、ヌリカベみたいな乳してたもんね」
「ちょ!」
「幼児みたいな体型というよりは、壁。 上から水流したら滝! みたいな」
愛梨は身振り手振りで、いかに壁であったかを説明してくれる。親しくなればなるほど容赦ないのが女友達だと思う。
「あの頃に比べたら、毎日揉んでる成果があったのか無かったのか、微かに何か出てきたような気はするよ!」
笑顔でガッツポーズを作ってくれるが、愛梨のことだから『無かった』と認めたら数年間の自分の労力が無駄だと認めることになるから、それを回避したいだけだと思う。
+ + +
「マロえもーん! マロえもーんっ! 巨乳どもがいじめるんだー!」
部屋にあいつがいるのを確信して、某人気キャラクターに頼るメガネっ子のモノマネをしながら帰宅してみた。
案の定ドン引きした様子の乳神改めマロがこちらを見てため息をついていた。
「梨緒よ、相変わらず騒々しいな。」
たった数日間しか生活を共にしていないのに、「騒々しい」の枕詞が「相変わらず」って、私たちの関係はいったいなんだろう。
気を取り直してマロに問う。
「ねえマロ、胸って揉まれると大きくなるのは嘘なの? 幻なの? なんでならないの? 揉んでも大きくならないよ?」
「そちが無駄に足掻いた結果はともかく、基本的には自分や友人が揉んでも変わらぬだろうな」
そう言いながら、私の本棚の秘密のスペース。つまり、こっそり前後二重になっている部分の後ろから一冊の本を取りだした。
タイトルは言えないが「胸を大きくする本」という、いわゆる親兄妹や友人に見つかったら恥ずかしい禁書のたぐいだ。
「梨緒はこういう本を買うわりに、買っただけで大きくなった妄想をするからダメなのじゃ」
そう言いながら、慣れた手つきでペラペラと頁を捲る。そしてとある項目を指さしながら手渡してきた。
「ほれ、ここを見よ。『特別な相手に乳を揉まれる事により、脳からホルモン云々――結果乳が大きくなる可能性が』とあるじゃろ? お主、友達相手に特別なホルモンがじわじわ出るとでも思うておるのか?」
「……うちら、ズッ友……」
なんとなく言い返そうと思って口から出た言葉は、女同士の結束を表すものだった。
「友達が悪戯半分で揉んで乳が大きくなるなら『豊胸手術』に願いを託すオナゴはおらぬよの……」
そういうと、マロはやれやれとでも言いたげにわざとらしく音を立てて本を閉じた。
雑な扱いは本がいたむわけで。
そして正論ばかりだと、私の胸(貧乳)も思いの外痛むわけです。
一体何をすれば、乳は大きくなるのでしょうか。
折れかける心を鼓舞しながら、明日も前を向いて生きようと思う。
余談だけれど、以前愛梨に、「あんたがブラする理由って、どっちが背中がわかりやすくするタメっしょ!!」と言われた衝撃は、死んでも忘れない。
顔が前向いてる方が前だ!!!




