表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あの蝉のように僕は鳴けない

作者: 柊ツバキ

外で響く蝉の声は激しさを増す。その激しさにつられて、冷房のきいた部屋にいるにも関わらず僕の肌に汗がじんわりと湧き出る気すらしてくる。

片手で携帯電話を操作しながらカップラーメンをすす。


毎年くる夏。

昨年も同じように冷房の中でインスタントの食事をとっていた。

明日も、来週も、来年も、きっと同じように過ごすに違いない。


テレビからはどこかいつも似たようなニュースが流れている。

これから行く接客のアルバイトでは、同じようなことで怒られ、同じようなことで喜びを感じる。


人生をマラソンに喩えたりするようだけれど、僕にとってはトラック競技だ。

走っても走っても景色は変わらない。

僕もマラソンのような人生が良いけれど、過去を振り返ってみてもマラソン人生ルートへの分岐点に心当たりはない。


変わらない景色の中で、僕はこれからの人生をどう過ごしていけば良いのだろう。景色を変えたいけど、変える方法がわからない。誰に聞けばよいかもわからない。今まで生きてきて、どこかで何かを間違えていたとしても、誰に文句を言えるだろう。


そんなことを考えると、いつだって無性に走り出したいような大きな声を出したいような気持ちになる。そんな衝動が僕の身体の真ん中あたりをじんじんさせる。


懸命に鳴く蝉に、脳内にかすかに残る熱い自分の残像を重ねながら、今年も僕はカップラーメンの汁を飲み干すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ