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異世界に来ちゃった一匹狼くん  作者: 矮 英知
第一章 “先ずは把握” 編
8/9

8話目「終わりから…」


竜が如く迫る竜巻…大地をえぐり、触れるモノを切り刻む。まるで意思を持つかのように破壊の限りを尽くす、暴畏蹄ディザスターオプリ


 追撃のために前線にいた兵士たちは、鎧は紙切れのように切り裂かれ、ものによっては体を細切れにされている。断末魔すら、この魔法の轟音で掻き消されて聞こえてこない。


 その猛威はミラたち勇者部隊のとこらにも迫っていた。

 勇者たちに恐怖の表情が浮かび、顔が引き攣る。


「_発動!」


 直撃する…そう思った瞬間、さっきまで呟いていたミラから魔法が展開した。

 強力なドーム状の結界によって竜巻は激しく激突するも弾かれる。


 だが、ミラの顔に余裕はなかった。冷や汗を流してすらいる。


 ミラが発動した魔法は『空間結界』。物理的な魔法を完全に遮断する、結界の中でも最高級の魔法である。

 勿論、かなりの魔力を消費し続けるため何時まで耐えられるか分からない…だがミラの危惧することはそれではなかった。

 その危惧の理由は、魔法を放ち終わり前進を始めたランスロットの聖剣アロンダイトにある。


聖剣としての役割以外にも固有能力が備わっている。

『魔法無力化』

それが聖剣アロンダイトの固有能力である。


 もし今、聖剣アロンダイトで攻撃されれば勇者たちを守り抜くのは不可能。

 ドラコを見る、ドラコもこちらの目を見て、決意したような表情を浮かべる。


 竜巻が弱まったところでミラは魔法を解いた。

 突風が勇者たちに吹くが、軽く踏ん張るだけで済む。


「俺も試してみるか…」


 草薙はランスロットに向けて、三半規管を揺らす魔法…名付けて『揺音ウェーブ』を放った。

 続けざまにミラから連続して空間破壊魔法が放たれる。

 

「くうっ…なんだ今のは…」


 ランスロットは頭を片手で抑えながら、大剣を振り回してミラの魔法から身を守っている。


「ここは退くしか…皆さん撤退しますよ!」


 そう叫ぶとミラが勇者たちを囲むように杖を振る。

 ドラコは部隊の撤収の方に動いていた、どうやらランスロットを止めるのは十戒といえども無理のようだ。


 だが、ランスロットの迫る速度とミラの魔法の発動速度を考えると…僅かに間に合わない。


 俺ならその僅かを稼げる!…そう思った瞬間、身体全体に魔力を巡らせ、落ちてた剣を拾い上げると音の魔法を纏わせる。

 そして音魔法を使って瞬時にランスロットに肉薄する。背後でミラが叫んでいたが無視した。


「なっ!?」


 急に迫られたランスロットは一瞬戸惑う。


 この征伐と言われている戦争で、勇者たちは移動砲台として後方に配置されている。

 これが一般的認識である。それはミラがランスロットの接近に対して、勇者たちを守るために撤退の魔法を発動させようとしていることから明らかである。

 それに勇者たちに接近戦ができないだろうと、移動砲台として使っている時点で確信していた。

 なのに目の前の少年は、いつの間にか肉薄して剣を振り下ろそうとしていた。


 ランスロットの対応が予想外のことに一瞬遅れ、咄嗟に振るった聖剣アロンダイトが量産化された剣と激突直後に…押された。が、風の魔力を込め直して振りぬく。

 振りぬいた聖剣アロンダイトは、量産化された剣を粉々に砕き肉薄した少年を吹き飛ばした。


 直後、ミラの転移魔法が発動し姿が消えた。

 

 草薙は少し後悔していた。

 柄にないことしたな…と、だがあの瞬間、間に合わないと分かったのは俺だけだろう、そして奴を少しでも食い止めることが可能だったのは俺だけだった。

 そう思っている俺の眼前では、ランスロットが聖剣アロンダイトに風の魔法を込めながら薙ぎはらおうと構えていた。


 ここで終わりか…そう思った草薙の目の前が真っ暗になる。

 そこで意識を手放した。













 ランスロットは聖剣アロンダイトを振り切らなかった。いや、振り切ることができなかった。


 目の前の少年は吹き飛んだ後、あの空間魔法使いのミラ・アインス・ユダが放った、空間破壊魔法の余波で生まれた空間の歪みに呑み込まれて消えたのだ。

 

 追うことはできない…この世界に来て三ヶ月程であれほどの戦闘力、できたら部下にしたかった。そんなことをふと思い、クスッと笑ったランスロットはすぐに真剣な表情に戻ると、逆追撃のために砦に引き返した。


 ちなみにランスロットの逆追撃は、アラギから謎の後光を纏う白き者によって阻止された。

 ランスロットは何もせずに引き返した。そこにいた騎士たちは口々にあれは神の使いだ!と叫んでいた。


 それこそが、アラギが抑止力として聖典国家レウコンから貸されたレウコンの最高戦力“使徒”なのであったのは、ランスロットのみぞ知る。




 こうして、大聖国家アラギと剣闘国家パイオンの国境線の草原で行われた、パイオンの度重なる挑発的行為から招いたアラギの征伐は、双方に半数近くの被害を出した。のちに砦の名前をとって、「キャニオン砦草原の戦い」と言われるようになる。


 そして対外的には、双方の痛み分けで幕を閉じた。



…ただ一人の行方不明者については語られずに。


諸事情により投稿遅れてます。ご了承ください。

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