表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来ちゃった一匹狼くん  作者: 矮 英知
第一章 “先ずは把握” 編
7/9

7話目「予想外」


開戦は真昼_


二千VS五千…戦いは始まる前から決まっているのかのように思えるが、そこは国の作りの違いが大きく出る。


 パイオンは剣闘国家というだけに、国民のほとんどが騎士を目指し研鑽し合う国だけに戦争をしなくても個々の練度は高い。

 それに比べて大聖国家アラギはまだ出来て百年足らずの国であり、その練度についても疑問が残る。


 続けて、上位戦力としては近衛部隊である十戒が二名と…勇者たち、そして相手の上位戦力である円卓の騎士は一人である上に序列十二位であり砦内に留まっている。

 よって、どちらにせよアラギの方が有利である状況には変わらない…はずだが戦場では何が起きるか分からない。それがミラの胸の奥に燻る不安の原因なのか…それは本人にも分からなかった。


「勇者たち、攻撃のタイミングはこちらから指示しますので、早まらないように」


開戦の空気に流されかけた、一部の勇者たちに釘を刺す。


 両軍、鉄の鎧を身に纏っているが兜を被っているのは重装騎兵くらいである。

まだ製鉄技術は発展途上で、量も限りあるため全身をくまなく覆う鎧はない。

 それでも運が悪いか、相手が弓の達人でもない限り、簡単には貫通しない程度にはできている。


「うおぉぉぉぉ!!」

「砦を死守しろー!」

「アラギに栄光あれぇ!」


激しい金属同士がぶつかる音に怒声が響き渡る。

数で勝っているアラギの方が少し押しているが、パイオンの騎士の練度も高く中々前線が進まない。


「勇者たち!私の二度目の合図を見たら、真っ正面に魔法を唱えて下さい!いきますよ!」


ミラがそういうと、自身の身の丈ほどもある木の杖の先にある水晶に光の魔力を込める。


『我光の集まりを助ける者、我光の集まりを妨げる者、今その力解き放つ者、光炸フラッシュバン


 そして空に向けて突き上げた。すると杖の先の水晶から光球が放たれて、50mほど上空で破裂する。真昼の太陽に負けないほどの光を解き放つと光球は消えた。

 それを見た仲間の兵士たちは素早く陣形を変形させた、左翼と右翼は共に敵の側面に回る。これによって敵は真ん中に寄せられる…まさしく数に物言わせた戦法である。

 そうして真ん中に敵が寄せられると、また光球が上がった。


「一斉魔法攻撃開始!」


『νσλχБσψχδεΩαΤΧδλζααηζΨΨζΣΣΧΧΡΛΘΔЭвжжибнфося』


 ミラの合図で詠唱を始めた勇者たち。それぞれの詠唱が重なり聞き取れない。

しかし、確実に魔力変換・性質変化されていく。一部の者たちは更に形質変化も行う。


なお、特異魔法使いは待機が言い渡されている。敵に手の内を早々に明かしたくないのと、念のためということであった。


 一斉に放たれる様々な魔法。

炎の槍に、水の散弾、雷の蛇に、土砂崩れ…これらの魔法が寄せられた敵の軍団に襲いかかった。


鎧を焼き、体を貫き、感電したものは土砂に呑み込まれる…こうして敵の戦力二千はその半分の命をこの作戦で失うことになった。


 勇者たちは初めての戦場。初めての人殺しをしたわけだが、間接的で実感がないのか、魔法の威力に驚いているのか、曖昧な表情を浮かべていた。


そして、一部損害は出たものの、そのままの勢いで敵を突破すると敗残兵に追撃を仕掛ける。


「このまま行けるんじゃねーか!?」

「私たち強くなってるわね」

「俺たちも行くぞー!」


思い思いに勢いまかせな台詞を叫ぶ。

ムリもない、最前線では金属音が飛び交い激しく血生臭い戦闘が行われているが、ここはそこからかなり離れているし魔法による遠距離攻撃によって、人殺しという感覚がほとんどない。

そして勇者たちはミラに連れられて、追撃する。



 敵の兵士が砦内に入っていく、その入口である数メートルの大きな扉の中央には、距離があってよく見えないが…白銀の鎧を身に纏い、黒馬に跨がる桃色の長髪を棚引かせた騎士が佇んでいた。


勢いに任せて駆ける軍勢。

ミラが門の中央にいる人物に気が付き目を細める。


「あれは…ガレスかしら?」

「いや…よく見えんな…」


いつの間にか、ミラの横には灰色の馬に跨がるドラコが鉄の鎧を掻きながら同様に目を細めていた。


「違う、あれはガレスではな…なっ!?」


目を細めて門の中央を注視していたミラが驚愕の表情を浮かべていた。


それは、門の中央の人物が背中の大剣を抜いたからである。その者の背丈に匹敵する両刃両手剣、白い刀身に黒い紋様が刻まれた独特の大剣。


「あ、あの剣は…“聖剣アロンダイト”!!」


ミラが驚愕の表情のまま、そう呟く。

 聖剣…それは剣闘国家パイオンの最高戦力“円卓の騎士”各々が持つ専用武器。その力は所有者の潜在能力を最大まで引き出す上に、ソウルエネルギーを増幅させることができる。

そして、聖剣アロンダイトの所有者は…


「何故彼女がこんなところに…ランスロット!」

「なっ!?彼女が円卓の騎士序列一位の!彼女はパイオンの守護をしているはずでは?」

「私も予想すらしてなかったわ……」

「くっ、全軍後退だ!!」


予想外の出来事に追撃中の兵士たちに後退を叫ぶが、悲しいかな。

ドラコはミラらの様子を見るために軍勢の中程におり、先頭の興奮した兵士たちに、その言葉は届かない。

…ミラは何やら呟いている。


そしてランスロットと思われし人物は、大剣を胸元に引き寄せ、剣先を空に向けて詠唱を始めた。


『天駆ける我が蹄、先の障害打ち砕き、数多の大地を切り裂かん!

畏れろ!我が蹄の放つ嵐の前に

跪け!我は平等に呑み込まん

穿て…暴畏蹄ディザスターオプリ!!』


そしてランスロットは恐ろしい程の魔力を込められた剣先を真っ正面へと向ける。

剣先から、轟音と共に竜が如く荒れ狂う竜巻が放たれた!



密集して追撃中の兵士たちに避けるすべはなかった…





再構想につき次話投稿遅れ気味になります。申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ