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異世界に来ちゃった一匹狼くん  作者: 矮 英知
第一章 “先ずは把握” 編
1/9

1話目「非日常へ」



「ここは!?」


 自らの黒い短髪の頭を掻きながら、目を覚ました少年が周りを見ると、同じクラスの生徒が皆床に寝転がっていた。まだ気絶しているようだ。

 何故“気絶”と断言できるのか、さっきまで教室でホームルームのために先生を待っていたが突然強烈な頭痛と共に皆が倒れたからである。


「うう…ここは!?…さっきまで教室で…」

「つぅ…頭痛ぇ、どこだここ?」


 他のクラスメイトも徐々に起きだして、困惑しながらも今の状況を把握しようとしていた。

 そして少年も周りを把握する余裕がでてきた…広さは教室四つ分ほどで正方形、高さは5mほどの空間。そして窓も扉もない完全な密室のようだ。

 何よりも驚くべきは、部屋の何から何まで全て真っ白なのである!床には魔方陣のような幾何学模様、これも白で描かれている。


「誰かー!誰かいませんかー!!」

「うわぁぁん、帰りたいよ~」

「皆ここで死ぬんだ…」


 壁を叩いて外部の様子を探る者、泣きじゃくる者、悲観して絶望する者…普通では考えられないあり得ない事態を前にした人間は、情けないくらいに脆いものだ。


 そんな中でも他のクラスメイトと違い、少年は終始冷静であった。

 それは…少年はまだ高校生二年生だが既に世界への興味を失いつつあったからだ。

 小さい頃から神童と呼ばれ、本も読み漁ったし同年代では少年より博識な者はいないほどであった。そんな彼は学校をサボりがちだった。

…学校で教わることはない。

 そんな風に彼が思ったのは小学校4年生の頃の出来事が関係しているだろう。


 ある雨の日、習い事の一つである合気道を終えていつものように祖父と両親がいる家に帰ると、鍵を掛けたはずの扉は開いていた。不審に思った祖父が傘を握って扉を開けて中に入る…そこには少年が絶句し精神を引き裂かれてもおかしくない凄惨な光景があった…これについてはあまり思い出したくない。

 のちに分かったのは警察官である父に、組の頭を逮捕されたことに憤った、組の構成員による報復であった。不幸中の幸いは、その後警察が威信をかけて行った大捜査によって、組は解体、構成員を残らず豚箱に押し込んだことだろう。


 だが、そこから少年はいくら博識であろうとも力がなければ生きていけないと理解し、少年は武道を本気で極めようと決心した。

 事件後は祖父から剣術の粋を叩き込んでもらった。自分がいればこんなことにならなかったはずだ、己の剣術の全てを教える祖父からは、そんな自責の念もあった…だがそのおかげもあり、少年はその歳では考えられない心技体の強さを手に入れた。


 そんな少年が、世界への興味を失いつつあった理由は

…守る者がないのだ。

 知識も力もその身に余るほど手にし、精神的にも大人な彼は、もし今の自分ですら守れなければ?きっと自分の存在意義はなくなる。なら守りたい者を作らなければいい…そう思っていた。


 それなら知識もあるのに、学校なんかにいっても求めるものはない…それならサボればいいんじゃないか、少年がそう思うのも必然だったのかもしれない。


 なのに、何故皆とホームルームで先生を待っていたのか?それは必然であり不運としかいえない。

 つまり、昨日家に学校から電話で「これ以上欠席すると出席日数が足りなくなって留年しますよ?」ときつく言われた少年は、単位があっても出席日数が足りなければ留年だということをすっかり忘れていたからである。

 ただでさえ学校を早く卒業したいのに、留年なんかしてられない!そう思った少年は次の日の朝、出席日数を稼ぐためだけに登校して来たのである。


そしてこうなった…こうなったというか、どうなったのこれは状態である。


 それに何だか体の中から力のようなものが漲っているのが分かる。それが何なのか、そう思った矢先に知っているであろう者が現れた。

否、魔方陣の描かれた床以外の部分が徐々に揺らぎ消えていき、周りに居た者たちが見えるようになったのである。


 ここは石でできた建物の中の大きな一室で、その中、おそらく非現実的だが、魔方陣の周囲を結界で囲んでいたのだろうと予想できた。

 そして黒くて丈の長いローブを身に纏っている男性らしい人が七人、白くて丈の長いローブを身に纏っている女性らしき人が一人いた。


 そしてその白いローブを身に纏っている女性は、一歩前に出ると軽くお辞儀しながら口を開いた。


「いきなりのことで動揺なさっていると思いますが…一先ず、ようこそ大聖国家“アラギ”へ、異世界から来た我々の希望よ…」




今、学生生活を謳歌していた少年たちの運命が、大きく転換したのであった!


2015/6/17[訂正]

都市国家→国家

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