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序章
「おお、おお、元気が良い坊主だ」
「ち・・なんも分からんくせに・・」
少年はうつむいたまま、口を閉ざした。
「ほれ・・坊主」
羽崎がポットから熱いコーヒーをコップに注ぐと、少年に渡した。
かすかに頭を下げて、少年はコーヒーを受け取った。
佐久間は、その様子に少し微笑み、ハンドルを握ったまま、前を向いた姿勢で言う。
「会長・・もうすぐ夜明けですね」
「おう・・それじゃ、そろそろ放鳩しよか?」
少年がきょろきょろしている。佐久間は、羽崎が降りた助手席側から、両手を広げて、少年も降りろと言う仕草で促した。その仕草が気に要らないのか、少年は、顔を歪めたまま、佐久間の横に飛び降りた。途端、少年の顔が苦痛に歪んだ。
「馬鹿・・」
佐久間は、軽い笑い声を上げた。(まあ・・この調子なら大丈夫だな)彼は、そう思った。