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蠢きの魔
「な・・何やって、そ・・そらえらいこっちゃがな!体大丈夫か、何ともあらへんのか?」
「大丈夫、逃げて来たんや」
「ぶっそうやなあ・・ここら辺も。それやったら、警察行かなあかんわ」
「ええねん・・うちな、思いっきり、一人の覆面の腕、血出る程噛んだったし、もう一人の男の横っ面もこれで殴ったったねんやんか!・・え・・嫌・・嫌あ・・これ壊れてるしぃ・・うわーん」
叉恵利は泣き出した。
「ど、どないした。どっか痛いんか?」
「違うねん。これ・・壊れてしもた。うちせっかく金村君に貰うたのにぃ・・あーん、しくしく」
「何やて・・?金村って・・修ニの事かいな」
「おっちゃ・・いや、工藤のあんちゃん。知ってんの?」
恵利が、工藤の顔を覗き込むように見た。
「知らいでか。それよりな・・何で修ニ?」
「工藤のあんちゃんこそ」
今度は、にこにこしながら恵利が聞き返す。




