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蠢きの魔
日頃から恵利の通学路でもある、工藤修理工場だ。顔はお互い良く知っている。
「何が・・あったんや?とにかく店の中へ入りや」
制服の一部は破れているし、髪も乱れている。只事では無い事を悟った工藤は、事務所の奥にあるソファに恵利を座らせた。くすん・・くすんと恵利は泣き続けている。
少し間を取って、工藤は恵利の前にハンカチを出して、コーヒーを勧めた。
「さあ・・顔でも拭けや。べっぴんさんが台無しやっちゅうねん」
恵利がハンカチを取ると、
「きったなあい・・何やねん、このぞうきんは!」
泣いてた筈の、意外に冷静なその反応に工藤は苦笑いした。
「は・・その分じゃ大丈夫やな。ほな、コーヒーでも飲み?」
恵利が一口コーヒーを飲む。
「まっずー・・・おっちゃん、早う嫁貰いいや」
「余計なお世話や。それにな、おっちゃん言われる年ちゃうで。まだ20代や、わし・・傷つくなあ、ほんまに。ほんで・・泣いてた烏がもう笑うたや無いけど、何があったか言うて見い」
「うちな、さっきそこの公園の所で2人組の覆面男に襲われたんや」




