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蠢きの魔
1人の覆面の男が言った。恵利は気丈な女の子だ。羽交い絞めにした、もう一人の覆面男の腕に噛み付いた。
「い・・痛!いたたた!」
一方の手に持っていた袋で、今度は後の覆面男の横っ面を思いっきり殴った。
「がっ・・!」
相手がひるんだ隙に走って逃げたのだった。
「あ・・こら!待て!」
1人が追いかけようとしたが、もう一人が止めた。
「止めとけ・・こうなったら、もうしゃあないやんけ」
覆面を取ったその男達は、同級生でもある、仙崎と田村であった。
恵利は息が切れるまで走った。どうにか、追いかけて来ない事を確認すると、無性に涙が溢れて来た。丁度、工藤の修理工場の前であった。
「お・・どないした。ぺっぴんさんが台無しやんけ」
工藤が声を掛ける。
「う・・おっちゃあん。わあん・・しくしく」




