63/333
蠢きの魔
この日、工藤の所へある男が訪れた。金村が帰った後だった。
「珍しいやんけ、伊藤」
この男こそ鬼羅亜の総長、伊藤雄二だった。長髪で、長身の男だ。
「ご無沙汰しとります」
低い声で、伊藤は言った。
「どないした?急に」
少し、工藤の顔が険しくなった。
「初代に少し、相談したい事がありますねん」
「まあ・・ちょう上がれや。奥の座敷で話しよ」
工藤は修理工場奥にある、4畳程の休憩室代わりの部屋へ伊藤を通した。
この男が、関西第2と言われる暴走族、鬼羅亜の2代目総長だ。工藤は雷連合をまとめるまでは、その鬼羅亜の初代総長でもあった。
「・・・そうか、我悪羅と、鬼怒羅が、こそこそおかしな動きをしとんのかい」
「そうですねん、ほんでも今の所は大きなトラブルも無いんで、静観してます」
「今、我悪羅のアタマは誰や?」
「石井・・石井浩二の弟の、石井達也がやってます」




