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蠢きの魔
「あかんの?金村君」
淋しそうに、新田が言う。
「あ・・いや・・別に」
修ニは慌てて答えた。
「わあ!嬉しい!貰ってええのね?有難う!金村君」
新田は凄く嬉しそうな顔をして、仲の良い友達の前で、そのオルゴールを見せびらかせた。
「ち・・何か嬉しそうやんけ・・修ちゃん」
同じクラスの、やはり不良仲間の田村亮二が、その様子を離れた机から見ていた。眉毛を剃った顔に、金髪の髪のややがっしりした体型の少年だ。
その夜、ミナミの繁華街、小さなスナックの一室にその千崎、田村が来ていた。
「何や・・お前らだけか?金村はどうした」
黒いサングラスをした大柄で、短い髪の男が言った。
「はあ、それが、返事まだ貰うて無いんですわ」
「なあ、千崎、わしん所には兵隊はなんぼでも居るんじゃ。せやけど、特攻任せてもええ奴を探しとんのやんけ。金村なら、「命知らずの狂犬」と呼ばれた奴や、お前らだけでは話にならんのじゃ、おう!」
この男は、我悪羅のアタマの石井達也と言った、3つある暴走族の中で、一番大きな族のトップだ。




