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序章
「おう!そうか、就職決まったんか?良かったのう」
三宅は、嬉しそうに言った。散々迷惑を掛けて来た担任だったが、初めて見せる笑顔だった。
「へ・・」
職員室を出て、教室へ戻ると、すぐ声を掛けた女の子が居た。
学級委員長をやってる、活発な美少女で、新田恵利と言った。
「金村君、ごっつ久し振りな気がするわね」
「お・・おう」
恵利は、喋った事も殆ど無い高根の花だった。
「あのね、もうすぐ卒業でしょ?金村君が学校に来たら、お願いしようって思うてたの。あのね、技術家庭科授業で作ったオルゴールあるでしょ?うち、欲しいなって」
卒業前に、技術家庭科の授業で作る記念のオルゴールで、女の子に伝統であげるようになっていた。学校へ殆ど出てこない金村のオルゴールは、まだ残っていたのだ。しかし、新田程の子なら、もう幾つもオルゴールは貰って居る筈。何故自分のが欲しいと言うのだろう?修ニは、不思議な顔をして新田を見上げた。長い黒髪のまぶしい顔だ。修ニは目を伏せた。




