序章
「折れては無いようだが、ヒビが入ってるかも知れんな。ほら・・身の程知らずとはこの事だ。これじゃあ帰れんだろうが、坊主」
「放っとけや!この野郎・・」
「そうも行かんやろう、見んかった事にも出来んわい」
羽崎は、佐久間に少年をおぶさせると、トラックまで運び乗せた。佐久間が少年に聞く。
「坊主、お前の名前は?」
少年は横を向いたまま喋ろうとはしなかった。佐久間は溜息をつきながら言う。
「やれやれ・・見たところ、14、5歳の中学生のようだが、どうせ免許も持って無いだろうし、単車も盗んだ物か?」
「じゃかあしんじゃ!関係ないやろ?お前に」
「吼えるな、坊主。何なら、動けんように、足一本折ったって良いんだぜ?」
佐久間が睨んだ、背も大きいし、肩幅もある。おまけにいかつい顔だ。少年は少し目を伏せた。
「はは・・おいおい・・佐久間君、乱暴はあかんぞ」
「はい、会長。しかし、どうしますか?こいつの仲間は戻って来ないようですし、このまま放っておく訳にも行きませんし」
「そやの。もう夜も明ける。少し可哀相やけど、夜が明けるまでは、このトラックの中に居て貰うで」
「予定の放鳩地とは違いますが、まあ・・しょうが無いですね」
佐久間達2人は真ん中に、その少年を挟んで、トラックの中に乗った。