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序章
「ほぅ・・・」
善さんの目が光った。修ニは、もくもくと材料を削り、1時間後・・その完成した巣箱を新川社長に差し出した。
「出来た・・」
修ニが言う。にこやかな顔をしていた、新川社長だが、その時、鋭い目に変わった。思わず、ドキッとした修ニだった。佐久間と羽崎は奥で、家具を見ながら談笑している。
「善さん・・どない思う?」
新川社長が善さんに見せる。
「ふ・・・こんなもんでは・・飯は食えませんわ」
職人さんの評価は厳しかった。修ニ少年の顔に赤みが刺す。だが、善さんは続けて言った。
「見様、見真似で道具を使った割には、父親の素振りを覚えていたんか、カンナの使い方、鋸の挽き方。教えて中々身に付くもんやあらへん・・。けど、鳩の巣箱なら上等やおまへんか?社長」
「おう!わしもそう思うとる。金村君、有難うよ。この巣箱、さっきの『川上稚内号』の専用巣箱にするよってにな」
修ニの顔が、少し綻んだ。




