修二
「なあ、修ちゃん。何で、韓ちゃんの所の鳩貰えへんかったん?あげるゆうてたんやろ?」
「春・・俺な。川上さんの手記の中で香月博士が、香月系を作るゆうて師匠と違う道を歩む姿に感動したんや。俺な、そんな血統なんて大層なもんちゃうけど、自分の家族見たいな【雷神系】ちゅうもんを作って見たいんや。そやから、2羽のシュウとカメ号を種鳩にするつもりや。ほんで、もっともっと、鳩の資質を見極めれるように、勉強するわ。香月博士のように。韓ちゃんは自分で積み上げてここまで来たんや。俺も地道でも、そうしたいんや。勿論アドバイスは受けるで」
「おう!考えてんな、修ちゃんも。俺も頑張ろ!」
鳩の事も、着実な一歩を歩んでいる修ニだが、仕事の方も、
「修・・ちょっとこれやって見い」
善さんが、この日、特注の椅子図面を修ニに渡した。
それはシンプルなデザインであったが、かなり高度な技術を要求される座卓兼、リクライニングチェアーであった。
「ええか、修。形だけ整えよ、思うんやないで。これを使う人は70も後半のおばあさんや。孫がプレゼントしたいからゆうて、うちに注文して来た。家具はのう、形やあらへん。心や。孫のおばあさんに対する暖かい気持ち。ほんで、この家具を使うおばあさんの気持ちになって、作って見い」
「はい」




