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序章
「自分も、やや彼等と近い年齢ではありますが・・自分の場合、空手に明け暮れていた年頃です。実際、そう言う心情は理解出来ません」
羽崎四郎は、関西競翔鳩協会のベテランで、現在西郷連合会長を務める。季節は2月、春の競翔に向けての訓練初日の事であった。
郊外に出て、広い直線道路を左折して、旧街道に入って緩いカーブに指しかかった時であった。
「止めてや、佐久間君」
羽崎の言葉に、慌ててブレーキを踏む佐久間。
「どう・・されました?」
突然の羽崎の停止命令に、路肩に急停止した佐久間だった。
2トンのトラックの助手席から降りる羽崎、やや太り気味の体は、スマートな降り方では無かった。
「あ・・・!」
未だ暗い周囲の中で、声をあげる佐久間の視線の先には、田んぼに横たわるオートバイが見えた。
その横に少年と思しき姿が、まだ薄暗い夜明け前の事、良くは見えなかったが、確かに横たわっているようだ。
近寄ると、金髪に髪を染めた少年だった。