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序章
診察台に修ニ少年を乗せると、木崎は診察を始めた。それが、佐久間の目には相当乱暴な仕草に見えて、「痛い、痛い」を連発する修ニ少年の姿を見て、彼がにやにや笑っている。
「まあ・・心配無いやろ、2、3日したら、痛みも取れるわい」
羽崎と佐久間は、ほっとした顔をした。
「金無いで」
修ニ少年は木崎に言った。
「わしは、貧乏人から銭は取らん。金持ちからふんだくるでな。それより、修ニ。母さんに心配ばっかりかけたらあかんや無いか。ほんまにしょう無い奴っちゃで」
木崎が怒る。そして、頭をごつんとこづいた。
「痛あ・・・何さらすんじゃい!このヤブ!」
修ニ少年は、目を見開いて怒った。その修ニより更に、老人とは思えぬ大声で、木崎は怒鳴った。
「馬鹿たれ!自分を必死で育ててくれた、母さんを泣かして、毎日何をしとるんじゃ!。死んだ父さんや、姉ちゃんの分まで、お前が親孝行せなあかんやろが!」




