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序章
「・・この名前で、散々小さい時からからかわれたよ。ま、お前に話す事じゃ無いけどな、修ニ」
佐久間は、今度はきちんと少年の名前を呼んだ。
「ふん」
少年は顔を横に向けたままだ。
トラックは、木崎接骨院の前で止まった。しばらくして、白髪、白髭の医者が出てきた。
「朝早うから・・どうした?」
「院長、久しぶりですなあ」
羽崎が言う。
「おお、羽崎はん、久し振りです。どうでっか?腰の方は、その後?」
「すっかり、先生のお蔭で良うなりました。その節は」
満足そうに、木崎は頷いた。玄関の戸はぎしぎしと言ってるし、医院もあちこち痛んでいる。建物はボロイが、腕は確かな先生だな・・佐久間は思った。佐久間が修ニ少年の背中を押して、木崎の前に。
「おや・・金村か・・どうした?」
修ニ少年は黙っていた。
「叉、悪さをしおって、怪我でもしたか・・こっちに来い」




