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佐久間米示と言う男
「すぐ、女の人が入って来たら覗きに来よる。まあ・・健康的な証拠や、堪忍な」
「ぷ・・ふふ」
その女性は笑った。工藤の自然な応対ぶりと喋り方が、可笑しかったのだ。
工藤が、女性の脛の傷にバンドエイドを貼ってやる。
「さあて・・ここから先は、わしも治療してやりたいが、店先やさかいな。姉ちゃん、奥に4畳間があるさかい、これと着替え。ほんで、他にも痛い所があるようやったら、わしを呼んでや、見に行くさかいな」
きょとんとして、女性は、その渡されたスーツを眺めた。
「あ・・それな。姉ちゃんに合うかどうか分からへんけど、今の穴開いたライダースーツ着てる訳には行かへんやろ?誰も袖通して無いよって、安心しい」
「なんで・・そない親切にしてくれはんの?」
「さあ・・何でって言われてもな・・。せやけど、ここへ修理を依頼しに来てくれたお客さんやさかい、サービスや思うてや・あ・・修理代には上乗せせえへんよってに、ははは。その服は、旧モデルやさかい」
「ふふ・・面白いオーナーやね。でも・・おおきに」
女性は奥へ入って行った。叉、千崎がその様子を見に行こうとする。




