163/333
佐久間米示と言う男
米次の包容力のある人間的大きさと、温かさに、修ニの心も自然に受容していた。父子となった関係よりも、むしろ兄弟に近い関係となっていた。
美弥子さんは現在、羽崎を退社して、羽崎の経理の委託業務と言う形での自宅勤務になっている。修ニの苗字も今は、勿論佐久間だった。修ニ自身が変わった訳では無いが、何かが大きく変わった気がしていた。そんな矢先にある出来事があった。
工藤の修理工場に、1人の女性ライダーが入って来た。
「いら・・・っしゃい。」
工藤は長身の女性ライダーを見て、少し驚いた、その女性の服は転んだものか、あちこち破れ、少し膝からも血が出ていた。
「これ・・直して欲しいねん」
「ふうん・・カワサキのW1やな・・かなりの年代もんやが・・ま、部品は取り寄せせなならんけど、それより、姉ちゃん、あんたの傷の方が先やで、それ」
「こんなんカスリ傷や」
「あかん、あかん。ちょっと入っておいで。傷薬位置いてあるよってな」
その様子を千崎、田村が見に来る。
「こらこら・・お前等、あっち戻っとれ、あっち」
奥へ戻るように、2人に指示する工藤。




