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佐久間米示と言う男
「何やて?見合いの話を断った?先方はえらい乗り気で進めとったと思うたが・・何や、お前彼女が気に要らんかったんか?それなら、そうで、しゃあ無い事やないか。何にそやから顔に泥塗るねん?」
羽崎は、憮然としたまま答えた。
「加奈さんは申し分の無い女性です。まさか自分との見合いを、前向きに考えてくれるとは思っても見なかった事ですし、一時は加奈さんと一緒になろうかと思いました」
「ははあ・・お前、好きな女性が居るんやな?それやったら、それで早う言わんかいな。ほんまに世話の掛かるやっちゃで」
安心したように言う羽崎の前で、佐久間はぼろぼろ涙を零した。
「ど・・どないしたんやねん。佐久間。まあ、ちょっと落ち着いて座れ」
羽崎は、佐久間をソファに座らせた。




