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佐久間米示と言う男
「え・・?知らんぞ・・そんな事は」
佐久間が一瞬間を置いて、答えた。
「あれ?ちゃうの?綺麗な女の人と腕組んでたやろ。大磯で」
台所の美弥子さんの手が少し止まっていた。
「ば・・馬鹿言うなよ。そりゃ、見間違えたのと違うのか?」
「え・・?ほんまのほんまに、知らへんの?」
「あ・・ああ。俺は、そんな所行って無いし」
覗き込むように佐久間の顔を見る修ニ。
美弥子さんが、叉にこにこしながら洗い物を始めた。
「ほんなら、日曜日、えらいめかし込んで、どこ行ってたんや?」
「ああ・・日曜日だったら、知り合いの社長に頼まれて、大事なお客さんの送り迎えしてたんだ」
「なあんや・・そうかいな・・がっかりやなあ・・」




