佐久間米示と言う男
広い公園の芝生の上で、新川社長は川上氏の事について、その付き合いや、考え方、競翔家として持ち得る全てを持っている方や、素晴らしい愛鳩家でもあるんだと、修ニに磯色と話してくれた。
「・・・そうですか。ほんな偉い人と社長は知り合いやったんですね。佐久間のあんちゃんからも、社長の鳩は関西でも3つの指に入ると聞いてます。その人が自分の鳩を全部出してまで、白川系を継いだその気持ちに俺・・すごい感動しました」
「川上○号と名づけるのは、今度は、わしが川上さんの気持に答える為や。わしは、自分の命と引き換えにしても、この血統は守り抜こうと思うとる。だから一羽たりともわしの鳩舎からは出さへんのや」
「よお、分かりました。社長も偉いです。俺、感動を叉新たにしましたわ」
新川社長は昼過ぎまで、競翔のよもやま話をしたり、少し淡路島の観光を修二にしてやったり、食事も済み、帰りの大磯のフェリーボートの所まで戻って来た。修ニは、貰った本を更に又読みふけっていた。読めば読むほど、修ニの心は、競翔鳩の世界に引き込まれて行くのだった。
「あ・・あれえ・・?」
フェリーの出航の待ち時間にトイレに立った修ニが、新川社長に指差した。少し遠いが、港の波止場に立っているのは佐久間のようだった。
「お・・?あれ・・ほんまや。腕まで組みはって・・綺麗なお嬢さんや、隅に置けへんなあ、佐久間はんも」




