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修二の青春  作者: 白木
134/333

佐久間米示と言う男

 修ニは高速道路の道中、明石からの大磯へのフェリーボートの中、放鳩地である、岩屋までの道中、その本を熱心に読んだ。


「さあ、着いたで」


 新川に言われて、はっと気づいたように、初めて修ニがその時顔をあげた。その目は潤んでいたのだった。


「ど、どうしたんや、金村」


 新川社長が驚き、尋ねた。


「俺・・感動しました。こんなに人前で泣いた事、お父んと姉ちゃんの葬式の時以来ですわ。レース鳩ちゅうのは、こんなに奥が深うて、ほんで、この川上さんゆう人に感動したんですわ」

「そうか・・そうか!金村。お前はええ競翔家になれるで。さあ、放鳩や、それが済んだら、わしと川上はんの事、話したろ」


 新川鳩舎の、総数126羽は、真っ青な空の下、2回大きく旋回した後、まっすぐ鳩舎方向に飛び帰って行った。その方向判断力、海上をものともせずに、一直線に飛ぶ様は、関西3羽烏と言われる最強鳩舎の名に相応しい飛翔であった。修ニは、じっとその鳩群を観察していた。

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