薫る言葉に
「わはは、この佐久間はね、わしの片腕ですねん。顔はこの通りですが、大学時代は空手で、全日本3位まで行きました。大学も法学部出てますし、働き者で気の優しい男ですねん」
羽崎は上機嫌で、山本建材の社長、山本喜一(のちの羽崎グループ役員)に、佐久間を紹介していた。
「ははは・どうりで逞しい体してはると思いましたわ。なあ、加奈。佐久間はんは若いけど、しっかりした方や。どや?今度の休みにでもどっか連れて行って貰うたらええ」
山本社長は、以前より佐久間の事は良く聞いていて、大変気にいった様子であった。
加奈が言う。
「佐久間さん、私、淡路の海を見たいんですけど、連れて行って貰えます?」
加奈は明るそうで、はきはきした性格のようだ。佐久間の事も、まんざらでも無い様子だった。
「は・・そしたら、今度の日曜日でも」
「何や、佐久間、こんな綺麗なお嬢さんが、そない言うてくれはってるんや、もう少し嬉しそうな顔して答えんか。ほんまに山本はん、無愛想な男ですんまへん、女性に気の効いた事よう言われしまへん奴ですねや」
「ははは。何の、何の。余分な事は男は言わん方がええ。信用出来ますわ」
「わははは」




