124/333
薫る言葉に
「そら、俺一人で食うのは無理や・。それよりな、お母ん、あんちゃんに貰うた鳩に、名前つけるねん」
「まあ・・何て?」
「お父んの一志の(一)の字、取ってカズ号、もう一羽は雌やさかい、姉ちゃんの名前、恵をもろて、メグ号やねん」
「修ちゃん・・・」
美弥子の目から涙が零れる。
「お母ん、泣いたらあかんがな。俺な、・・工藤はん見たいな、格好ええ男になりたいんや。工藤はんは、一人で、関西の暴走族をまとめはった凄い人や。その鳩の前には、雷神てつけるねん。雷神カズ号、雷神メグ号や。ほんで、あんちゃんに教えてもろて、鳩レースやりたいんや。ええやろ?」
「修ちゃんが、やりたい言うんなら、お母ちゃん、何も反対せえへん」
その晩、美弥子さんは、仏壇に手を合わせていた。
その佐久間だが、この夜は、羽崎社長に呼ばれて、市内の料亭に居た、それは、見合いの話であった。
山本加奈と言う、羽崎グループに近い山本建材の一人娘で、聡明で、綺麗な女性だった。




