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薫る言葉に
「おう・・なかなか良い出来だな」
「へへ・・」
修ニは照れ臭そうに笑った。余程思い入れが強かったのか、細かい作業までこなしていた。
「まあ、この分なら来週迄には鳩を入れられそうだな。ほれ、俺からのプレゼントだ」
それは、細々とした、鉱物飼料や、巣皿、タラップ等、大きなダンボール箱一杯に詰まっていた。
「おおきに、あんちゃん」
「鳩が好きな者同志。礼には及ばんさ」
こうやって佐久間は、時々差し入れを持って、金村家を訪れるようになった。こうやって、食卓を囲むのは楽しいと佐久間は笑う。修ニは本当の家族のような気がした。工藤と並ぶ、もう一人の頼もしい兄が出来たと思った。
4日後の夕方であった。約束通り、定時制高校から帰宅した修ニの所へ、佐久間が2羽の鳩を持って来た。
「おおきに!ほんま、おおきに!」
修ニは凄く喜んだ。不良少年と近隣から恐れられていた男が、まるで幼い子のような喜び。いや、これが本来の修ニの心そのものであろう、佐久間も微笑んだ。




