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序章
「ほら、その鳩を放すんだよ」
「あ・・ああ」
少年は慌てて、鳩を頭上に放り上げた。その鳩は、一直線に鳩群を追いかけて飛び去った。
「ほう・・坊主の触っとった鳩が今年の本命やのお・・」
羽崎がそう言った。
「さて・・」
佐久間はそう言うと、田んぼの中に横たわったバイクを道路まで引きずって来た。
「さあ・・トラックに乗れ、坊主」
少年を再び、トラックに乗るように促す佐久間。少年は、佐久間を睨みつけ拒絶の姿勢。その少年を軽々と佐久間は抱きかかえ、トラックに押し込んだ。反対側から出ようとする、それを羽崎が制した。
「畜生!警察なんか行かへんぞ!俺は何も悪い事なんかしとらへんわい!」
「ふ・・何がだ、無免が悪い事じゃないのか」
佐久間は少年に言う。羽崎は、にこにこしている。




