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ゴルコ  作者: はなぞの
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動物病院

人間の成長は早いものです。あんな凶暴だったアヤちゃんも私よりもすっかり大きくなっちゃいました。ゆいちゃんはもう家をでてどこかの学校に行っているみたいでときどき家に帰ってきます。やんちゃだったアヤちゃんはちゃんと毎日ボクを散歩に連れ出して、ご飯をくれます。で学校から帰ってくるといつもきまった儀式をしてくれます。

「ゴルコォー」

そういうとダッシュで近づいてきて顔のあたりをぐちゃぐちゃになで回します。ボクもついついテンションがあがってしまってアヤさんの顔をなめてみます。


散歩はいつも近くの広い公園です。他にも犬がいっぱいいますが、ボクはホラ、あまり社交的な方ではないので、できるだけ遠回りして眼をあわさないようにしています。ああ、またあのピンクの花が咲いています。最近気がついたのですが、これっていつも同じくらいの寒さの時に咲きますよね。アヤちゃんと会ってこの花を見るのは6回目だと思います。はい、これくらいの数だったらボクにもわかるんですよ。

今日は暖かい日です。アヤさんといっしょに公園のベンチにすわっています。ここはアヤさんのお気に入りの場所みたいです。アヤさんはベンチに座りながらボクの顔をジーとみています。えっ、なんですか?

「なに、ゴルコ!シラガ!犬も年とるとシラガになるんだね。へぇ」

犬なので言葉の意味はよくわかりません。聞こえないフリです。あっ、でも最近本当にものが聞こえにくい気がするんですけでね。まあ、それはそれで世の中静かになっていいんですけどね。

アヤさんは散歩の途中よく寄り道をします。お店に寄って甘いお菓子を買うんです。甘い物好きなんですね。私は欲しがりませんよ。ちゃんとした立派な犬ですから、ただじーっつ、アヤさんを見ているだけです。アヤさん、そのお菓子美味しそうですねって、ただ見ているだけです。

「ゴルコ、ないしょね。」

えっ、いただけるんですか?いただけるのでしたら断る理由はありません。ありがとうございます。うまい。へへっ。


ある日、アヤちゃんが帰ってきたので、へへっ、って笑ってみたけど、いつもやってくれる「ゴルコォー」がなかったよ。何も言わずに部屋の中へ入って行っていっちゃった。どうしたのかな。

こんなとき犬は便利だよ。字が読めないので部屋の扉にかけてあるDon’t Disturb の文字も無視できるからね。

アヤちゃんさびしそうだから、とりあえず近くによっていってあげよう。

「みんなひどい。あんなこと言わなくても。私なにもしてないのに」

ボクは犬なので意味はわからないけど、アヤちゃん泣いてるね。とりえず椅子に座って突っ伏しているアヤちゃんの膝のところに顔をつっこんでみたよ。ズボって。アヤちゃんは少し笑った。やったね。ヘヘっ。ボクはアヤちゃんのほっぺたを舐めてみる。なんかしょっぱいね。以前にもこんなことがあったなぁ。人間のほっぺはしょっぺいものなのかもね。アヤちゃんはボクの顔をみて笑ってくれたよ。で

「ゴルコォー」ってぼくの顔をくちゃくちゃにした。そうそう、それでこそいつものアヤちゃん。

「ゴルコ、あんがと。がんばるよ」

へへっ、ボク偉い。


アヤちゃんも元気になったよ。ボクはもう年とってきたし、特にやることもないので今日もアヤちゃんの足下で横になってゴロン。アヤちゃんは最近よく机に向かっている。勉強するようになったんだね。

(偉いぞ。アヤちゃん。)

ボクは退屈だけど分別ある犬だから勉強の邪魔はしないよ。ただ、退屈なので後ろ姿をじーと見てるだけ。じーと。

「よし、今日の勉強終わり!ゴルコォー」

なんだ、遊びたかったんだー。アヤちゃんは椅子にすわりながら、お腹をみせてくねくねしてるボクのお腹をなでまわす。

「あれ?こんなのあったっけ?」

アヤちゃんはボクを引きずってみんなのところへ連れて行く。

「ねぇ、おかあさん、ここ、しこりがあるよねぇ。こんなのあった?」

へへっ、みんなでボクのお腹をなで回してくすぐったいです。


その日から、アヤちゃんとおかあさんはボクにお腹をよく触るようになった。

「ヨシヨシ」とかいいながら、しこってるところを触るんだ。へへっ、全然いたくないよ。

ある日、ボクは以前来たことがある建物にいった。犬がたくさんいて、昔2回、ちっくんされたところ。動物病院っていうところだね。怖くなんかないです。そんなに。なんといっても忍耐強いイヌですから。

お部屋にはいると今度はおねえさんが二人がかりでボクを持ち上げた。ボクそんなに重くないです。

「22.4kgですね」

おじさん先生がボクのおっぱいのところをしきりにさわる。エッチ。

お母さんが先生に何か話してるよ。

「2ヶ月くらい前に気づいたんですが、だんだん大きくなってきたんです」

「手術した方がいいかもしれません。今日は血液検査とレントゲンをとりましょう。」


1週間後、ボクはアヤちゃんと公園に散歩にきていた。木の葉っぱが赤くなっている。季節は秋だ。アヤちゃんはピンクのマフラーをしている。背が高くなったなぁ。少し寒かったけどアヤちゃんと並んでいつものベンチで落ち葉をみていました。

「イーシヤキーイモー」

アヤちゃんはすばやく反応するとお芋やさんにダッシュしました。

「はい、これはおまけね。その子にやってね」

焼き芋おじさんはボクのためにおまけをつけてくれたみたいです。

「はい、ゴルコ、熱いから気をつけてね」

アヤちゃんは芋を半分くれました。どうしてぼくの好物を知ってるんだろう。シマさんから聴いたの?とりあえず遠慮なくいただきます。

「アツっ!熱いっす」

「ハハッ、だから言ったのに」

だって犬だから言葉わからないですよ。アヤちゃんはボクの頭に手を載せてじっとしています。

「ゴルコ、明日の手術がんばってね」


次の日、ボクはこないだの動物病院に置いていかれちゃいました。

しばらくするとちっくんされて、手に何か巻かれました。なんだこれ。舐めちゃえ。

「あっ、それはだめ」と病院のお姉さんはそういうとボクの首に変なカサみたいもの巻きました。

(お姉さん、せっかくのご好意ですが、ファッション的にこの格好はいただけないです)そのあと、ボクは薬品の匂いのする部屋に連れていかれて、大勢の人に囲まれました。その後のことはよく覚えていません。眼がさめると動物病院の中でした。立ち上がろうとすると、お腹に激痛が走ります。

(ヒィー痛いよ。)

しばらくすると病院の中にアヤちゃんとおねえちゃんとお母さんが入ってきました。ボクはお腹が痛くて立ち上がれないので尻尾だけ勢いよく振りました。尻尾がケージにあたってボンボン音がします。しかしそんなことは気にしません。みんな来てくれたんですね。いたかったですよ。また置いて行かれたかと思いましたよ。

「ゴルコォー」アヤちゃんがいつものようにボクの顔をくちゃくちゃにします。ボクもアヤちゃんの顔を舐めます。

「手術は無事終わりました。一応明日までお預かりしてご飯を食べるようになれば帰れると思いますよ」


翌日、ぼくは家に帰りました。病院で、奇妙は服を着せられたので、みんなボクをみて爆笑してました。そんでその服になんか字を書いてました。寄せ書きってやつですね。

「ゴルコ、ファイト!」「まけるなゴルコ」「ご飯大好き」とか。

なんか知らないけどその日のボクのごはんは豪勢でした。お肉がたくさん入っています。芋もいいけど肉もたまらんですな。遠慮なくいただきます。

またここに帰ってこられてよかったです。


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