表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ファンタジー、魔法がないとはこれ如何に~転生者俺のみ魔法使い~  作者: 岳鳥翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

第24話:王城の書庫

 どうやら、俺が予想した通り書庫のような場所は城の中にちゃんとあるらしい。少々お待ちを、と部屋を出て行ったメイドさんを待つことしばらく。戻ってきた彼女から、使用許可が得られたことを伝えられた。


 そしてその翌日。早速と贅沢な朝ご飯を平らげ、メイドさんに案内されて書庫へ向かえば、予想していた以上に大きな部屋が俺を待ち構えていた。

 思わず天井を見上げる。円形の構造をした部屋の壁際に所狭しと並べられた本棚は、部屋の中に設置された階段を上った先にも並んでいるようだ。

 当然、本も棚の中にみっちりと詰まっていた。 


「二階まであるのか……」


「王国がこれまで集めてきた書物ですので、かなりの数が揃っています。持ち出しなどは許可されていませんので、ご注意ください」


 メイドさんの言葉に頷いてやると、「それでは」といって部屋を出て行った。休んでいた部屋でもそうだったが、俺を監視する人がいないのは信用されているからなのだろうか。


「しっかし、すごい量だなこりゃ」


 見渡す限り、本本本。おまけに上を見ても本ときた。きっとこの量の本をすべて読み切ろうと思えば、時間がいくらあっても足りないに違いない。少なくとも、この国を出る準備が整う前に勇者認定とやらがされてしまうのだろう。


 冗談ではない、と小さくため息を吐いた。 


 ならば今日この一日だけで、必要な限りの情報を収集するしかない。さすがに魔法があるとはいえ、この量の本の情報をすべて把握できるとは思えないし、そんな時間もない。


 幸い本を読まずとも、こちらには【カメラ】と【フォト】がある。この魔法があれば本の内容を読み込まなくても、ページを写しておくだけであとでいくらでも確認ができる。国を出た後で、どこか静かな場所で内容を確認すればいい。


「あー……欲しいのは王国の歴史と世界の歴史について書かれた書物、勇者について書かれた書物。あとは……地図かな?」


 とりあえず、今思いつく必要な情報で条件を絞り【サーチ】を使用。とりあえず、検索して引っかかるタイトルのものはすべて反応するようにしておいた。薬草の発見だけではなく、こうした探し物にまで使えるのだからかなり便利な魔法だ。


「さてさて、【サーチ】にかかったのは……お、多くね?」


 本の量が量なだけあり、一瞬でとはいかなかったが、少し待てば書庫のあちこちの本棚から反応が返ってきた。しかし、その返ってきた反応の数は、俺が想定していたものよりもはるかに多い。ぐるりと、思わず部屋中の本棚へと視線を巡らせた。


「はぁ……しかたない。やるだけやるかー!」


 あまりの数にやる気が削がれそうになったが、今一度自身が置かれている状況を思い出して気合を入れる。

 まずは【サーチ】に反応した本を集めるところからだ。見つかった本の位置は一階と二階でも反応があっちこっちにあってわかりづらい。いちいち運び出していてはそれだけで時間がかかる。


 そのため、あの森でアリアンヌを助けた時にも使用した【マジックハンド】を使用する。ただし、今回の【マジックハンド】は以前のような特大サイズではなく、俺の手と同じくらいのサイズだ。その分、数は十本用意する。


「そして【サーチ】で反応したの本を対象にして……そら、持ってこい!」


 パンッ、と手を叩くと同時に十本の【マジックハンド】がその腕を伸ばして本の収集を開始する。予め場所が決まっているのなら、わざわざ俺が操作するまでもなく自動操作に任せてしまえばいい。


 そうして任せること数分。書庫中央に設けられたテーブルに【マジックハンド】が持ってきた本が積み上がっていき、最終的には書庫の二階に届きそうな程の量が集まった。

 さすがに倒れたら危ないので、バラシて積み重ねていくが……それでも、テーブルの一面を占拠するくらいの量にはなった。今からこれを【カメラ】で撮影していくのである。


「【サーチ】の条件、もっと絞らないとだなぁ……」





「つ、疲れた……」


 あの後、集められた本をさらに厳選するために条件を見直し、再度【サーチ】をかけることで、元の三割くらいの量に減らすことができた。


 まぁ、元が元なだけにそれでもかなりの量だったが、あの三倍以上の量があったと考えればかなり楽になったのだろう。現に、日が暮れる前には【カメラ】による写しが完了した。


 だがその作業さえ終わってしまえばこちらのもの。この情報収集が何日かかるか分からなかったが、終わってしまえば一日で修了という結果だ。さすが俺の魔法。すごく優秀。


 優秀過ぎて、逆に俺の中に余裕ができてしまうほどだ。既に情報はいつでも読める状態であるため、いつこの国を出ようが問題はない。近日中……そうだな、あの国王様から話しが来る前には、抜け出しておこう。

 直接俺に話しに来るということだし、その兆候は俺の魔法による監視でいつでも察知可能だ。それにあの女騎士も、俺が客人として扱われている間はどうやっても手を出せないはず。ならば、城の料理を堪能しながら、隙を見て逃げさせてもらうじゃないか。


「あ! ミッチーなのです!」


 くつくつと一人で笑いながら部屋への道を帰っていると、丁度道先の曲がり角からアリアンヌが姿を現した。

 彼女は俺の姿を見るや否や、子どもらしい満面の笑みを浮かべて走り寄って来る。


 そして最後には「ドーンッ!」なんて口にしながら突進をかましてきた。


「アリアンヌ。はしたないんだから、あまりお城の中を走ってはダメよ?」


 どうやらアリアンヌは王妃様と一緒だったようで、彼女の後から現れた王妃様が優しい口調で注意を零す。それに対してアリアンヌは、俺の服に顔を埋めながら「はいなのです!」とくぐもった声で返事を返していた。


 そんなアリアンヌの様子に、王妃様は困ったような笑みを浮かべると、口パクで「ごめんなさいね?」と俺に話しかけてくる。

 俺はお気になさらず、とジェスチャーで返し、アリアンヌの背中をポンポンと軽く叩いた。


「はいはい、ミッチーですよ。どうしたんだ?」


「ミッチー! 私はダンスのお稽古を頑張ったのですよ!」


 どうだ偉いだろう、とでも言いたいのか。彼女は一度俺から離れると、エッヘンと腰に両手を当てて胸を張って見せた。


「おお、そうか。それは頑張ったな。きっとアリアンヌのことだ。ダンスも上手なんだろうな」


「はいなのです! 先生にも、上手だって褒められたのですよ!」


「おお、すごいじゃないか。将来は国一番のダンスマスターだな」


 偉い偉い、と褒めてやれば満足そうな様子だ。さらに胸を張って体が後方に仰け反るのだが、反りすぎて頭から倒れないか心配になる。

 そんなアリアンヌの背後にいた王妃様は、どこか微笑ましいものを見る目を俺達に向けていた。


「この子ったら、ミッチーさんに褒めてもらうんだと、すごく会いたがってたんですよ。よかったわね、アリアンヌ」


「そうなのです!」


 俺に屈託のない笑みを浮かべるアリアンヌ。

 俺がすぐにでもこの国から出て行こうと考えているからなのだろうか。罪悪感からなのだろうか。ほんの少しだけ、その笑顔に対して後ろめたい気持ちが沸き上がった。


 アリアンヌからしてみれば、また俺が突然いなくなるのだから。


「……そうか」


「です! なのでミッチーは、私にご褒美をあげないといけないのですよ!」


 ワクワク、と口で零しながら目をキラキラさせているアリアンヌ。

 決して口には出せない思惑に蓋をして、俺も彼女に笑みを返した。疲れていても、何かしてやろうかと思えてしまう、子供らしい表情だ。


 正直な話をすれば、勇者なんて肩書をもらってこの国で生きる選択肢も考えた。何なら、エイリンの様にアリアンヌの相手をしながら、彼女の成長を見守ることも悪くはないと考えてはいた。


 しかし、それでもやはり自由に生きたいとも思ったのだ。


 自由に生きて、自由に旅をして、そして満足する第二の人生を送り、そして大往生。

 前世では早くに死んでしまった分、この人生は納得する形で終えたい。そのためには、まだ俺はこの世界で見ていないモノが多すぎるのだ。


「……仕方ない。何がいいんだ?」


「お人形の劇が見たいのです!」


 問うてみれば、返ってきた返答は土人形による人形劇。

 アリアンヌの自室に土を持ち込むのは気が引けるため、監視役の騎士を一人つけて俺のいる客室でやることになった。


 なお、その騎士はエイリンだった。

 劇中の目がとても恐ろしかったとだけ言っておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ