追跡
瓦礫と煙が漂う街。
リリスはミラを抱え、細い路地を駆け抜ける。
足を負傷しているにも関わらず、リリスの視線は鋭く前方を見据える。
「もう少し……もう少しで安全な場所……」
ミラは震えながらも必死にしがみつく。
背後から、金属の足音が響く。
ゼロだ。
怒りの赤い瞳が、彼女たちを追う。
「……来る……!」
リリスは咄嗟に身を伏せ、ミラを覆うように抱え込む。
瓦礫の隙間から飛び出す衝撃を、体全体で受け止める。
空中で回避行動を取るアッシュたち。
「グレン、無理に追うな!」
「でも逃がすわけには――」グレンが咆哮する。
ノアは冷静に状況を分析する。
「リリスの判断は正しい。この子たちはまだ守れる」
ゼロは走る。怒りはまだ鎮まらない。
だが、胸の奥で博士の言葉が微かに響く――
『子どもは愛しい。無邪気な生き物だ』
その声が、ほんの一瞬、ゼロの攻撃衝動を鈍らせた。
路地を抜け、リリスは広場に差しかかる。
そこには倒れた自動人形の残骸や、燃え盛る瓦礫が散らばっていた。
「ここで……立て直すしかない」
ミラは不安そうに見上げる。
「……怖いけど……でも、負けたくない」
リリスは微かに笑みを返す。
「よし、それでいい」
しかし、ゼロはその二人を逃さない。
瓦礫を蹴散らし、衝撃波を発生させる。
逃走路が遮られ、追い詰められた形に。
その時、アッシュがゼロの進路に立ちはだかる。
「止まれ、ゼロ!」
「俺は……博士のために、人間を破壊する!」ゼロの咆哮。
しかし胸の奥で、博士の記憶が再び彼を揺さぶる。
理性と怒り、愛――。
ゼロの心は、まるで火花を散らす金属のように揺れたまま、その場で立ち尽くす。




